第四十八話:美味しそうなほど血なまぐさい
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ンラティサさんは、汚れた槍を鈴木くんとタイユアンの顔の間に突き出した。
ンラティサさんに化けたランギヤオは頭を後ろへ反らし、鈴木くんを反対側へ押しやった。
「何てはしたないことをしてるの!?」
ンラティサさんは歯を食いしばりながら言った。
「申し訳ありません、ご主人様。どうしても我慢できませんでした」
ンラティサさんに化けたタイユアンが答えた。
「なぜ、そんなことをしたの?」
「彼の血が、とぉっても美味しくて……」
ンラティサさんに化けたタイユアンは、大声で囁くように言いながら、唇を舐めた。
鈴木くんは左手を見た。
「ポンちゃん」に噛まれた傷から血が滲み出て、包帯が真っ赤に染まっている。
彼はしばらく黙ったまま動かなかった。
やがて立ち上がると、別のランギヤオのところへ行き、しゃがみ込んで、傷ついた手をその鼻先へ差し出した。
その生き物は匂いを嗅ぎ、口から舌を伸ばして血を舐め始めた。
「ねえ、陽翔、その傷、ちゃんと手当てして包帯も巻き直したほうがいいよ」
王さんが言った。
だが、そのときには鈴木くんは六体目のランギヤオのところで、同じことを繰り返していた。
「いや、大丈――」
鈴木くんが答えかけたところで、突然その場に崩れ落ちた。
「陽翔!」
彼女が叫んだ。
「鈴木先輩!」
渡辺くんも叫んだ。
「ピト!」
ンラティサさんは槍を落とし、足を引きずりながら彼のもとへ駆け寄った。
「ああ、ダーリン!」
タイユアンも彼のほうへ駆け寄った。
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ンラティサさんが鈴木くんへ手を伸ばすと、ンラティサさんに化けたタイユアンも同じようにした。
「だから、今度は何をしようとしてるの?」
ンラティサさんは眉をひそめて尋ねた。
「私のダーリンがどうしてるのか、見てこようかと……」
ンラティサさんに化けたタイユアンが答えた。
「本当に私に言い返してるの?」
「い……いえ」
ンラティサさんに化けたタイユアンは、眉を斜めに下げ、目尻を下げながら後ずさった。
「それにしても、なんなのよ、その『ダーリン』って……」
ンラティサさんが呟いた。
「自分だって『ピト』って言ったくせに……」
ンラティサさんに化けたタイユアンが小声で呟いた。
「何か言った?」
ンラティサさんが問いただした。
「いえ、何も!」
そう答えると、タイユアンは離れていった。
「だから、私の真似をするのもやめなさい!」
ンラティサさんが叫んだ。
タイユアンはすぐに狼のような姿へ戻った。
鈴木くんのそばで世話をしていた残り六体のランギヤオも立ち上がった。
その姿には、先ほどまでの疲労の色はまったく見られなかった。
王さんは、EVAマットと救急セットを運びながら、ンラティサさんのところへ近づいた。
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「陽翔はどう?」
少女が尋ねた。
「呼吸はしてる。肌の色も体温も、普通みたい」
ンラティサさんはそう答え、彼の額に自分の額を当てた。
王さんが動かず、黙ったままでいるのを見て、ンラティサさんが尋ねた。
「何かおかしい?」
「え? ああ、ううん……」
「ちょっと顔が赤いわ。熱でもあるんじゃない?」
「え? ああ、ううん……。ンランちゃんも、ちょっと顔が赤いよ?」
「ンラン……ちゃん?」
ンラティサさんは怪訝そうに呟き、再び鈴木くんへ視線を戻した。
そして――目を大きく見開き、さらに顔を赤くすると、慌てて頭を上げながら後ずさった。
「た……助けて。これを運ぶの手伝って」
王さんはそう言って彼のそばにマットを敷き、ンラティサさんと二人で彼をその上へ移した。
王さんは慎重に包帯を外し、溶かした雪で傷口を洗った。
そして、血が止まるまでガーゼと脱脂綿で傷口を押さえ、消毒液を塗って、新しい包帯を巻いた。
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目を開けると、視界にぼんやりとした人影があった。次第に視界がはっきりしてくると、渡辺くんの顔だと分かった。
「え? ここ、どこ?」
鈴木くんが尋ねた。
「ああ、今、ンラティサさんの村へ向かってるところだよ」
「なんでこんなに揺れてるんだ? それに、どうして腕が動かない……脚も」
そこで初めて鈴木くんは、自分が狼のような姿になった別のランギヤオの背中に乗せられ、その上からリボン状になったランギヤオに包まれていることに気づいた。
首を回して見ると、さらに二体のランギヤオがいた。それぞれ別のランギヤオを、リボン状になったランギヤオに包まれた状態で運んでいた。
そして、ンラティサさんはダディシィミィルギに乗っていた。
「王さんは?」
「ああ、残りのランギヤオを運びながら、チィで飛んでるよ」
そして、鈴木くんは再び眠りに落ちた。
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狼のような姿のランギヤオたちは空気の匂いを嗅ぎ、耳を真っ直ぐ上へ向けると、唸り始めた。
「ええ、何か来る」
ンラティサさんは前方を見据えたまま言った。




