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09_主役を交換します

最終幕の冒頭は、いつもより小さな音で始まった。


両舞台の奥には作業艇の映像が残っていた。青い艦から伸びた索を、赤い手袋が掴んでいる。その下に、青と赤の本国がそれぞれ出した命令文が並んだ。読み終えた客が隣を見た。仮面を外す人もいた。


暁座でアルマが剣を上げた。宵座でセラが同じ剣を持つ。歌劇祭が二つに増やした小道具だった。ミナはその間へ前奏を通し、イリヤの音が返るのを聞いた。


今度は競わないつもりだった。


イリヤが一音を長く伸ばしたので、半拍長く返した。向こうが装飾を足す。ミナも足しかけ、ターラが指揮棒を狭く持ち直したのを見た。次を短く切ると、イリヤはその長さを変えなかった。ずるいと思ったが、合唱の息が入った。


アルマは、土地も船も持っている姫の声で歌った。セラは空の盆を置き、自分にはそれを渡せないと答えた。二人の歌詞は合わなかった。婚礼が進むほど意見が食い違い、それでも相手へ近づいていく演出になった。


鏡壁が開いた。


金色の橋の上へ二つの照明が届き、手すりの影を別々の向きへ落とした。外の三百の噴水は、事故のあと、花の形を保てなくなっていた。水は細い筋になって回廊の縁を巡っている。その向こうを、青い船腹がゆっくり横切った。


アルマとセラは剣を交換し、互いの冠へ手を伸ばした。


セラの冠がアルマの髪に掛かった。


「横へ」


アルマが小さく言った。セラは客席を見ず、その指が動くまで手を止めた。冠が抜けると、編んだ髪が一束ほどけて肩へ落ちた。アルマは直す手間を惜しみ、斜めにかぶったまま宵座へ礼をした。笑いが起きた。セラは逆さにかぶり返そうとしたが、アルマがもう歩き出したので、普通に載せた。


それを見て、ミナは少し笑った。上手にふざけなかったセラが、今夜は可笑しかった。


ルクが片側の入口へ立ち、最初の組を出した。四十三人全員が同時に乗るのではない。先へ入った二人が幅を空けたら、反対から二人が進む。両岸に残った楽団と合唱が、渡る者の音を支えた。


ミナの右肘に衣装の帯が巻きついた。肘を上げると隣の顎へ楽器が当たる。半歩引くと、踵が次の人の靴に触れた。汗で管が滑り、唇の傷へマウスピースを押しつける力が強くなる。見えない後ろへ謝りながら、左手だけで帯をほどいた。


そのとき、前の舞踊手が動かなくなった。


窓いっぱいに青い艦の傷が映っていた。白い消火剤の跡と、剥がれかけた外板がはっきり見える。舞踊手は手すりを掴んだまま来た側へ戻ろうとした。後ろの裾が重なり、ミナの足も押された。


ルクの太鼓が止んだ。


「止まれ。後ろ、押すな」


声は大きくなかったが、ミナの肩が先に止まった。楽器の先が向かいの人の喉へ向いていることに気づき、管を下げた。


両岸の音楽は続いていた。若い舞踊手は、それが怖いようだった。進まなければ、もう自分の出番が過ぎる。足が動かないのに肩だけを前へ送ろうとして、手すりの指がいっそう固くなった。


ルクが太鼓を背中へ回した。


「手を見せて。そっちの手。離せる方だけ」


舞踊手は首を振った。


「なら、俺がそこへ行く。後ろを空けて」


ミナは二人ぶん戻った。曲の三拍目が過ぎる。ルクはその拍を足で取らなかった。空いたところへ身体を入れ、自分の肩を舞踊手の手の下へ差し込んだ。


両方の手を離させようとはしなかった。まず片方が移るまで待った。それから半歩。舞踊手の靴の先がようやくこちらを向くと、ルクは両岸へ、まだ入るなと手を上げた。


遅れている。そのことは全員に見えていた。ルクは太鼓へ手を戻さなかった。


舞踊手が宵座の床を踏んだ。膝が折れかけ、受け持ちの係員が肘を支えた。ルクはその人に向かって、座らせてくれ、と頼んだ。係員が椅子を寄せるまで待ち、それから橋へ戻った。


ミナの前に、一人ぶんの空きができた。


ルクは残る人を見て指を二本立てた。二人進み、反対から二人。借りた太鼓が戻ったのは、ミナが橋の中央へ近づいてからだった。高く小さな音だった。今度はその軽さで、足を急かされずに済んだ。


向こうからイリヤが来た。肩が譜面を抱えた合唱団員へ触れ、息が一つ遅れた。


ミナの指が動いた。第二幕で吹いた高い音なら、すぐ出せる。客はこちらへ顔を向けていない。イリヤが止まったところを見ている。ここで自分が始めれば、音をつないだ人として聞いてもらえる。


イリヤはまだ息を吸っていなかった。


ミナは高音の位置に置いた指を離した。唇の傷を避ける余裕もないまま、相手が楽器を少し持ち上げるのを聞いた。衣装が擦れ、太鼓の返却札が背中のどこかで鳴った。


吹かずに、四拍目を待つ。


低い音が来た。


柱の後ろの席まで届いた音だった。強くなったから届いたのではない。ミナが空けたところへ、合唱の息と一緒に入ってきた。


ミナはその先を吹いた。朝に考えた装飾は半分しか入らなかったが、残した二音がよく鳴った。自分が吹き終えたあとにも、イリヤの響きが消えずに聞こえていた。


自分の番は、そのあとにちゃんとあった。


ミナは暁座へ、イリヤは宵座へ着いた。橋の帯が岸から岸へ渡り、金、青、赤、銀の布を、同じ列には属していなかった人たちが持っていた。ポロが鏡扇を起こす。支点を押さえた四人は彼を見ず、互いの息で力を掛けた。


暁座へ立ったセラが歌い始めた。


広告から聞こえた声と、似ていた。客の一人が何か言ったが、ミナには聞き取れなかった。セラは声を変えず、アルマがさっき歌った姫へ返事をした。


「その星を、私は持ちません」


セラは冠を両手で持った。


「ここへ来たことを、覚えていてください」


宵座でアルマが返した。領土を手放す歌詞にはしなかった。代わりに、帰っていく相手を引き留めないと歌った。セラは頷かなかった。二人は離れた場所で、それぞれの客を見た。


拍手はすぐには揃わなかった。暁座の前の方が先に叩き、宵座では、歌の最後まで聞いてから手を上げる人が多かった。セラを皇后と呼ぶ声は、また一つ聞こえた。それに応じず彼女の名を呼んだ客もいた。


ミナはどちらの声も、自分の音で消さなかった。


作業艇の回線が開いた。


『左右、工具が掛かった。放流を始める。牽引を維持してくれ』


ターラが手を伏せた。今度は全員が音を止めた。歌の続きを持ったまま、客席も画面を見た。


青旗艦の艦長へ、再度の命令が届いた。索を離せ、との文面が小さな欄に出た。女の艦長はそれを読んでから、作業艇の人に戻るまで何秒かかるか尋ねた。


『ここで戻れば、また掛け直しです』


『なら、続けて』


彼女は画面の外へ顔を向けた。


『本国への報告に残す。索は切らない。砲門は閉じる』


赤旗艦からは、しばらく声が来なかった。その間にも索は張っていた。男の艦長がようやく答えた。


『こちらも牽引を続ける。照準は外す。全艦、撃つな』


客席から拍手が起きかけた。ルクは太鼓を構えずにいた。まだ作業員が戻っていない。


回廊の縁に並んだ水の筋が、外へゆっくり広がった。二つの放流器を通って、場が宮殿の向こうへ逃げ始めていた。艦長たちが自分で噴射を掛ける。古い劇場は何も命じなかった。


赤い艦が先に索を緩め、青い旗艦の傷ついていない側へ場所を空けた。青艦の艦尾が一度大きく振れた。補助噴射が途切れ、船腹が赤い艦へ寄る。女の艦長は主機を弱め、赤い側は自分の艦を流れに残して索を引き受けた。二つの船が離れるまで、作業員は梯子の途中で身体を小さくしていた。


ミナは、自分がコルネットを両手で握り潰しそうになっていることに気づいた。指を一本ずつ緩めても、足の裏の力は抜けなかった。


青い船腹と赤い船首の間に、星が見えた。


『損傷艦から出す。こちらは後でいい』


赤旗艦が言った。


同時ではなかった。青い艦が二隻出て、赤い作業艇が戻り、それから次の船へ索が渡った。三十六隻がいっぺんに美しい形へ並ぶことはなかった。窓の下にはまだ船が残り、噴水の一部は水のない筒になっていた。


モルナが、もう差し迫った接触はないと告げた。完全な退出は時間がかかる。病室から、搬送路を空けておくよう連絡があった。


ターラがミナを見た。


ミナは向こう岸を見た。イリヤが楽器を上げている。歌を止めたところから、あと十二小節あった。


最後まで吹いた。


幕は下りなかった。二つの舞台を隔てていた鏡壁は、開いたままだった。橋の上では礼をせず、渡った先の床で、それぞれの客へ頭を下げた。座っていた若い舞踊手は、座ったまま上体を折った。


ヴァロが拍手のあいだに出演者を数えた。ミナにも名前がいくつか聞こえた。返事のなかった一人は、後ろで帯を外していた。彼が手を上げると、ヴァロはようやく予定表を閉じた。


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