第十四話:谷の奥へ進むほど険しい (その六)
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岩の隙間から、小さな女の子がひょこっと顔をのぞかせた。
辺りを見回したあと、女を見つけると、顔いっぱいに笑みを浮かべた。
そのまま岩陰から飛び出し、女のもとへ駆け寄った。
少女は、女をそのまま小さくしたような姿だった。
赤みを帯びた薄い褐色の肌、長い黒髪、そして毛皮の外套。
やがて少女は二人の少年に気づいた。
「タ・ナ・カ?」
「田中先輩のことも知ってるんですか?」
渡辺くんが尋ねた。
「たぶん、その『タ・ナ・カ』は田中先輩のことじゃないぞ」
鈴木くんがつぶやいた。
続いて、崖の岩壁に開いた通路から、さらに二人の女が姿を現した。
一人は短い黒髪に色白の肌。
もう一人は長い赤毛に、やや濃い色の肌。
二人とも同じ毛皮の外套をまとっていた。
「タ・ナ・カ?」
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「ウ・ヲピトラバ・カリ・オリタル・カ?」
少女が長い黒髪の女に尋ねた。
女は肩をすくめると、少年たちへ目を向けた。
そして頬を赤らめると、眉をひそめて少女へ叫んだ。
「ヲコイ・モノバ・ナ・イピ・ソ!」
ほかの二人の女は、崖の岩壁に開いた通路の中へ戻っていった。
しばらくすると、大勢の女たちを連れて戻ってきた。
彼女たちは巨大なトカゲのような怪物を縛るための、ひどく太い縄を担いでいた。
数人は怪物の前に、丸太を輪切りにしたような木片を横向きに並べた。
縄を引いて怪物をその上へ乗せると、丸太は車輪のように回転し、巨体を前へ運んでいった。
通路の前を塞いでいた巨岩もさらに動かされて、入口は大きく広げられた。
やがて少年たちの目には目隠しが巻かれた。
オオカミのような獣たちの低い唸り声と、突きつけられた槍の穂先を前に、二人は黙って従うしかなかった。
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二人の耳に、
ゴロ〜ン!
という音が響いた。
目隠しをされたままだったが、しばらくすると周囲が暗くなったのを感じた。
凍てつく風も完全に止んでいた。
聞こえてくるのは、うめき声、聞き取れない話し声、髪や毛皮の擦れ合う音、そして反響。
あるいは、自分たちの速まった鼓動さえ聞こえていたのかもしれない。
オオカミのような獣たちの背に揺られながら進んでいた。
ときおり振り落とされそうになり、そのたびに毛を強くつかみ直した。
どうやら道はかなり入り組んでいるらしい。
ゴロ〜ン!
やがて、周囲が明るくなったように感じた。
冷たいながらも穏やかな風が肌をなでる。
話し声やうめき声は相変わらず聞こえていたが、反響はもうない。
遠くからは鳥のさえずりも聞こえてくる。
「イン・カ・ポリ」
女の声がした。
そして――
「タ・ナ・カ?」
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「ウ・ヲピトラバ・カリ・オリタル・カ?」
女の一人が言った。
すると、長い黒髪の女が叫んだ。
「シ・リ・ポ!」
少年たちは獣の背から降ろされ、先の尖ったもので軽く突かれながら歩くよう促された。
硬い棒のようなもので上腕を軽く叩かれると、左や右へ曲がれという合図らしい。
しばらくすると、鈴木くんのリュックが取り上げられた。
続いて二人とも両手を後ろで縛られ、頭を低く下げさせられたまま、中腰に近い姿勢で歩かされた。
足元はもう雪でも岩でもなかった。
踏みしめるたびに、パキパキと乾いた音を立てていた。
立ち上がろうとすると、頭が何か低い格子状のものにぶつかった。
どこからか聞こえるうめき声は、揺れを感じるにつれて次第に遠ざかっていく。
風も少しずつ強くなっていった。
座り込み、指先で床を探ると、一枚板ではないことがわかった。
竹と縄で編まれたような、格子状の床だった。
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「な、何が起きてるんだ!?」
揺れがいっそう激しくなる中、渡辺くんが叫んだ。
鈴木くんは床を這い、やがて壁らしきものへたどり着いた。
そして、壁に後頭部をこすりつけ、目隠しを外した。
予想どおりだった。
二人は、空中に吊るされた檻の中にいた。




