↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/14

第十三章:恋が言葉になる

夜の帳が降りた頃、レイラは静かに屋敷の廊下を歩いていた。

手には、薄いショール。心には、まだ言葉にならない想い。

カインの部屋の前で、立ち止まる。扉の向こうには、彼がいる。あの夜、命を賭して守ってくれた人。そして、私の“仮面の奥”を見つめ続けてくれた人。


「……カイン様、入ってもよろしいですか?」


「ああ。構わない」


その声に、レイラはそっと扉を開けた。

カインは、ベッドに腰掛けていた。傷はまだ癒えきっていない。けれど、その瞳は、穏やかで、優しかった。


「……夜に来るって言っていたからな、ずっと起きていた」


「……ごめんなさい。遅くなってしまいましたわ……」


レイラは、彼の傍に座った。沈黙が、二人の間に流れる。けれど、それは苦しいものではなかった。


「……あの時の言葉。『あなたを失いたくない』って……」


カインが、静かに言った。


「……あれは、本当に恋の言葉だっただろう」


レイラは、少しだけ俯いた。けれど、すぐに顔を上げて、彼を見つめた。


「……はい。あれは、紛れもなく本心であり恋の言葉でしたの……」


その声は、震えていた。けれど、確かだった。


「あなたがいなくなるのが怖かった。あなたが傷ついた時、わたくしの世界が崩れるように感じましたわ。それが……恋なのだと、気づきましたの」


カインは、そっとレイラの手を取った。


「そうか。……俺も、君に惹かれていた。仮面の奥にある、君の優しさに。君が君のままでいてくれることが、俺にとっての救いだった」


レイラは、微笑んだ。それは、仮面のない本当の笑顔だった。


「これからは、仮面の外でも……あなたの隣に立っても、よろしいのですの?」


「当たり前だ。君の隣に、俺も立ちたい。たとえ周りが何というと、俺は君の隣に立って君にふさわしい夫になるとそう決めたのだ」


二人の手が、重なる。それは、役割でも義務でもない。ただ、感情のままに選ばれた、ひとつの答えだった。

恋が、言葉になった夜。レイラは、初めて“自分の声”で、誰かを想った。

仮面のない夜。

恋は言葉になった。そして、レイラは初めて“自分の未来”を見つめようとしていた。それは、誰かに選ばれる未来ではなく、自ら選ぶ未来だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。