第三十九話:答えられないほど鋭い
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ンラティサさんは窓枠を踏み、建物の二階から飛び降りた。
その高さは、彼女と少年たちが高原へ飛び降りた崖の高さとほぼ同じだった。ただし、中庭に積もっている雪は、そのときの三十分の一ほどしかなかった。
彼女は着地すると脚を曲げて衝撃の一部を吸収し、そのまま背中から転がった。
落下のエネルギーの多くを水平方向の運動エネルギーへと変換し、転がる距離に沿って、より安全に散逸させたのだ。
彼女は転がりを終えると立ち上がり、ランギヤオに化けた兵士たちの一団と、人間の衛兵たちの一団を、周囲の兵士たちが取り囲んで作った輪の近くに立った。
それぞれの一団は横一列に並び、互いに十分な距離を取って向かい合っていた。
二つの集団の間、その最前線の中央では、兵士に化けたタイユアンと、先ほどンラティサさんの体を洗おうとしていた詰め所の衛兵が剣を交えていた。
もっとも、実際には剣を交えながら、ひたすら互いに悪態をつき合っているだけだった。
2
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「この女たらしが!」
兵士に化けたタイユアンが吐き捨てた。
カンッ!
「おはんが、あん女はおはんんもんじゃっち言うたじゃろ! この馬鹿が!」
戦士が呻いた。
カンッ!
「おはんが、おいにあん女ば冷たか水で風呂ん入らせたんじゃっど、このクソ野郎!」
カンッ!
「湯ぅば取って来る場所ぁ、おいが教えたじゃろ! この間抜けが!」
カンッ!
兵士に化けたタイユアンが歯を剥き出しにして顔をしかめかけた、そのとき、口笛が聞こえた。
ランギヤオの背筋に、ぞくりと悪寒が走った。
その体が硬直する。
戦士の剣が、その喉へ向かって空を切った。
「まずい!」
ンラティサさんが呟いた。
だが、彼女が二人のところへ駆け出すより先に、戦士の剣は止まった。
兵士に化けたタイユアンの首へ、これ以上深く食い込む寸前だった。
刃は皮膚にかすかに触れただけだったが、細い血の筋が喉を伝って流れ落ちた。
3
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中庭にいた人間の兵士たち全員の視線が、隊長へと集まった。
彼女はその場に立ったまま動かず、左手を腰に当て、右手を握り拳にして頭の高さまで掲げていた。
兵士たちは全員、片膝をついて頭を下げた。
「何ばしちょっとか? この騒ぎは、いったい何んこっじゃ?」
彼女が言った。
「ほぉ、グァングィ様。おいはおはんに失態ば犯し、あいつん誘いに乗って駐屯地ん名誉まで汚してしもうた。どうかおいば罰してくれ。じゃっどん、ほかん者らはお助けくだされ」
兵士に化けたタイユアンと戦っていた戦士が言った。
「ピトコ、おはんがおいに命令しちょっとか?」
「え……えっ? い、いや……もちろん違います。そげな恐れ多かこつぁ、決していたしもはん、グァングィ様!」
衛兵は目を大きく見開いて、慌てて答えた。
4
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「よし、この恥ずべき規律違反に関わった者は全員、非番ん時間を使うて、中庭ん地面ん手入ればせい。髪の毛、雑草、吐き捨てたタマカ、獣ん糞まで、細けぇゴミ一つ残さず拾え。規則が破られちょるとに、報告もせず喧嘩ば見物しちょった者も含む。以上じゃ!」
彼女はそう言った。
そして彼女は、息を切らしながらようやく戻ってきた少年たちへ向き直った。
「よし、こいで終わりじゃ。さあ、執務室へ戻っど……」
兵士に化けたランギヤオたちを、ンラティサさんは眉をひそめながらじっと見つめたまま、動かなかったので、隊長は彼女にも声をかけた。
「おはんもじゃ……」
だが、ンラティサさんは動かなかった。
そこで隊長は彼女のところまで歩み寄り、耳元で囁いた。
「まこて、おいに鈴木くんば独り占めさせるつもりじゃっとか?」
ンラティサさんは、すぐさま隊長を睨みつけた。
隊長はニヤニヤと笑っていた。
四人が本棟へ向かって歩き始めたところで、隊長は立ち止まり、兵士に化けたランギヤオたちへ言った。
「そいに、たった今前哨所から戻ってきたおはんらも、みんなじゃ」
5
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衛兵たちが出ていき、隊長の執務室に残ったところで、彼女が言った。
「でぇ、そいで、本当はこいら何者じゃ? 前哨所ん兵士んふりしちょるが」
全員が目を見開いたまま、沈黙した。




