第三十二話:食欲が失せるほど気持ち悪い
1
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ンラティサさんは立ち上がり、腕を交差させ、両手で前身頃をつかんで外套を締めた。
「さむ〜」
彼女は震えた。
そして、ゆっくりと物置小屋へ戻っていった。
鈴木くんはしゃがんだまま、目を大きく見開き、右手の指先で額にそっと触れながら。
だが、ふと我に返ったように、立ち上がった。
そしてンラティサさんの後を追って走っていった。
2
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「まずい。これはまずい!」
物置小屋に入ってきた鈴木くんは、ンラティサさんが床から槍を引き抜いているのを見て、そう言った。
だが、彼が何かするより先に、彼女は槍を振った。
槍は再びトンファーへと折り畳まれた。
彼女が口笛を吹くと、淡い青色の光を放っていたランギヤオの一体が伸び、帯状に変化すると、床に倒れている戦士をぐるぐると巻きつけた。
それから彼女は鈴木くんのほうを振り向き、尋ねた。
「それで、こいつらをどうするつもりだったの? 今、解放する?」
「えっと……いや」
「縛ったままにする?」
「えっと……うん」
「それで……?」
「えっと……明日、食料を積んだ荷車に乗って……」
「どうやって?」
「えっと……さっき言ったように、囚人として運んでいく……」
「当然、この詰め所にいるほかの護衛たちのことも聞かれるでしょうね」
「えっと……ランギヤオを使えるって言ってたじゃん……」
「戦士たちを拘束してる……」
「えっと……紐で縛れば……」
「こいつは簡単に引きちぎったよ」
ンラティサさんは右足のつま先で左目に傷のある戦士をつついた。
「えっと……えー……」
鈴木くんは身震いし、自分を抱くようにして上腕をこすった。
そして、暖炉のそばで乾かされている戦士の毛皮の外套に目をやった。
3
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鈴木くんは毛皮に指を滑らせた。何本かの毛をつまんで撚ってみたが、繊維が短すぎて、まともな糸にはならない。
それに、外套一着分の毛皮だけでは、十分な長さのロープを作るには足りない。かといって、外套を全部刈ってしまえば、防寒着としての役目を果たせなくなる。
彼は長い間黙ったまま、爪を噛んでいた。
同じように黙っていた渡辺くんが、突然口を開いた。
「外に、ロープに使えそうな蔓みたいなの、ない?」
「何それ?」
ンラティサさんが尋ねた。
「ほら、植物が育つときに、蛇みたいに木に絡みついて登っていくやつ」
「そんなもの、この辺にはないと思うけど……」
彼女は少し声を張り、足で気絶している戦士をつついた。
「綿とか麻みたいな植物は? あの麻袋は使えない?」
「麻袋はかなり古いみたい。もう勝手に崩れそうなくらいボロボロだし。繊維植物なら……」
鈴木くんは言葉の途中で止まり、外を見た。
焚き火の近く。
その周りに置かれた丸太のほうへ。
4
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鈴木くんは狩猟用のナイフを一本使い、丸太の樹皮を剥いだ。淡い色をした内側の層を集め、溶かした雪の中で一時間ほど煮た。それから両手の間で揉みほぐし、繊維を緩めた。
その後、ほぐした内樹皮を四本の帯状に取り、それぞれを半分に折った。上の二本を時計回りに撚り、下の二本と交差させるように反時計回りにひねって位置を入れ替える。そして今度は新しく上になった二本を時計回りに撚り、下の二本と交差させる。ひたすら、その繰り返しだった。
渡辺くんも、鈴木くんの指示に従って、いくらかの縄を撚った。
ンラティサさんは、三体のランギヤオと一緒に暖炉のそばに座っているだけだった。
「よし」
最初の一メートルのロープを完成させた鈴木くんは、額の汗を拭いながら声を上げた。
「これ、十分な強度があるの?」
ンラティサさんは生き物たちから目を離さずに尋ねた。
「うーん、分からない。試してみないと」
「どうやって?」
鈴木くんはロープを伸ばし、両端をそれぞれ片方の手首に巻きつけ、できる限り腕を左右に引っ張った。
「床にいるあいつと同じくらい頑丈だと思ってるの?」
ンラティサさんは、相変わらず彼を見ずに言った。
彼は頭を下げた。
そして黙ったまま、ブーツを見つめた。
「ほら」
彼女はようやく、両手を握りしめたまま腕を彼のほうへ差し出した。
「ん?」
「私で試す。早く、できるだけきつく私の手を縛って」
鈴木くんは彼女を見つめた。
「私があいつより弱いと思ってるの?」
彼女はほとんど怒鳴るように言った。
「えっと……いや……」
「じゃあ……?」
彼は彼女の前にしゃがみ込んだ。
「……絶対に変なことはしないから」
彼は小声で呟いた。
「もちろん、しないでしょうね。自分のタマと命が惜しければ」
ゴクリ。
彼は彼女の手を縛り、彼女はロープを引きちぎろうとした。
「うぐっ!」
彼女は震えながら、縛られた両手の間に膝を押し込んだ。
それから両腕の間に両脚を通し、手を背中へ回した。
そして腕を前に戻そうと、自分の尻を何度も叩き始めた。
だが、うまくいかなかった。
彼女は鈴木くんを見つめ、それから振り返った。
彼は狩猟用のナイフでロープを切った。
二人の少年はその後さらに二時間ほどかけて、約十五メートルのロープを作った。
5
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そして……。
グウウウウウウウゥ〜。
ランギヤオが立ち上がり、渡辺くんの腹を見た。
「よし、ちょっと休憩にしよう」
ンラティサさんが言った。
「何もしてないじゃん!」
鈴木くんが不満を漏らした。
「あら、そう? じゃあ、床にいるあいつを動けなくしたのは誰? それに、ロープの強度を試したのは誰?」
「えっと……」
「それから、あなたたちのために美味しい料理を作るのは誰?」
「ンラティサさん、最高!」
渡辺くんが声を上げた。
「あれ? それ、何?」
材料をテーブルに並べている彼女を見て、鈴木くんが尋ねた。
「この美味しいプンジィンプ?」
彼女は「血のソーセージ」を手にして言った。
「魚もあったほうがいいんだけど、もう釣りに行くには遅すぎるわね。でも、あのトォリ・カスィ・ムシのパンともよく合うわよ」
そう付け加えた。
鈴木くんは顔をしかめた。渡辺くんはえずき始め、汗をかいた。




