EP5:遭遇
こうして3人はバラバラになり、廃墟を探索し始めた。
マリアは建物の上層部を探索していた。
建物のところどこは荒れており、ボロボロの椅子が無造作に置かれ、ガラス片が床に散らばっていた。
「なるほど。こうやって配置されているわけね 」
マリアは部屋に落ちている弾丸やグレネードを見つける。
「どこで必要になるか分からない。拾っておきましょう 」
マリアは床に落ちているアイテムを回収していく。
シンは地下室を探索していた。
そこには、割れたバイオカプセルや用途不明の薬剤が入っていたであろう容器や、手術器具等が放置されていた。
「…バ◯オハザードかよ」
シンはそう呟きながらも、鎮痛剤や弾丸といったアイテムを回収していく。
一方のウゴは建物外のキャンプ群を探索していた。
放置されたテントや壊れた軍用車両が点在する、見晴らしの良い場所だ。
「俺の読み通りだ!物質がザクザク出てくる!」
ウゴはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、軍用クレートを漁る。
弾丸や手榴弾に加え、食料や水までも確保した。
「アイツラはさぞ羨ましがるだろうな。そうに違いない」
ウキウキと鼻歌を歌いながら、ウゴが次のテントの幕をめくる。
「さて、お宝ちゃん。ウゴ様がやってき…」
だが、めくったテントの先にいたものは…
「ギィッ」
そこには、動物の死体をついばんでいる小型の恐竜の群れがいた。
「あぁ。お食事中失礼しました。俺はこれで」
ウゴは引きつった愛想笑いを浮かべ、そっと幕を戻そうとする。
しかし…
「ギィィィッ!!」
捕食者たちは一斉にウゴを視認すると、獲物を変えた。
「勘弁してくれ!俺なんかを食べても美味しくないぞ!!」
ウゴは必死に建物の方へ逃げ出す。
「ギィィィッ!!」
背後からは恐竜の群れが襲いかかる。
「ええい!しつごいぜ!!」
ウゴは、ゴツゴツとしたライトマシンガンを構えた。
「そんなにミンチになりたいなら、お前らハンバーグにしてやるよ!」
そして、ウゴはライトマシンガンの引き金を引く。
「ダダダダダ」
直後、強烈な反動がウゴを襲う。
「うわっと!何だこれは!?ロデオマシーンよりもすごいぞ!?」
ウゴは予想外の反動に振り回され、派手に尻もちをつく。
弾丸は空を切り、恐竜には一発も掠っていなかった。
「ギッ!!」
恐竜はウゴに迫る。
「冗談じゃない! マリア、シン! 助けてくれ!! 」
なりふり構わず、ウゴは恐竜を引き連れて建物内へ転がり込んだ。
その頃、一階フロアを探索していたマリアの耳に、銃声が届く。
「銃声?」
咄嗟にアサルトライフルを構え、入口へと慎重に向かった。
その時。
「マリアぁぁ!!」
鉢合わせるように、ウゴが飛び出してきた。
「ウゴ…!!驚かせないで!!」
マリアは怪訝な表情を浮かべる。
それと、同時。
「ギッ!!」
恐竜の群れが二人に近づく。
「ちょっと!何を連れてきているのよ!?」
マリアはウゴを睨みつける。
「いやぁ、そのだな! 俺があまりにイケメンなもんで、熱狂的なおっかけに捕まっちまってさ…ハハハ!」
ウゴは軽口でそう言い切る。
「仕方ないわね」
マリアはアサルトライフルを肩に据え、照準を合わせる。
「タタタタン」
小気味よい銃声が響く。
「ギャッ!!」
的確な射撃によって恐竜はみるみるうちに倒れていく。
「おお!すげぇ!」
ウゴはマリアの狙撃の腕に感心する。
「軽口を叩く隙があるなら、戦ってくれない?」
マリアの冷たい声に、ウゴは慌てて別の武器を取り出した。
「(さっきのライトマシンガンは反動が強くてダメだった。だが、これなら)」
すると、ウゴは武器を取り出した。
「とっておきの、ウゴスペシャルをかましてやるぜ!!」
なんと、ウゴが取り出したのは狩猟用のスナイパーライフルだった。
それもボルトアクション式のものだ。
「狙いを定めて…」
ウゴが狙いを定める。
「ギッ!!」
しかし、恐竜はすばしっこく、スコープの中を縦横無尽に跳ね回る。
「ターン!」
放たれた一発は、無情にも壁を穿つだけだった。
「あー!ちくしょう!ちょこまかと動きやがって」
その上、ボルトアクション式のため、一発ごとにコッキングが入る。
明らかに乱戦には不向きだった。
「近距離でそんなライフルが当たるわけないでしょ…」
マリアは呆れ果て、残りの恐竜を手際よく仕留めていった。
やがて…
「…終わったわよ」
マリアが銃を下ろす。
転がっていた死体は粒子となって消滅し、そこには弾丸や鎮痛剤が残された。
「(なるほど。倒せば補充ができるシステムね)」
彼女は納得したように頷く。
「助かったぜ…あやうく奴らのランチになるところだったぜ」
ウゴが額の汗をぬぐう。
「ウゴ。あなた、ライフルと何を使っているの?」
マリアはウゴに使っている武器を尋ねた。
「あぁ。威力があるし、何よりロマンがある! 男なら誰もが憧れるセットだろ?」
彼は誇らしげに、スナイパーライフルとLMGを床に並べた。
「…正気なの?その二つでこの戦場を渡り歩くつもりだったわけ?」
それを見た、マリアはため息を付く。
「そ、そりゃあもちろん!ライトマシンガンだって…ほら!」
ウゴは再び構えるが、銃身の重さに腕がブルブルと震え、照準を固定することすらできていない。
「…お話にならないわ。素人が扱いきれる重さじゃないでしょ」
マリアはウゴの単純さに呆れ果てる。
「素人じゃないぞ!これでも学生時代は狩猟を嗜んでいたんだぞ!」
ウゴは必死に口を動かし、言い訳を並べる。
「鳩やウサギを狙うのとは、訳が違うのよ」
マリアが諭していた時だった。
「なんだ、騒がしいな」
そこへ、階段からシンが現れた。
「やぁ!シン!そっちは何か見つけたかい?グラビア雑誌とかがあれば嬉しいんだが…」
ウゴは瞬時に切り替えて、シンに馴れ馴れしく語りかける。
「そんなものはない」
シンはウゴの言葉を平然と無視し、マリアに向き直る。
「このエリアの物資は概ね漁り尽くした」
「上出来ね。私も収穫はあったわ」
マリアは小さく笑って見せる。
「あ、あの……俺も、物資なら山ほど手に入れたんだぜ?」
ウゴがステータス画面を提示する。
そこには大量の弾薬、食料、水がリストアップされていた。
「へぇ。恐竜とお散歩していただけかと思ったけれど、仕事はしていたのね」
マリアは驚いた表情を浮かべる。
「当然さ!資産回収は俺の本業だからな」
ウゴはドヤ顔で二人を見つめる。
「…恐竜?」
一方で、マリアの言葉にシンが首を傾げる。
「実はね…」
マリアが先程までの出来事を話す。
「恐竜に詐欺を仕掛けて、仕返しされたといったところか」
シンが皮肉たっぷりに、嫌味を言う。
「いや、だから違うって!!俺のおっかけをしていたんだって!この髭、この鼻、そしてスタイル…恐竜達だって、きっと…」
ウゴは全力で否定すると、ペラペラと軽口を叩きはじめた。
「マリア」
シンはそれを無視するとマリアに話しかける。
「どうした?」
「ここから東に進んだところに、『15番キャンプ』というランドマークがある。物資はある程度集まったとはいえ、まだ心細い」
シンがマップを開くと、東にあるランドマークを指さす。
「確かにね。だから、そこに行って物資を補給する…それが狙いね?」
マリアはシンの意図を汲み取る。
「あぁ。敵が出る可能性も否定できないが…」
シンは対人戦になることを考えた上で、こう答えた。
「邪魔する奴らは片っ端から殺す。それでいいな?」
その目は明らかに得物を狙う狩人のものだった。
「…まぁ、状況によってはやむを得ないわね」
マリアも半ば同意する。
「おいおい!まずは交渉してみようぜ!もしかしたら味方になってくれ…」
ウゴが慌てて提案するが、シンは冷たく遮った。
「信じられるのは…俺の言葉と、おやっさんの言葉だけだ」
しかし、シンはウゴの言葉を遮るように呟くと、建物の出口に向かう。
「……行くわよ、ウゴ」
マリアはウゴに顔を向けると、シンの後を追う。
「まったく…とんだサイコ野郎だ。そのうち人間でも食い始めるんじゃねぇのか?」
ウゴは頭を抱えながらも、置いていかれまいと必死に二人の背中を追った。
こうして、三人は次の目的地『15番キャンプ』を目指した。




