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第四話:身体が凍りつくほどおぞましい (その二)

1

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伊藤(いとう)さんも、中二階へ上がった女子たちの一人だった。


体育館のフロアへ駆け下りていく高橋(たかはし)さんを目で追っていたそのとき、視界の端に、何かが猛烈な勢いで迫ってくるのを捉えた。


巨大な生き物が、窓へ向かって一直線に飛び込んできていた。


「あぶない!」


彼女は叫ぶと同時に、とっさに隣にいた女子たちを引き倒した。


次の瞬間、その巨大な生き物は窓ガラスを突き破って体育館へ飛び込んできた。


あと一瞬遅れていたら、彼女たちは直撃を受けていただろう。


それは爬虫類のような獣だった。長く、鋸のようにギザギザした嘴。頭頂部には短く鋭いトサカ。その全身は、毛皮のような毛で覆われていた。そして背には、コウモリを思わせる膜状の翼が一対、生えていた。


「ギャアアアーッ!」


甲高い鳴き声を上げながら、体育館の天井すれすれを滑空した。


2

---------

その瞬間、飛行する獣が急降下を始めた。一直線に、田中(たなか)さんめがけて。


後ろ脚を前へ突き出し、鋭い鉤爪を広げる。その嘴も大きく開いていた。


襲われる――そう思った瞬間、何かが彼女にぶつかり、そのまま彼女は進路の外へ突き飛ばされた。


「いててぇ〜」


呻きながら顔を上げる。


そこで初めて気づいた。自分を間一髪で突き飛ばしたのは、渡辺(わたなべ)くんだった。


そして、獣の鉤爪に捕らえられたのは、彼自身だった。


ギャアアアーッ!


3

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獣が羽ばたくたび、凍てつく風が田中(たなか)さんの顔を叩いた。


だが、彼女には寒さなどほとんど感じられなかった。


その視線は、上へと引きずり上げられていく渡辺(わたなべ)くんに釘付けになっていた。


彼女は跳び上がり、その足を掴もうと手を伸ばした。


しかし、もう届かなかった。


獣が割れた窓へ向かって飛び去ろうとした、そのとき。


中二階にいた伊藤(いとう)さんたちが、渡辺(わたなべ)くんの両脚を掴んだ。


そのまま自分たちまで引きずられそうになりながらも、彼女たちは凍りついた手すりに必死にしがみつく。


ギャアアアーッ!


4

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その瞬間、飛行する獣が不意に渡辺(わたなべ)くんを放した。


頭から三メートル以上下の、割れたガラスが散乱する体育館の床へ真っ逆さまに落ちる、その最後の瞬間まで――女子たちは彼の脚を決して離さなかった。


渡辺(わたなべ)くんは、中二階の手すりから宙吊りになった。


伊藤(いとう)さんは、氷で手すりに張りついていた手を無理やり引き剥がした。皮膚が裂け、血が滲む。


それでも彼を引き上げようとした。


だが、獣は空中で大きく旋回すると、そのまま女子たちへ突っ込んできた。全員が中二階の床へ弾き飛ばされ、その衝撃で渡辺(わたなべ)くんの脚から手が離れる。


彼はそのまま体育館の床へ真っ逆さまに落下した。


渡辺(わたなべ)!」


田中(たなか)さんが叫ぶ。


彼女は目を見開いたまま、小刻みに震え、その場に立ち尽くした。


数秒後、ようやく一歩を踏み出した。そして歩みは駆け足へ、さらに全力疾走へと変わっていた。


一方、獣は再び空中を旋回し、床に倒れたまま動かない渡辺(わたなべ)くんへ向かって急降下を始めた。


そこへ、田中(たなか)さんもまた全力で駆けていた。


5

---------

ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


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