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第25話:規格外のコード・バーストと、絶対規律の崩壊


「くっ、調子に乗るなよ、バグ風情が……! 『破滅のシナリオ:第三章。世界を乱す反逆者は、その存在を――』」

「うるさい、黙れ(ミュート)」


ルシードが叫び、さらなる呪縛の規律を紡ごうとしたその瞬間。

私が虚空に向けてスッと人差し指を立てると、彼の言葉が物理的に掻き消え、喉を抑えて声を失った。世界のシステムそのものを私の魔力で直接『上書き(オーバーライド)』したのだ。


「な……が、は……っ!?」

声の出ないルシードが、信じられないものを見る目で絶句し、ガタガタと震えだす。

その背後、倒れ伏していた国王陛下や、我が父アルベルト公爵、そしてリチャードお兄様たち全員が、部屋の床を埋め尽くす純白の魔法陣の輝きの中で呆然と私を見上げていた。


「セレナ……お前、一体何をした……? 奴の絶対的な規律が、跡形もなく消えている……」

リチャードお兄様が、自由になった身体を起こしながら、驚愕に目を見開く。


「お父様、お母様、みんな、そこに座って大人しく見ていて。……私の大切な家族(居場所)に手を出したバグは、私が今すぐ一瞬で綺麗に『初期化』して差し上げるから」


私がきらびやかな漆黒のイブニングドレスを翻し、一歩、また一歩と宙に浮くルシードへと歩み寄る。

私の瞳に映るのは、ルシードの身体を構成している『続編の強制シナリオ』の歪んだ魔力回路のすべて。


「あり得ない……! 俺は神の定めた続編の主人公だぞ!? なぜ、ただの悪役令嬢のお前に、俺の術式シナリオが書き換えられる……っ!!」

強引に魔力で喉の封印を食い破ったルシードが、狂気的な叫びとともに、手元に凝縮させていた漆黒の滅びの魔力球を私に向けて一斉に解き放った。


空間そのものを消滅させるような、黒い光の奔流。

だが、私は避けることすらしない。スッと右手を前に差し出し、ただ細い指先でその漆黒の奔流に触れた。


「――消去デリート


パリンッ!!!と、ガラスが砕け散るような神聖な音が響き渡る。

ルシードが放った無敵のはずの滅びの魔法は、私の指先に触れた瞬間、ただの光のパケットへと分解され、サラサラと床へ霧散していった。触れることすらできずに、存在そのものを『無かったこと』にされたのだ。


「バ、馬鹿な……っ!!」

「次は、こっちの番ね」


私が杖の代わりに、大夜会のためにじゅりが贈ってくれた『対魔導通信ジャミング機能付きイヤリング』にそっと触れる。その瞬間、私の純白の魔力がイヤリングの術式と共鳴し、空間そのものを再構成する巨大な光の剣へと形を変えた。


「これまでの生ぬるい嫌がらせも、今回の理不尽なアプデも、全部まとめて――ここで強制終了シャットダウンさせてもらうわ!!」


私が光の剣をルシードに向けて一閃する。

「――『規格外の一斉強制書き換え(コード・オーバーライド・バースト)』!!」


ドガァァァァァン!!!!!と、王宮の全感覚を真っ白に染め上げるほどの、圧倒的な純白の極大魔法がルシードを正面から直撃した。

彼が纏っていた『続編の無敵の防壁』ごと、その理不尽な神のシナリオを根こそぎ粉砕し、書き換えていく光の暴風。


「ぎゃあああああああーーーっっっ!!! 嘘だ、俺が……俺たちのシナリオが、悪役令嬢ごときに敗北する、など……っ!!」


断末魔の悲鳴とともに、ルシードの身体から禍々しい漆黒の魔力が完全に消滅し、彼はそのまま最下層の特別監獄のさらに奥底、世界のバグが隔離される『完全凍結領域』へと光の速度で吹き飛ばされ、永久に封印(アカウント凍結)されていった。


嵐が去り、王宮の会議室には、元の美しいシャンデリアの輝きと、静寂が戻ってきた。


「はぁ……はぁ……。本当に心臓が止まるかと思った……。私、みんなを守りたくて、ちょっと全力出しすぎちゃったかも……」

我に返った私が、急に恥ずかしくなって扇子で口元を隠し、ポツリと呟いたその瞬間。


「……見事だ、セレナ。いや、我が娘ながら、恐ろしいほどの危機管理(システム防衛)能力だな」

アルベルト公爵が、いつもの有能で優しいお父様の顔に戻って満足そうに頷く。

「ふむ……。さすがは我が息子の婚約者。これほど頼もしい『法律』が味方にいるのなら、我が国の未来は安泰であるな、アルベルト」

国王陛下も、周囲の兄姉たちが呆然とする中で、不敵に微笑んで深く頷いていた。


「セレナ……お前、本当に格好良すぎるよ……」

ボロボロの身体をマリアーヌお母様の回復魔法で癒やされたジュリアスが、私の元へ歩み寄り、そっと私の腰を引き寄せた。その紫色の瞳には、私への底知れない愛おしさと、それ以上に限界突破した狂おしいほどの『独占欲』の炎が再点火していた。


「あんな圧倒的な輝き(チート魔力)を、他のルシードの前で見せるなんて……俺の独占欲のサーバーが完全にオーバーヒートした。……いいか、れな。お前がこの世界の『法律』なら、俺はその法律を我が家のシステムで一生縛り付ける、唯一の『管理者』になってみせる」


ジュリアスは周囲の目を盗み、耳元で彼だけの酷く甘く冷酷なトーンで囁くと、私の手を強く握り締めた。

16歳の夏、異世界王宮を舞台にした、家族総出の続編アプデ強制シャットダウン戦。

理不尽な神のシナリオすら、覚醒した悪役令嬢の規格外のチート魔法と、それを全力で甘やかす最強の家族たちの前には完全消去デリートされてしまう。全員のポテンシャルがカンストしている私たちの、現実に全力な二重生活は、世界のバグすら力技でハッキングし、さらなるラブコメの波動を撒き散らしながら、どこまでも突き進んでいくのだった。

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