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第十九話:顔から火が出るほど恥ずかしい

1

---------

「客人たちは湯は好きかのう?」


老婆が尋ねた。


「なっ……何をおっしゃるんですか、クギクロ様!? こんな薄汚い連中に、私たちのお風呂を汚させるおつもりですか!?」


ンラティサさんが異議を唱えると、多くの女たちも口々に賛同した。


「まあまあ、そう騒ぐでない。まず、その風呂は男湯じゃ」


「今は私たちが使っております」


「今おぬしたちが使っておるのは、男たちがおらんからじゃ。男たちが戻れば、また男湯になる。それに、客人がそんなに汚れておるというなら、なおさら湯に入れてやるべきじゃろう」


「でも、誰があいつらを見張るんですか?」


「なぜ風呂に入る客人を見張る必要がある?」


「逃げる可能性があります」


「客人じゃ。囚人ではない」


「ですが、あの赤い光は……」


「危険ではある。だが、あの者たちに悪意は感じなかった」


「背の低いほうはそうかもしれません。でも、もう一人は……」


「おぬしが地面を転げ回っておった相手か?」


「クギクロ様っ! そんな誤解を招く言い方はやめてください!」


ンラティサさんは頬を赤らめ、懇願した。


2

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「ああ、すっきりする。生き返る〜」


鈴木(すずき)くんはそう叫び、野天風呂の縁にもたれかかった。


「で……でも、あの人に風呂を見られてるのに、よくそんなふうにくつろげるね……」


渡辺(わたなべ)くんはぶつぶつとつぶやいた。


熱い湯に首まで浸かり、水面から出ているのは頭だけだった。


彼の視線の先では、長い黒髪の女が風呂のそばにしゃがみ込み、二人をじっと見つめていた。


「気にするなって。えっと……何て名前だったっけ。ンラティサ、だったよな?」


鈴木(すずき)くんはそう言った。


そして声を潜め、渡辺(わたなべ)くんにささやいた。


「俺さ、あいつが女だとは思えないんだよ。というか、人間ですらない気がする。ほら、野生動物みたいな感じ。色気なんて全然ないし」


そう言いながら、彼は両手で股間を押さえた。


3

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「や……やっぱり恥ずかしいよ……」


湯船の中でぶくぶくと泡を立てながら、渡辺(わたなべ)くんが言った。


「そんなに恥ずかしがってて、田中(たなか)とはこれからどうするつもりなんだ?」


「な、何言ってるんだよ?」


「ほら、男と女が一緒にいたら、そのうち……」


「た、田中たなか先輩をそんなふうに言うな!」


そう叫ぶと、渡辺(わたなべ)くんは立ち上がって鈴木(すずき)くんのほうへ向かった。


だが、その直後に女性の姿が目に入ると、顔を真っ赤にして慌てて湯に潜ってしまった。


「まあ、そんなにンラティサが恥ずかしいなら、追い払う方法を教えてやってもいいぞ」


「ほ、ほんとに?」


「簡単さ。あいつを俺たちと一緒に風呂へ誘えばいい」


「はぁ!? お前、正気か!? 追い払いたいんであって、一緒に風呂に入りたいわけじゃない!」


「だからだよ。向こうだってそんなこと言われたら、怒って出ていくだろ」


「そ、その前に俺たちが殺されるって……」


「大丈夫。あいつは俺たちに危害なんて加えないさ」


「そ、そこまで言うなら……お前がやれよ」


「俺が?」


鈴木(すずき)くんは顔を赤くした。


「なんで俺なんだよ。追い払いたいのはお前だろ」


「ほ、ほらな。自分でもその作戦に自信ないんじゃないか。それとも、あいつが怖いのか?」


「俺が怖い? ははっ……」


「く、口だけだな……」


「誰が口だけか、見せてやる!」


そう言うと、鈴木(すずき)くんは見張りをしている彼女に向き直った。


「ンラティサ、一緒に入らないか? ここのお湯、すごく温かくて気持ちいいぞ。そこで立ってたら寒いだろ?」


女性は立ち上がると、大きな笑みを浮かべながら湯船へ歩き始めた。


「い、言っただろ!? 殴りに来るぞ!」


渡辺(わたなべ)くんは半ば悲鳴のような声を上げた。


一方の鈴木(すずき)くんは、目を見開いたまま息をのみ、その場で固まってしまった。


ごくり。


4

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「ン……ンラティサ?」


彼女が湯の中へ入ってくるのを見て、鈴木(すずき)くんは思わず声を上げた。


「だめだ、だめだ!」


目を覆いながら、渡辺(わたなべ)くんが叫んだ。


「ふ、服が濡れちゃうよ!」


鈴木(すずき)くんがそう言うと――


彼女は服を脱ぎ始めた。


「だ、だめだって」


「そ、そうだ! 何をするつもりなのか知らないけど、ンラティサさん、やめてください!」


目を覆ったまま、渡辺(わたなべ)くんも慌てて叫んだ。


彼女は鈴木(すずき)くんの前まで来ると立ち止まった。


鈴木(すずき)くんは緊張で息を荒くしていた。


彼女は唇をぺろりとなめ、彼を抱き寄せた。


「こ、これはよくないって。さっきのは冗談だから」


彼女は鼻先を彼の鼻先にそっとすり寄せた。


「ンラティサ……お、俺、ガールフレンドがいるから……」


彼女は彼の手を取り、自分の胸へ導いた。


鈴木(すずき)くんは反射的に手を引っ込めた。


「だから、その……ガールフレンドがいるんだって。いや、正確にはまだガールフレンドってわけじゃないけど……でもガール、女の子で……フレンド、友達ではあるから……嘘はついてない……」


彼女はそのまま飛びつくように、湯船の中で彼を隅へ追い詰めた。


「お、俺、そういうタイプじゃないんだ……」


すると彼女は、彼の顔をぺろりとなめ始めた。


「お、おい!」


そして――


5

---------

「……何してるの?」


怒りに満ちた表情を浮かべた黒髪の長い女性が、湯船のそばに立ち、その光景を見下ろしていた。


それは、本物のンラティサさんだった。

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