第三十三話:説明できないほど恥ずかしい
1
---------
最後の戦士を縛り、最後のランギヤオを解放したところで、囚人の一人が言った。
「おい、食いもんもなしに、おいどんらば置いてくとけ?」
すると、別の一人が言った。
「おい、ウンコがしたかど!」
「どうする?」と渡辺くんが尋ねた。
「まあ、ンラティサさんが作ったあれが、たくさんあるし」
「てめぇ、何を『あれ』なんて呼んでやがるんだ!」
彼女が怒鳴った。
「えっと……その……ンラティサさんが心を込めて作ってくれた、美味しい料理」
「おい、俺ぁウンコがしたかっち言うちょっど、このガキども!」
2
---------
鈴木くんが戦士の足の縄をほどき始めると、ンラティサさんが言った。
「おい、あんた、何するつもり?」
「えーっと。茂みのどこかで用を足させようかと……」
「そのまま逃げられないようにできると思ってるの?」
彼は戦士の足をもう一度縛った。ただし、歩くことはできても走れない程度の余裕は残した。
「じゃあ、そいつがあんたに体当たりして、気絶させたらどうするの?」
鈴木くんは腰の狩猟用ナイフを軽く叩いた。
「甘い」
ンラティサさんは、前腕を寄せたまま、彼のナイフを取り上げた。
彼女がナイフを返すと、鈴木くんはそれをホルスターに収め、囚人の手を背中側で縛るよう提案した。
ンラティサさんは両手を後ろに回し、前屈みになってナイフを歯でくわえた。
身体を起こすと、ナイフを上へ放り投げた。
ナイフは回転しながら上へ飛び、それから落下して、彼女の手の中に収まった。
「じゃあ、どうしろっていうの?」
鈴木くんは少し声を張り、わずかに眉をひそめて尋ねた。
「こいつらを生かしておくって言い出したのはあんたでしょ。だったら、どうするか考えるのもあんたの責任よ……」
彼はしばらく頭を下げ、ブーツを見つめていた。
それから、トーチを持っている渡辺くんを見た。
しばらく彼を見つめていたが、やがて首を横に振った。
それを見た渡辺くんが、ふぅ、と息を吐いた。
「ンラティサさん、こいつの見張りを一緒にしてくれない?」
彼女は五分三十五秒間、笑い続けた。
それも、ものすごく大きな声で。
それから彼は、戸口の外にいる三体のランギヤオを見た。
「こいつら、貸してくれない?」
「いいけど。こいつらをどうするつもり?」
彼女は目尻の涙を拭いながら答えた。
「もちろん、見張りをしてもらう!」
「こいつらに命令できるの?」
「えっと……」
そのとき、ランギヤオの一体が尻尾を振りながら、舌を出して息を切らし、ワンと吠えた。
「いや、いや、いや……」
鈴木くんはそのランギヤオに言った。
その生き物は鼻先を彼女の脚にこすりつけながら、クゥンと鳴いた。
「ダディシィミィルギ、あんた、本気じゃないでしょうね?」
ランギヤオは目を大きく見開き、耳を前に垂らして、さらにしつこく鳴いた。
「分かった、分かった、好きにしろ! 私は責任取らないからね」
彼女がそう言うと、ダディシィミィルギはすぐにまた吠え始め、尻尾を振った。
3
---------
渡辺くんは囚人たちに食べ物と水を配った。
「おい、おいどんらば床ん上で皿から食わせて、獣んごつ思っちょっとか?」
彼らは不満を漏らした。
「ええっと……」
少年は戸惑った。
「ほ〜。じゃあ、床から直接食べるほうがお好みなのね」
ンラティサさんが言った。
「ゴクリ」
彼らは息を呑んだ。
「食べ物をもらえただけでもありがたいと思いなさい……」
彼女は声を張った。
その一方で、鈴木くんは囚人の一人を茂みへ連れていった。
片手にトーチを持ち、もう一方の手には戦士につないだロープを握っていた。
ダディシィミィルギも彼らの後をついていった。
4
---------
夜の冷気で雪はさらに締まり、足音がいっそう鮮明に響くようになった。
突然、戦士がうめき声を上げながらしゃがみ込んだ。
ランギヤオが唸った。
「おい、大丈夫?」
鈴木くんが尋ねた。
少年が近づくと、囚人は飛びかかり、鈴木くんの顎に頭をぶつけた。
少年は倒れた。
男はそのそばに横たわり、狩猟用ナイフに手を伸ばそうとした。
だが、ダディシィミィルギが戦士に飛びかかり、大きく口を開いた。
鋭い歯をすべて見せつけた。
ランギヤオが囚人の喉に噛みつこうとした、そのとき――
「そこまでだ!」
少年が叫んだ。
生き物は、男の首を取り囲むように口を開いたまま、動きを止めた。
「いいか、またこんな馬鹿な真似をしたら、今度は間に合わずにこいつを止められないかもしれない。だから、ゆっくり立ち上がって、もう一度茂みまで歩くぞ」
鈴木くんはそう言いながら立ち上がり、外套についた雪を払った。
「えっと……もう茂みまで行かなくてもいいかもしれん」
戦士が答えた。
少年の鼻を、ひどい悪臭が突いた。
ダディシィミィルギも少し後ずさり、安全な距離を取った。
5
---------
「おや、もう戻ってきたの? 茂みって、ここからもう少し遠いと思ってたんだけど」
戦士を連れて小屋に入ってきた鈴木くんに、ンラティサさんが言った。
「その顔、何?」
彼女は続けて尋ねた。
「え? まぁ……色々あって」
彼は彼女を見ずに答えた。
「それで、なんでこいつ、ズボンを穿いてないの?」
「え? まぁ……色々あって」
「なんでダディシィミィルギは雪に鼻をこすりつけてるの?」
「え? まぁ……色々あって」




