第七章:知ってなお惹かれる
リリアナは、外で少し風を浴びてくると言った、レイラの後ろ姿を見つめていると、声がした。
「リリアナ・エルステッド。少し、話がしたい」
社交界の喧騒が遠ざかる中、カインは静かに声をかけた。リリアナは驚いたように振り返ったが、すぐに頷いた。それが、レイラの事だと分かっていたからだ。
「カイル様?……レイラ様のことですね」
「ああ。君は、彼女の過去を知っているようだった」
リリアナは、少しだけ目を伏せた。そして、リリアナは静かに語り出した。
「はい……。知っております。……レイラ様は、昔から“優しさを隠す”のが癖でした。庶民だった私をかばって罰を受けたことも、令嬢たちの陰口を黙って背負ったことも誰にも言わず、ただ仮面をかぶっていました」
カインは黙って聞いていた。その瞳は、どこか遠くを見ているようだった。
「彼女は、誰かに選ばれることを、ずっと恐れていたんです。選ばれたら、また傷つくかもしれないから。だから仮面をかぶって、誰にも本音を見せなかった。私にさえ、見せてくださらなかった……」
「……それでも、君は彼女の味方でいたいと?」
「はい。だって、レイラ様は誰よりもお優しい方だと知っていますので」
リリアナは微笑みながら、答える。
カインは、ふと目を伏せた。その胸の奥で、何かが静かに溶けていくのを感じていた。
「カイル様?どこか、ご気分が悪いのですか?」
「……いや、何でもない。それより、もし彼女が戻ってきたのなら、無理はするなと伝えてくれ」
カインは、そう言ってリリアナに背を向ける。そんなカインにリリアナは慌てて声をかける。
「あっ!カイン様は、どちらへ?」
「私は、先に部屋に戻る。レイラにもそう伝えてくれ」
「ふふ、分かりました。レイラ様にお伝えいたします。カイン様も、レイラ様のことが心配なのですね……」
リリアナは氷の王子が、なぜレイラを選んだのか分かったのだろう、リリアナは快くその伝言を受け入れた。
夜、執務室。
カインは、机の上に置かれた一枚の手紙を見つめていた。それは、レイラが追放された直後に、セドリックが彼女に送ったものだった。
『悪役令嬢という仮面をかぶっていても、君の優しさは消えないよ。レイラ……君はいつまでも優しくて、可愛い僕の姪っ子だよ』
その一文が、胸に刺さった。
(……俺は、何を見ていた?彼女の悪役令嬢という仮面か?それとも……その奥にある、優しさか……)




