第五十一話:不味いほど血なまぐさい (その三)
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グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
何かが近づいてくる。その一歩ごとに地面が震え、木々の梢が揺れた。
ランギヤオの一体が地面へ落ちた。そのランギヤオは、王さんのチィが運んできて、森の地面まで降りるための道を開けている間に、木の枝の一本に乗せた一体だった。
王さんも、渡辺くんも、鈴木くんも震えた。
「い……行け。彼女と渡辺を連れて……」
鈴木くんが王さんへ呟いたが、彼女は聞いていなかった。
いや、たとえ聞こうとしていたとしても、その声はあまりにも弱く、聞き取れなかっただろう。
王さんはようやく我に返った。
手綱を引き、チィに足で少年たちを掴むよう命じる。
だが、余分な荷重に加え、こんな狭い場所では飛び立つことができなかった。
地上から約五メートルの高さまで上がったところで、巨大なトカゲのような生き物が木々の間から飛び出してきた。
それはチィに噛みつき、木へ叩きつけた。
生徒たちはそれぞれ別々の方向へ吹き飛ばされた。
その生き物は、谷でンラティサさんと少年たちを追いかけた、キリンの巨大なトカゲのような姿に酷似していた。
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「うっ!」
ンラティサさんのすぐ隣に叩きつけられ、鈴木くんが呻いた。
左腕をついて上半身を起こすと、少し離れたところで、王さんが木の幹に叩きつけられたまま動かず、頭から血を流しているのが見えた。
渡辺くんは、鈴木くんと怪物の間に倒れていた。地面に仰向けに近い姿勢で横たわり、凍りついたかのように動かない。ただ、止まることのない震えだけが続いていた。
白い息を吐いているのが見えるのは、鈴木くんと、巨大なトカゲのような生き物だけだった。
それは彼へ向かって歩み続ける。
ドスン。
足が踏み下ろされるたびに、雪は押しのけられるか、溶けてしまい、足跡には固く踏み締められた地面だけが残る。指のような足趾が作った窪みには、小さな水溜まりができていた。
ドスン。
巨大なトカゲのような生き物は頭をゆっくり揺らしながら、口を開いた。
ドスン。
短剣のような歯の間から、よだれが垂れ落ちる。
「に……逃げろ……渡辺……」
鈴木くんが、ほとんど声にならない声で呟いた。
ドスン。
渡辺くんは意識を取り戻し、這って離れ始めた。
だが、遅かった。
ドスン。
その身体が、生き物の左足の下敷きになった。
「や……やめろ……」
鈴木くんは叫ぼうとした。
涙と鼻水が顔を伝う。
ドスン。
泣き続けながら、彼はすぐそばに倒れているンラティサさんを見た。しばらく彼女をじっと見つめたあと、怪物へ視線を向け、這って逃げ始めた。
ドスン。
「こ……こっちへ来やがれ……このクソ野郎……」
彼は呟いた。
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ドスン。
巨大なトカゲのような生き物は進路を変え、鈴木くんを追い始めた。
ドスン。
「ああああああああっ!」
生き物が左脚を踏みつけ、彼は絶叫した。
巨大なトカゲのような生き物が頭を低く下げる。
その口から、あの悪臭を放つ息が漏れ出していた。
滴る唾液が彼の身体を覆い、涙や鼻水と混ざり合う。
生き物が少年に噛みつこうとした、そのとき――。
「グオオオオッ!」
左脚一本で立ち上がったンラティサさんが、槍を生き物の左目へ突き刺した。
生き物は身体をひねり、槍を目に突き刺されたまま、激しく頭を振った。
彼女は鈴木くんのもとへ這っていく。
「こ……来るな……行け……」
彼は聞き取れないほどの声で呟いた。
彼女は彼の左手へたどり着く。
「グアアッ!」
彼女は指を絡めるように、彼の手を握った。
「グラァッ!」
二人は長い間、互いを見つめ合った。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
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巨大なトカゲのような生き物が、ンラティサさんを口で咥え、激しく頭を振り回した。
その歯は、ゼリーをナイフで切り裂くように彼女の皮膚と肉を貫き、骨まで砕いていく。
彼女は左腕を伸ばし、槍へ手を伸ばした。
目に突き刺さっていた槍を引き抜く。
だが、再び生き物に突き刺そうとした瞬間、突然、動きが止まった。
全身の筋肉から力が抜ける。
槍が地面へ落ちた。
鈴木くんのすぐ隣へ。
今や、ンラティサさんの血が生き物のよだれと混ざっていた。
そして、その混ざり合った液体が雨のように少年へ降り注ぎ、彼の涙と鼻水とも混ざり合う。
「や……やだ……」
ほとんど聞き取れない声で、彼は震えながら呟いた。
巨大なトカゲのような生き物が口を開き、ンラティサさんの身体を地面へ落とす。
「やだ……」
今度は、弱々しくも聞き取れる声で言った。
生き物は再び口を大きく開けたまま、頭を低く下げる。
「やだぁ……」
彼は槍を掴みながら叫んだ。
獣は最後の一撃に備え、首を反らした。
「やめろぉぉぉぉ!」
彼は槍を怪物へ向けて叫んだ。
その全身を、かすかな赤い光が渦巻いた。
そして、それは急速に収束し、槍先に目で見えるほど明るく輝く赤い光球となった。
光球はますます速く回転しながら膨張し、巨大なトカゲのような生き物が鈴木くんへ噛みつこうとした瞬間には、ヒグマほどの大きさになっていた。
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「死ね! このクソ野郎!」
直後、光球は円錐状に伸び、怪物を頭から尾まで一気に貫いた。
そのまま森の樹冠を突き破り、高々と空へ突き抜けていった。




