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第22話:16歳、見慣れた王宮の「大夜会」と、闇堕ち聖女の命懸けの弾劾裁判


「――いいか、セレナ。この『対魔導通信ジャミング機能付きイヤリング』は絶対に外すな。これから向かうのは、画面の向こうじゃない。全貴族の視線が集まる、今夜の王宮は文字通りの『戦場』だ」

「わ、分かってる、ジュリアス殿下……。子供の頃から何度も来ている見慣れた王宮のはずなのに、公式な社交界デビュー(大夜会)となると、このドレスの重さもあって模試の何倍も緊張する……!」

「気にするな。お前はただ、俺の隣で最高の悪役令嬢セレナとして気高く微笑んでいればいい。お前の背後は、俺と我が家のシステムが100%一元管理ガードしている」


日本の高校の学園祭を途中で抜け出し、私たちは急いで日本の我が家のクローゼットへ飛び込んだ。

漆黒のイブニングドレスに身を包んだ私と、白銀の第一王子の正装を纏ったジュリアス(じゅり)が進む先は、幼い頃から隠れんぼをしたりお茶会をしたりしてきた、あの馴染み深い王宮のホール。


しかし、**【16歳(高校1年生)】**の社交界デビューを迎えた今夜は、これまでとは全く違った。


シャンデリアが眩しく輝く大夜会の会場。その最奥の雛壇には、ジュリアスたちの父親である**【国王陛下(日本名:皇)】**と**【王妃殿下(日本名:紗夜)】**、そして私の両親である**【アルベルト公爵(日本名:阿流)】**と**【公爵夫人(日本名:真理)】**という、この世界のトップたちがズラリと居並び、鋭い視線を周囲に放っていた。


(子供の頃から知ってる皇おじさんや紗夜おばさんだけど……公式の場でのこの重圧、ハラハラが止まらない……っ!)


私がジュリアスの差し出した腕に手を乗せ、身を硬くしたその瞬間――。


バンッ!!!と、夜会の重厚な扉が、凄まじい魔力の奔流とともに左右に弾け飛んだ。


「――そこまでよ! 騙されてはいけません、国王陛下! そしてジュリアス殿下!」


現れたのは、監獄から自力で脱獄し、怨念の黒い魔力を全身から立ち上らせた聖女レイチェルだった。

ボロボロの聖衣を血で染め、狂気的な笑みを浮かべた彼女の登場に、会場は悲鳴と静寂に包まれる。騎士たちが一斉に剣を抜くが、レイチェルはそれを嘲笑うように、雛壇の国王たちを指差した。


「そこの公爵令嬢セレナは、悪魔と契約してこの世界を裏から改ざんしている『バグ』ですわ! 証拠に、今すぐ彼女の私室を調べなさい! この世界に存在しない『冷たい四角い魔導具(ノートPC)』が隠されているはずですわ!!」


レイチェルの命懸けの告発。

大夜会の全貴族の視線が、一斉に私へと突き刺さる。完璧な対面での弾劾。言い逃れのできない大ピンチに、私の心臓が激しく鐘を鳴らした。


(レイチェルちゃん、私の部屋のPCの存在に気づいて、親たちの前で直接刺しにきた……!?)


だが、私の前にスッと立ちはだかったのは、ジュリアスよりも早く、雛壇から降りてきた私の実の父親――**アルベルト公爵(阿流パパ)**だった。

阿流パパはきらびやかな公爵の礼服を纏い、威風堂々とした圧倒的な覇気を放ちながら、冷酷に口角を上げた。


「……ふん。面白い妄想だな、元聖女。我が娘セレナがそのような不審な道具を隠し持っているだと? 国王陛下、ならば今この場にいる者たち全員の目で、真実を確かめようではありませんか」


雛壇の上から国王陛下(皇パパ)が、重々しく不敵に微笑んで頷く。


「許す。ジュリアス、王宮の最新魔導スクリーンを展開せよ。公爵家のセレナの私室と回線を繋ぎ、リアルタイムでその『証拠』とやらを映し出すのだ」

「御意、父上」


ジュリアスが手元の魔導デバイスを操作すると、夜会の壁一面に、巨大な魔導ホログラムのスクリーンが広がった。

大夜会に集まったすべての貴族たち、速度を失ったレイチェル自身が、固唾を呑んでその画面を凝視する。


ジャァァァン……と光が走り、リアルタイムで映し出されたのは――もぬけの殻になった、私の完璧に片付いた美しい私室の映像だった。どこをどう見ても、怪しい「四角い魔導具」など1ミリも存在しない。


「な、何よこれ……!? そんなはずはないわ! 確かにそこにあったはずなのに、画面の向こうの部屋に何もないなんて……っ!」


レイチェルが信じられないものを見る目で画面を見上げ、ガタガタと震えだす。

それもそのはず、彼女がこの会場に乱入してきたまさにその数十秒前、アラート(脱獄警報)を察知していたジュリアスの遠隔操作によって、私の部屋のPCやスマホはすべて「日本の我が家」へと物理退避させられ、部屋のネットワークのログ(気配)すら完璧に消去されていたのだ。


「見苦しいですよ、レイチェル」

ここで、阿流パパの隣からドレスを気高く翻した私の実の母親・マリアーヌ(真理ママ)と、王妃サリア(紗夜ママ)が、優雅に歩み出た。


「我が家の情報管理セキュリティは完璧ですわ。あなたの歪んだ不審なアクセス(魔力波形)――私たちの神聖クレンジング魔法で、今すぐ綺麗に『初期化』して差し上げます」


「離しなさい! 私は――!」

逆上して呪符を掲げようとしたレイチェルの腕を、白銀の甲冑を纏ったリチャード(りく兄)が一瞬で組み伏せる。と同時に、ママたちの放った極大の聖なる光がレイチェルを優しく包み込み、その怨念の黒い魔力を一瞬で強制終了シャットダウンしていった。


「嘘よ……私はヒロインなのに……」と呟きながら、レイチェルは完全な昏睡状態スリープに陥り、そのまま最下層の特別監獄へと引きずられていった。


「ふむ……。実に見事な危機管理(システム防衛)であったな、アルベルト」

「はっ。これで今夜の『息抜きのビール』も、さぞ美味くなるというものです、国王陛下」

国王陛下(皇)とアルベルト公爵(阿流)が周囲の貴族には分からないアイコンタクトを交わして満足そうに頷き、夜会には一斉に割れんばかりの拍手が巻き起こった。


「はぁ……。本当に心臓が止まるかと思った……。お父様たち、リアルタイム中継で全貴族の前で論破するなんて、格好良すぎるよ……」

私が周囲に聞こえないよう、扇子で口元を隠してポツリと呟くと、ジュリアスは私のジャミングイヤリングにそっと触れ、耳元で冷酷に、けれど彼だけの『じゅり』のトーンで、酷く甘く囁いた。


「言っただろう、れな。画面の向こうだろうと、この見慣れた王宮のド真んだろうと、俺たちの親(皇・紗夜・阿流・真理)まで巻き込んだ我が家のフルメンバーの前でお前を害せるバグなど存在しない。……さあ、最高のエンディングだ。この夜会のファーストダンスは、俺が付き合ってもらうぞ、セレナ」


ジュリアスは満足そうに私の手を引き、きらびやかなダンスフロアの混沌へと私を導いていく。

16歳の秋、異世界王宮での親世代大活躍の対面決戦。

闇に堕ちたヒロインの捨て身の奇襲すら、日本帰りの親たちの圧倒的なカリスマ性と、少年の異常な防衛IT技術による画面共有トリックの前に完全シャットダウンされてしまう。全員のキャラが濃すぎる私たちの現実に全力な二重生活は、ハラハラする大舞台すら完璧にハッキングし、さらなるラブコメの波動を撒き散らしながら、どこまでも突き進んでいくのだった。


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