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第四十三話:あり得ないほど汚らわしい

1

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イノシシのような怪物が、再び鈴木(すずき)くんへ近づいてきた。


彼は立ち上がったが、逃げられる場所はほとんどなかった。雪は、人間が走るには深すぎた。


木に登ろうとしたが、枝は高すぎた。それに、そのブーツは保温性には優れていても、木登りには向いていなかった。


そこで彼は幹の裏に隠れ、怪物から目を離さないように頭だけを出した。


怪物は、なおも進んでいた。


ンラティサさんは、怪物が倒れ、ランギヤオたちと揉み合っていた場所を通り過ぎる際、露出した地面から石をいくつか拾った。


そして、包帯代わりに使われていた麻袋の残骸を引き裂き、即席の投石紐にして石を投げた。


もちろん、高速で石が命中しても、怪物にはほとんど効かなかった。


彼女は右側の頭を狙った。そちらには、リボン状になったランギヤオが巻きついていなかった。


一発。


二発。


三発。


四発……。


だが、効果はなかった。


そのとき、一個の石が目に命中した。


キュッ!


怪物に傷を負わせるほどではなかった。


だが、苛立たせるには十分だった。


イノシシのような怪物は、彼女へと意識を向けた。


2

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鈴木(すずき)くんは木の裏から飛び出した。


そして、怪物に向かって叫びながら、雪玉を投げ始めた。


「何やってるのよ、この馬鹿!」


ンラティサさんが彼に怒鳴った。


彼は地面に落ちていた槍を拾った。


あの皮膚を貫くことはできないだろう。


だが、イノシシのような怪物が彼から離れ、彼女のほうへ向かっていくにつれて、彼には一か所だけ隙が見えた。


――あそこなら、もしかして?


彼は槍先をその一点へ真っ直ぐ向け、突進した。


キュィィィィィィィィィィッ!


怪物が甲高い悲鳴を上げた。


そして、絶命した。


槍は、その生き物の頭部とは反対側の開口部に突き刺さっていた。


3

---------

鈴木(すずき)くんが叫んだ。


「イェーハーッ!」


両手を頭上高く突き上げ、拳を握りしめた。息を切らしながら、顔には満面の笑みを浮かべていた。


それでも、ンラティサさんは足を引きずりながら彼に近づいてきた。


「ねえ、見た?」


彼が尋ねた。


彼女はただ、彼の顔面を殴り飛ばした。


「この馬鹿! あんた、何したのよ!」


「え? 今、君の命を救ったんだけど!」


彼は頬をさすりながら答えた。


「私を救った? あんたは殺したのよ! ポンシュルを殺した! しかも、こんな屈辱的で恥ずべきやり方で!」


「じゃあ、死んだほうがよかったって言うの?」


「まず、気取った坊や。私は死なない。第二に――ええ、死んだほうがましだったわ。あんな……あんなのよりは……」


4

---------

「俺が気取ってるって? この状態でどうやって避けられると思うんだよ? それに、あんな危険な生き物を殺したことに、なんでそこまで怒るんだ? 前哨所のあの男たちを殺したかったじゃないか!!」


鈴木(すずき)くんが言い返した。


「自分が何をしたいの問題じゃない。何をすべきかの問題よ。もし本当に私の望みだけで決めていいのなら――とっくに、あなたは死んでるわ」


「へえ……じゃあ、俺が必要ってこと?」


彼女が近づいてくるのを見て、彼は震えながら言った。


彼女は彼の目の前で立ち止まった。


身長差のせいで、真正面から顔を合わせる形にはならない。鈴木(すずき)くんの目線は、ちょうど彼女の喉元あたりにあった。


彼の息が、さらに荒くなった。


「のけ!」


彼女が平然と言った。


「え?」


「どいて。槍を取りに行くのに邪魔よ」


「あっ! ごめん」


彼はそう言って、一歩後ろへ下がった。


5

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血と糞尿の臭いが充満していた。


彼女は、すでにタイユアンに乗っていた鈴木(すずき)くんへ槍を投げ渡した。


「それを失くしたら、殺すわよ」


「自分がそうしたいから? それとも、必要になるから?」


彼は冗談めかして言った。


だが、ンラティサさんの顔を見た瞬間、彼はすぐに後悔した。


眉間に皺を寄せ、上唇の右端を吊り上げている。


彼は慌てて槍を振り、トンファーへと折り畳もうとした。


だが、槍に付着していた血と糞尿が飛んでいった。


その血と糞尿が飛んでいく先には、ダディシィミィルギに乗ったンラティサさんがいた。


キュッ!

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