第五十話:不味いほど血なまぐさい (その二)
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ンラティサさんと鈴木くんの鼻孔から吐き出される濃い白い息が、激しい息遣いを物語っていた。それに対して、渡辺くんと王さんの鼻孔からは白い息が見えなかった。呼吸を止めているのだ。
トカゲのような生き物が口を開くと、重力に引かれてタイユアンの身体が下へ引っ張られた。怪物の反り返った歯がランギヤオの肉を切り裂いた。
ゆっくりとした足取りで、その生き物は鈴木くんへ近づいていった。
その首はまるで手ブレ補正の効いたカメラのように動き、身体が動いているにもかかわらず、両目はずっと彼を捉え続けていた。タイユアンの血が、滴るよだれと混ざっている。
少年は両手を強く握りしめた。身体が震える。
寒さのせいか。恐怖のせいか。それとも怒りのせいか。
おそらく、そのすべてだった。
2
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いつもの澄んだ高音の口笛ではなかった。
震え、音程の外れた口笛だった。
それでも、ンラティサさんの指示に従ったランギヤオは、渡辺くんを地面へ下ろすと、淡い青色の光を放ちながら伸び、トカゲのような生き物の脚を拘束した。
先ほどの個体と同じように、拘束されているにもかかわらず、なおも身体を痙攣させながら、鈴木くんに噛みつこうとしていた。小さな前脚を使って腹這いのまま進み、頭を素早く突き出しながら、彼へ近づいてくる。
ンラティサさんもまた、地面を這いながらその生き物へ向かって進んだ。
鈴木くんは、血を流しているタイユアンの身体をじっと見つめていた。
だが、その身体は今やトカゲのような怪物の下敷きになっていた。
「逃げろ!」
渡辺くんと王さんが同時に叫んだ。
「そこから離れなさい、馬鹿!」
ンラティサさんが叫んだ。
鈴木くんは、なおも震え、荒い息を吐きながら、さらに顔を紅潮させて後ずさった。
雪の上で足を滑らせ、立ち上がったものの、また滑った。
もう一度立ち上がる力もなく、座ったまま後ろへずり下がった。
3
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渡辺くんはキョロキョロと周囲を見回した。王さんのチィは、先ほど着地した松のような木の枝を嘴でつついていた。ンラティサさんは這い続けていた。
トカゲのような生き物が口を素早く閉じ、あと少しで鈴木くんの足に噛みつくところだった。
もう一度、口が鳴る。
バキッ。
枝がその頭に落ちてきた。
傷を負わせるほど大きな枝ではなかった。だが、気を逸らすには十分で、少年が噛みつかれるのを防いだ。
生き物は長い首を後ろへ反らし、攻撃の態勢を整えた。
音程の外れた口笛。
ランギヤオたちを運んでいた一体がリボン状に伸び、その口吻に巻きついた。
トカゲのような生き物は雪の上でもがき、口吻を地面へ伸ばした。それから首を曲げ、口の先端を小さな、しかし頑丈な前脚へ近づける。
そしてランギヤオを掴むと、爪で引き裂き、口吻から引きずり出した。
ンラティサさんが叫び、指を雪と地面へさらに深く食い込ませながら、より勢いよく這った。
生き物が再び口を開く。
バキッ、バキッ。
そして――バキッ、バキッ、バキッ。
巨大な枝が何本も生き物の上へ落ちてきた。
だが、それでも止められたのはほんの数秒だった。
ンラティサさんがその尾へたどり着き、掴むには十分な時間だった。
生き物は再び鈴木くんを追い始めた。
そして、また大きく口を開き、彼に襲いかかろうとする。
ドンッ。
渡辺くんが、荒い息を吐きながら震える身体で、最初に落ちてきた枝をその頭へ叩きつけた。
4
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生き物が目を閉じ、微動だにせず倒れているのを見て、荒い息を吐き、白い吐息を盛んに漏らしていた渡辺くんは、少しだけ表情を緩め、笑みさえ浮かべかけた。
だが、突然、生き物が頭を突き出し、彼をいとも簡単に弾き飛ばした。
その間にも、ンラティサさんはトカゲのような獣の身体の上を這っていた。
生き物は頭を振り、再び鈴木くんを追って這い始めた。
そして、また攻撃を繰り出そうとした。
音程の外れた口笛。
残っていた三体のランギヤオが襲いかかった。
一体が前脚を、もう一体が口吻を拘束し、三体目は狼のような姿のまま生き物の首に噛みついた。
生き物は地面を転がり、ンラティサさんを放り飛ばした。
だが、狼のような姿になったランギヤオは、しっかりと生き物に食らいついたまま離れない。
怪物は身体を丸めた。
拘束された前脚の爪で、脚を縛っていたランギヤオを引き裂く。
さらに後ろ脚の爪で、前脚と口吻を拘束していたランギヤオを引き裂いた。
立ち上がると、激しく身体を振り、最後に残ったランギヤオまで振り落とした。
完全に自由になった生き物は、鈴木くんを見つめ、口を大きく開けたまま彼へ歩み寄っていく。
そして、また彼に噛みつこうとした、その瞬間――。
ドガッ!
王さんのチィが木の枝をかき分けて飛び出し、生き物の頭部に激突して、地面へ叩き倒した。
トカゲのような生き物が再び立ち上がろうとした瞬間、ンラティサさんの槍が右目を貫いた。
頭蓋を砕き、そのまま脳そのものを引き裂く。
長い息を漏らすような音を立て――今度こそ、死んだ。
5
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王さんは周囲を見回した。あたり一面に血が飛び散っている。両手で口を覆い、目を大きく見開いたまま、息を切らしていた。
渡辺くんも周囲を見回した。木々の間には、三体のトカゲのような生き物の死骸が転がっている。冷たい風に頬を赤く染め、息を荒くしていた。
ンラティサさんは周囲を見回した。引き裂かれたリボン状のランギヤオの欠片が、あちこちに散らばっている。ほかのランギヤオも、狼のような姿のまま、動かずにその辺りへ散らばっていた。
震えながら、彼女は槍の柄に身体を預けて立ち上がった。
足を引きずりながら、鈴木くんのもとへ向かった。
彼女はその場で立ち止まると、そのまま彼の上へ崩れ落ちた。
そして――。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。




