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第十四話:谷の奥へ進むほど険しい (その六)

1

---------

岩の隙間から、小さな女の子がひょこっと顔をのぞかせた。


辺りを見回したあと、女を見つけると、顔いっぱいに笑みを浮かべた。


そのまま岩陰から飛び出し、女のもとへ駆け寄った。


少女は、女をそのまま小さくしたような姿だった。


赤みを帯びた薄い褐色の肌、長い黒髪、そして毛皮の外套。


やがて少女は二人の少年に気づいた。


「タ・ナ・カ?」


田中(たなか)先輩のことも知ってるんですか?」


渡辺(わたなべ)くんが尋ねた。


「たぶん、その『タ・ナ・カ』は田中(たなか)先輩のことじゃないぞ」


鈴木(すずき)くんがつぶやいた。


続いて、崖の岩壁に開いた通路から、さらに二人の女が姿を現した。


一人は短い黒髪に色白の肌。


もう一人は長い赤毛に、やや濃い色の肌。


二人とも同じ毛皮の外套をまとっていた。


「タ・ナ・カ?」


2

---------

「ウ・ヲピトラバ・カリ・オリタル・カ?」


少女が長い黒髪の女に尋ねた。


女は肩をすくめると、少年たちへ目を向けた。


そして頬を赤らめると、眉をひそめて少女へ叫んだ。


「ヲコイ・モノバ・ナ・イピ・ソ!」


ほかの二人の女は、崖の岩壁に開いた通路の中へ戻っていった。


しばらくすると、大勢の女たちを連れて戻ってきた。


彼女たちは巨大なトカゲのような怪物を縛るための、ひどく太い縄を担いでいた。


数人は怪物の前に、丸太を輪切りにしたような木片を横向きに並べた。


縄を引いて怪物をその上へ乗せると、丸太は車輪のように回転し、巨体を前へ運んでいった。


通路の前を塞いでいた巨岩もさらに動かされて、入口は大きく広げられた。


やがて少年たちの目には目隠しが巻かれた。


オオカミのような獣たちの低い唸り声と、突きつけられた槍の穂先を前に、二人は黙って従うしかなかった。


3

---------

二人の耳に、


ゴロ〜ン!


という音が響いた。


目隠しをされたままだったが、しばらくすると周囲が暗くなったのを感じた。


凍てつく風も完全に止んでいた。


聞こえてくるのは、うめき声、聞き取れない話し声、髪や毛皮の擦れ合う音、そして反響。


あるいは、自分たちの速まった鼓動さえ聞こえていたのかもしれない。


オオカミのような獣たちの背に揺られながら進んでいた。


ときおり振り落とされそうになり、そのたびに毛を強くつかみ直した。


どうやら道はかなり入り組んでいるらしい。


ゴロ〜ン!


やがて、周囲が明るくなったように感じた。


冷たいながらも穏やかな風が肌をなでる。


話し声やうめき声は相変わらず聞こえていたが、反響はもうない。


遠くからは鳥のさえずりも聞こえてくる。


「イン・カ・ポリ」


女の声がした。


そして――


「タ・ナ・カ?」


4

---------

「ウ・ヲピトラバ・カリ・オリタル・カ?」


女の一人が言った。


すると、長い黒髪の女が叫んだ。


「シ・リ・ポ!」


少年たちは獣の背から降ろされ、先の尖ったもので軽く突かれながら歩くよう促された。


硬い棒のようなもので上腕を軽く叩かれると、左や右へ曲がれという合図らしい。


しばらくすると、鈴木(すずき)くんのリュックが取り上げられた。


続いて二人とも両手を後ろで縛られ、頭を低く下げさせられたまま、中腰に近い姿勢で歩かされた。


足元はもう雪でも岩でもなかった。


踏みしめるたびに、パキパキと乾いた音を立てていた。


立ち上がろうとすると、頭が何か低い格子状のものにぶつかった。


どこからか聞こえるうめき声は、揺れを感じるにつれて次第に遠ざかっていく。


風も少しずつ強くなっていった。


座り込み、指先で床を探ると、一枚板ではないことがわかった。


竹と縄で編まれたような、格子状の床だった。


5

---------

「な、何が起きてるんだ!?」


揺れがいっそう激しくなる中、渡辺(わたなべ)くんが叫んだ。


鈴木(すずき)くんは床を這い、やがて壁らしきものへたどり着いた。


そして、壁に後頭部をこすりつけ、目隠しを外した。


予想どおりだった。


二人は、空中に吊るされた檻の中にいた。


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