第三話:身体が凍りつくほどおぞましい (その一)
もし、自分が神にも等しい力を手にしていると知ったなら、あなたは何をするだろうか。
そして、その力には厄介な制約があり、実質的に一度しか使えないのだと――少し遅すぎるタイミングで知ったなら、あなたは何を選ぶだろうか。
しかも、そのすべてが、理由も分からぬまま放り込まれた見知らぬ異世界で起きた出来事だったとしたら。
鈴木陽翔くんと埼玉県立熊山国際工業高等学校の仲間たちは、まさに今、その答えを思い知らされようとしていた。
しかも、決して愉快とは言えない形で。
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ほとんどの生徒は、本能的に――あるいは少なくとも無意識のうちに――体育館の中央へと集まっていった。人混みの中なら少しは寒さも和らぐし、何より外で起きている何かから、少しでも距離を置ける。
とはいえ、彼らも結局は若い人間だ。全員を突き動かしていたのは、安全や安心だけではない。
好奇心か。状況を見極めなければならないという衝動か。それとも、自滅願望か。
理由が何であれ、あるいはそのすべてが入り混じっていたのか――何人かは窓から外を覗こうと中二階へ向かい、もちろん、その中には高橋さんもいた。
考えなしだったのか。自分を証明したいという衝動だったのか。それとも、自滅願望か。
理由が何であれ、あるいはそのすべてが入り混じっていたのか――何人かは正面玄関の扉をこじ開けようと駆け寄り、もちろん、その中には鈴木くんもいた。
金属がぶつかるような「ガキン」という音と、獣じみた低い咆哮――「グオオオ」が、体育館の空間に響き渡った。
2
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高橋さんたちは、曇りきった窓ガラスを制服のシャツの裾で拭った。そして、その向こうの光景を目にした瞬間――目を大きく見開いたまま、誰一人として声を発しなかった。白く曇る吐息だけが、彼女たちがまだ生きていることを物語っていた。
鈴木くんたちは、体育倉庫から持ち出した布を巻いた金属製の棒で扉を塞いでいた氷を砕き、ついに正面玄関をこじ開けた。
雪景色の中へ一歩踏み出した、その瞬間。彼らは息を呑んだまま、その場で凍りついたように立ち尽くした。小刻みに震える身体だけが、彼らがまだ生きていることを示していた。
雪と氷に覆われた一面の白い大地は、鮮やかな赤い斑点に染まっていた。
死体。
そこら中に、死体。
そのほとんどは人間だった。
毛皮のコートをまとった者もいれば、そうでない存在もいる。
そして、あれは何だ。
巨大なトカゲ――いや、鱗ではなく、全身の大半が白い羽毛のような毛で覆われている。
嘴のように突き出た口には鋭い牙が並び、手足には獲物を裂く鉤爪。
死体が散乱する雪原のただ中では、人間とその巨大な獣、双方がなおも立ち続け、激しく殺し合っていた。
人間は剣を振るい、獣は嘴を大きく開いて頭を打ち振りながら襲いかかる。
ガキン。
グオオオ。
3
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一匹の獣が、倒れた人間の死体を貪っていた。
だが、外へ出てきた生徒たちに気づくと、口を大きく開き、涎を垂らしながら一直線に駆けてきた。
「引っ込め!」と、鈴木くんが叫んだ。
その声でようやく身体が動き、生徒たちは慌てて体育館の中へ駆け戻った。
扉を閉めようとした――しかし、いつの間にか再び氷が張りつき、閉まらなかった。
全員が息を切らし、目を見開いたまま瞬きすら忘れて顔を見合わせた。
鈴木くんは左腕を大きく振って合図を送った。
仲間たちは後ろへ下がり、彼は金属製の棒で氷を砕きながら、扉を閉めようとした。
ようやく扉を閉め切ることができた。
彼らは安堵の息をつき、思わず笑みをこぼしかけた。だが、その束の間の安堵は、一瞬で打ち砕かれた。
獣が扉を粉砕し、その衝撃で鈴木くんは勢いよく吹き飛ばされた。
悲鳴が体育館中に響き渡った。
4
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中二階にいた高橋さんたちも、ようやく体育館の中で何が起きているのかに気づいた。
全員が息を切らし、目を見開いたまま顔を見合わせた。
どうすればいい。
その答えを誰も見つけられない。
やがて高橋さんが階段を駆け下り始めると、友人たちが叫んだ。
「行っちゃダメ! 危ない!」
だが、その声は届かなかった。
聞こえなかったのか、それとも聞こえないふりをしたのか。
彼女は床に倒れたまま動かない鈴木くんのもとへ全力で駆け寄った。だが同時に、鋭い牙が並ぶ大きく開いた口から涎を垂らしながら、獣もまた彼へ向かって突進していた。
5
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グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。




