表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/29

第二十四話:すげーほど芳しい (その一)

1

---------

戦士の一人が鈴木(すずき)くんの傷に軟膏を塗ると、一筋の涙が彼の目からこぼれ落ちた。


彼は震えていた。だが、何も言わなかった。


ストイックに。


渡辺(わたなべ)くんも、傷に軟膏を塗られている間は何も言わなかった。悲鳴すら上げなかった。


もっとも、それは唖になっていたから。


唖であっても、無肢ではなかった。


実際、まるで体を切り刻まれているかのように、足をばたつかせ、必死にもがいていた。


2

---------

毛皮の外套は、制服の上から掛けていた毛皮の毛布よりもずっと暖かかった。


あの女たちの村に置いてきたエマージェンシーシートよりも、はるかに快適だった。


そして、木綿の靴下しか履いていなかった二人にとって、ブーツもありがたい防寒具だった。


もちろん、欠点もあった。


その外套は臭かった。


まるで動物の死骸のような臭いだった。


動物の毛皮で作られ、何週間も使い続けられ、一度も洗われていなかったからだ。


それに、その男たちも長い冬の間は風呂に入ることはなく、夏でさえ滅多に入らなかった。


「おい、おはんら二人、おなごん臭いがすっど。いや、おなごんよっか、なおええ匂いじゃっど」


左目に傷のある男は笑いながら言った。


「ねえ、鈴木(すずき)、あの人、何て言ったの?」


渡辺(わたなべ)くんはかすれた声で尋ねた。


「だばかばらば、しゃばべべるぶなっばってべいっびったばだばろぼ」


鈴木(すずき)くんは答えた。


「うわぁ、まだ鈴木先輩の言葉が分からないよぉ……」


渡辺(わたなべ)くんは嘆いた。


「わ・か・り・ま・す・か?」


彼は相手の様子をうかがいながら、一音ずつ区切ってゆっくりと言った。


3

---------

二人は小屋の中に残された。


渡辺(わたなべ)、聞け」


鈴木(すずき)くんは、考え込んでいるように口元を手で隠し、小声でつぶやいた。


「鈴木先輩! また分かるようになりました!」


渡辺(わたなべ)くんは叫んだ。


「静かにしろ! とにかく聞け!」


鈴木(すずき)くんは少し声を荒らげたが、すぐに冷静さを取り戻そうとした。


扉の下の隙間から差し込む光が、誰かの影で遮られたのを見て、彼は口をつぐんだ。


やがて、その影が離れ、再び光が差し込むと、彼は話を続けた。


「村のテントで俺が言ったこと、覚えてるよな? 覚えてるならうなずけ……よし。お前の軽い口のせいで、あのンラティサは俺たちを殺しかけたんだ……」


「でも、あの人が狙ってたのは鈴木(すずき)先輩がやったことじゃないんじゃ……」


「しっ! 同じ失敗をするな。あいつらに、お前の必殺技のことも、赤い光のことも話すな」


渡辺(わたなべ)くんは何も言わなかった。


ただ、空気を嗅いだ。


「分かったか?」


鈴木(すずき)くんが尋ねた。


「うーん、なんて美味しそうな匂い! 焼き鮭みたい!」


渡辺(わたなべ)くんは答えた。


4

---------

そして、左目に傷のある剣士が扉を蹴破るようにして小屋へ入ってきた。


「おい、ええ匂いん若ぇ衆、おはんら何ば企んじょっど?」


眉をひそめながら叫んだ。


二人の生徒は目を大きく見開いた。


男は笑い出した。


「ムハハハ! 今んおはんのツラぁ、見もんじゃったど!」


少年たちは、歯を見せて、ぎこちない笑みを浮かべた。


「おい、まこて何か企んじょったっちゃなかどな?」


男は再び眉をひそめて言った。


少年たちの笑みは崩れ、口角が下がった。


「ムハハハ! 冗談じゃっど。おはんらが、そげな馬鹿なこつせんこつぁ分かっちょっど。そいをすりゃ、命ば失うこっになるでな。さて、もう遊びは終わりじゃ。おいについて来い……」


鈴木(すずき)くんは立ち上がり、男の後について行った。


渡辺(わたなべ)くんが床に座ったままなのを見ると、鈴木(すずき)くんは戻り、彼の腕をつかんで引きずり出した。


5

---------

外へ出ると、毛皮の外套をまとった戦士たちの一団が、狩猟用のナイフを手にしながら少年たちをじっと見つめていた。


ゴクリ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ