第三十六話:見覚えないほどちかしい
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さらに二時間ほど進むと、遠くに柵が見えてきた。
近づくにつれて、その実際の規模が明らかになっていった。
幅約百二十メートル、奥行き約百五十メートルの長方形の区域を、高さ三メートルほどの木の杭が取り囲んでいる。
四人の歩哨が外に立ち、入口を監視していた。
さらに、柵に張り付くように設けられた見張り台にも兵士たちが立っており、周囲の怪しい動きを見逃さないようにしていた。
それだけでなく、柵の周辺には小規模な部隊が巡回していた。
御者は入口の近くで荷車を停めた。
多くの記号や絵が刻まれた木の板を歩哨に手渡した。
歩哨は荷車の後ろへ回り、ランタンで荷台の中を照らした。
兵士に化けたランギヤオと囚人たちを一人ずつ確認し、それから再び木の板に目を向けた。
そして御者のところへ戻っていった。
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「なんかおかしかこっがあっとか、兄弟?」
御者が尋ねた。
「名簿より兵士が三人多かごつ見えっど」
歩哨が答えた。
「そげなこつか?」
「うーん……十五ち書いてなかか?」
「いや、こっちは十二じゃ」
「三人ん囚人ば数え忘れたっちゃなかか?」
「いや。囚人は別に数えちょっど。こっちが兵士、こっちが囚人じゃ」
「なんか妙じゃな……。おい、見てみろ……ここん印、もっと傾いちょらんか?」
「そげな?」
「こっちにもっと光ば当てっくれ……ほら、傾いちょっど。こいは二じゃなか、五じゃ……」
「まぁ、おはんん言うとおりかもしれんな……」
歩哨は再び荷車の後ろへ回った。
「おい、おはんら。こいん荷車ん中ん者は、みんな知り合いじゃろ?」
「おう!」
歩哨はもう一度、御者のところへ戻った。
「なら、間違いなか。やっぱ五じゃ。兵士十五人、確認!」
そして歩哨は、門のところにいる別の警備兵へ声を張り上げた。
「おい、荷車ば入れっど!」
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敷地の中は、ンラティサさんやランギヤオたちがこれまで見たこともないような光景だった。
渡辺くんと鈴木くんにとっても、きっと想像以上の光景だった。
中央の道の両側には、兵舎がいくつも並んでいた。
武器庫、訓練場、馬やフクロウのような生き物のための小屋、倉庫、衛生設備、さらには小さな菜園まであった。
道の先には、大きな管理棟が建っていた。
二階建てで、正面の幅は三十メートルほどある。
建物はすべて木造だったが、管理棟だけは下部が石造りになっていた。
高原の村とは違い、衛生設備らしいものは、衛生室以外にはほとんど見当たらなかった。衛生室も、地面に掘った穴があるだけの小さな部屋だった。
管理棟の裏には井戸があったが、使う水の多くは川から運んでいた。また、夏には雨水を樽に集めていた。
荷車から降りると、鈴木くんは周囲を見回した。
だが、独房専用の建物らしきものは見当たらなかった。
まあ、当然だろう。ここは刑務所ではなく、駐屯地なのだから。
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「なあ、渡辺。俺たちの友達、ここにはいないんじゃないかな」
鈴木くんが小声で言った。
「なんでそう思うの?」
「あの大きな建物の地下に独房があるのかもしれないけど、刑務所って感じじゃない……窓にも鉄格子がないし」
衛兵が囚人たちに近づき、じろじろと眺めてから言った。
「おお? こりゃ何じゃ? またあんええ匂いん若ぇ衆が二人もおっと。少なくとも、こっちはあんげん薄か服の上に、ちゃんと冬ん外套ば着ちょっど。おい、クァリタヲポノ、隊長にこっぴどく叱られたんが、やっぱ効いちょったごっじゃな。フハハハ!」
クァリタヲポノに化けたダディシィミィルギは何も言わず、ただ鼻を鳴らした。
「えっ? 言い返しもせんと? こいは新しか隊長には感心したど。あん大したクァリタヲポノば大人しゅうさせっとは、そげん簡単なこっじゃなか。あんクォロイイスィ将軍でさえ、そいはできんかったっでな」
それから、彼はンラティサさんに気づいた。
「おや、こりゃ何じゃ? こいはあん連中とは違うごつじゃな。そん服装ぁ、高原ん部族んごつ見えっど。じゃっどん、肌も髪も違う。うーん、歯ぁきれいじゃっどん、あん若ぇ衆らほど白うなか……」
兵士に化けたランギヤオたちは鼻で笑ったが、唸り声を上げるより先に、ンラティサさんの視線に気圧されて後ずさった。
「こりゃまこて珍しか捕虜じゃっど、クァリタヲポノ。こいはきっと隊長も興味を持っ――」
「何に興味を持つちゅうんじゃ、軍曹?」
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毛皮の外套をまとい、腰に剣を差した美しい少女。その胸には、銀色の熊の手をかたどった校章があり、「工高」の文字が刻まれていた。「工」の字は、六書体の隷書風だった。
「王さん!?」
鈴木くんが動揺したようにつぶやいた。
「えっ? この世界に知り合いがいるの?」
渡辺くんが目を大きく見開いて言った。
ンラティサさんは、なぜか鈴木くんの反応を見ると、眉をひそめた。




