第十九話:顔から火が出るほど恥ずかしい
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「客人たちは湯は好きかのう?」
老婆が尋ねた。
「なっ……何をおっしゃるんですか、クギクロ様!? こんな薄汚い連中に、私たちのお風呂を汚させるおつもりですか!?」
ンラティサさんが異議を唱えると、多くの女たちも口々に賛同した。
「まあまあ、そう騒ぐでない。まず、その風呂は男湯じゃ」
「今は私たちが使っております」
「今おぬしたちが使っておるのは、男たちがおらんからじゃ。男たちが戻れば、また男湯になる。それに、客人がそんなに汚れておるというなら、なおさら湯に入れてやるべきじゃろう」
「でも、誰があいつらを見張るんですか?」
「なぜ風呂に入る客人を見張る必要がある?」
「逃げる可能性があります」
「客人じゃ。囚人ではない」
「ですが、あの赤い光は……」
「危険ではある。だが、あの者たちに悪意は感じなかった」
「背の低いほうはそうかもしれません。でも、もう一人は……」
「おぬしが地面を転げ回っておった相手か?」
「クギクロ様っ! そんな誤解を招く言い方はやめてください!」
ンラティサさんは頬を赤らめ、懇願した。
2
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「ああ、すっきりする。生き返る〜」
鈴木くんはそう叫び、野天風呂の縁にもたれかかった。
「で……でも、あの人に風呂を見られてるのに、よくそんなふうにくつろげるね……」
渡辺くんはぶつぶつとつぶやいた。
熱い湯に首まで浸かり、水面から出ているのは頭だけだった。
彼の視線の先では、長い黒髪の女が風呂のそばにしゃがみ込み、二人をじっと見つめていた。
「気にするなって。えっと……何て名前だったっけ。ンラティサ、だったよな?」
鈴木くんはそう言った。
そして声を潜め、渡辺くんにささやいた。
「俺さ、あいつが女だとは思えないんだよ。というか、人間ですらない気がする。ほら、野生動物みたいな感じ。色気なんて全然ないし」
そう言いながら、彼は両手で股間を押さえた。
3
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「や……やっぱり恥ずかしいよ……」
湯船の中でぶくぶくと泡を立てながら、渡辺くんが言った。
「そんなに恥ずかしがってて、田中とはこれからどうするつもりなんだ?」
「な、何言ってるんだよ?」
「ほら、男と女が一緒にいたら、そのうち……」
「た、田中先輩をそんなふうに言うな!」
そう叫ぶと、渡辺くんは立ち上がって鈴木くんのほうへ向かった。
だが、その直後に女性の姿が目に入ると、顔を真っ赤にして慌てて湯に潜ってしまった。
「まあ、そんなにンラティサが恥ずかしいなら、追い払う方法を教えてやってもいいぞ」
「ほ、ほんとに?」
「簡単さ。あいつを俺たちと一緒に風呂へ誘えばいい」
「はぁ!? お前、正気か!? 追い払いたいんであって、一緒に風呂に入りたいわけじゃない!」
「だからだよ。向こうだってそんなこと言われたら、怒って出ていくだろ」
「そ、その前に俺たちが殺されるって……」
「大丈夫。あいつは俺たちに危害なんて加えないさ」
「そ、そこまで言うなら……お前がやれよ」
「俺が?」
鈴木くんは顔を赤くした。
「なんで俺なんだよ。追い払いたいのはお前だろ」
「ほ、ほらな。自分でもその作戦に自信ないんじゃないか。それとも、あいつが怖いのか?」
「俺が怖い? ははっ……」
「く、口だけだな……」
「誰が口だけか、見せてやる!」
そう言うと、鈴木くんは見張りをしている彼女に向き直った。
「ンラティサ、一緒に入らないか? ここのお湯、すごく温かくて気持ちいいぞ。そこで立ってたら寒いだろ?」
女性は立ち上がると、大きな笑みを浮かべながら湯船へ歩き始めた。
「い、言っただろ!? 殴りに来るぞ!」
渡辺くんは半ば悲鳴のような声を上げた。
一方の鈴木くんは、目を見開いたまま息をのみ、その場で固まってしまった。
ごくり。
4
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「ン……ンラティサ?」
彼女が湯の中へ入ってくるのを見て、鈴木くんは思わず声を上げた。
「だめだ、だめだ!」
目を覆いながら、渡辺くんが叫んだ。
「ふ、服が濡れちゃうよ!」
鈴木くんがそう言うと――
彼女は服を脱ぎ始めた。
「だ、だめだって」
「そ、そうだ! 何をするつもりなのか知らないけど、ンラティサさん、やめてください!」
目を覆ったまま、渡辺くんも慌てて叫んだ。
彼女は鈴木くんの前まで来ると立ち止まった。
鈴木くんは緊張で息を荒くしていた。
彼女は唇をぺろりとなめ、彼を抱き寄せた。
「こ、これはよくないって。さっきのは冗談だから」
彼女は鼻先を彼の鼻先にそっとすり寄せた。
「ンラティサ……お、俺、ガールフレンドがいるから……」
彼女は彼の手を取り、自分の胸へ導いた。
鈴木くんは反射的に手を引っ込めた。
「だから、その……ガールフレンドがいるんだって。いや、正確にはまだガールフレンドってわけじゃないけど……でもガール、女の子で……フレンド、友達ではあるから……嘘はついてない……」
彼女はそのまま飛びつくように、湯船の中で彼を隅へ追い詰めた。
「お、俺、そういうタイプじゃないんだ……」
すると彼女は、彼の顔をぺろりとなめ始めた。
「お、おい!」
そして――
5
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「……何してるの?」
怒りに満ちた表情を浮かべた黒髪の長い女性が、湯船のそばに立ち、その光景を見下ろしていた。
それは、本物のンラティサさんだった。




