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第21話:16歳、初めての「がくえんさい」と、独占欲限界王子のシフト改ざんプロトコル


「――よし、これでサッカー部の男は木曜日の『ゴミ拾い担当』に完全隔離デリートした。代わりにれなのメイドカフェの全シフトの隣には、俺の名前を一元管理プロテクトしてある」

「ちょっとじゅり!! 何がプロテクトよ! 委員長が作ったシフト表のExcelデータを、学校のサーバーごと直接書き換えるなんて職権乱用にもほどがあるでしょ!?」

「学校のセキュリティが甘すぎるのが悪い。俺とお前のランデブー(共同作業)を阻害するバグは、システムレベルで排除するのが我が社の基本方針だ」


前夜、異世界の聖女レイチェルからの決死の逆ハッキング(呪詛パケット)を、みあ姉の結界とじゅりのカウンターバスターで完全シャットダウンした翌日。

日本の高校の放課後の教室は、そんな修羅場があったことなど露知らず、いよいよ今週末に迫った「学園祭」の準備でクラス中が狂乱の渦に包まれていた。


黒板には「メイドカフェ・メニュー案」が並び、女子たちがクラスTシャツのサイズ確認で騒いでいる。

そんな中、じゅりは涼しい顔でスマホの画面を見つめ、自分が完璧に「最適化」した最新のシフト表を眺めて冷酷に口角を上げていた。


(異世界の聖女のハッキングを防いだ翌日に、日本の高校のシフト表をハッキングしてるの、世界でじゅりだけだよ……)


私が呆れて冷たい缶コーラをじゅりの頬に押し当てると、彼は「冷たいな」と言いながらも、私の制服の裾をぎゅっと握って離そうとしない。16歳になって、彼の独占欲のファイアウォールは日に日に強固になっている気がする。


「れな、異世界の隔離プロトコル(特別監獄への移送)の最終ログが降りてきた。一度、日本の我が家に戻ってメインサーバーを確認するぞ」

「うん、分かった!」


私たちは放課後の教室を抜け出し、夕暮れの通学路を急いで走って、日本の我が家(秘密基地)へと帰宅した。


ガラッとリビングの扉を開けると、そこにはいつも通りスウェット姿で完全に日本の生活に馴染みきった、お馴染みのメンバーたちが勢揃いしていた。

ソファではみあアルテミシアが日本の少女漫画の学園祭特集を熟読しており、その横でりくリチャードが「お、おかえり。これからみんなで日本の100円ショップに買い出し(私用の買い物)に行こうと思ってたんだが、どうだ?」と、ラフなTシャツ姿で声をかけてくる。


その奥では、きりやキリアンが「日本の100均には便利グッズが多いからな!」とプロテインシェイカーを片手に熱弁し、かりんカトリーヌが「きりや、落ち着いて」と宥めていた。彼らは日本の学校には通っていないけれど、我が家のリビングで過ごすこの自堕落で平和な時間が、最高に心地いい息抜きになっているみたいだ。


「買い出しなら俺とれなで行く。れなに変な虫がつかないよう、周囲の警戒クリアランスも兼ねてな」

じゅりがリビングのPCデスクの前に座り、手元のメインモニターを起動しながら冷徹に告げた。画面には、異世界の王宮本部から転送されてきたリアルタイムの監視ログが映し出される。


* **異世界側のシステム通知リアルタイムログ:**

【重要】元聖女レイチェル、禁忌魔術使用のログ確定に伴い、先ほど教会の最高騎士団により身柄を完全拘束。地下書庫より、王宮最下層の『絶対不可侵・特別監獄』への移送を完了。これより終身刑としての魔力封印プロトコルを開始。


「……ふん。向こうの教会も、ようやく我が社の提出した証拠ログ(確定申告)を認めたようだな。これでレイチェルの魔導波形アカウントは完全に凍結された」

じゅりが冷徹に呟く。


画面越しに映る異世界の映像には、魔力を縛り付けられ、怨念の形相で最下層の地下監獄へ引きずられていくレイチェルの姿が写っていた。彼女の捨て身の奇襲は、私たちの「現実に全力な二重生活」の防壁の前に、手も足も出ずに完全シャットダウンされる結果となったのだ。


「これで一安心、かな……。でも、レイチェルちゃんのあの執念、画面越しに見ててもちょっとハラハラしちゃうね」

私が小さく息を吐くと、じゅりは私のジャミングイヤリングにそっと触れ、いつもの『じゅり』の甘いトーンで囁いた。


「気にするな、れな。画面の向こうの監獄だろうと、この日本の高校の教室だろうと、お前を脅かすバグは俺がすべて一元管理デリートしてやる。……それよりも問題は、あそこのスウェット男だ。きりや兄が、俺たちのクラスの模擬店メニューにバナナプロテインドリンクをねじ込もうと勝手に画策しているログを検知した」

「ちょっと待って、きりや兄何してんの!? うちのクラスのやつだからね!?」


慌ててリビングの奥を見ると、きりや兄が「日本の学園祭といえばプロテインだろ!」とかりん姉に熱弁を振るっていた。


異世界のヒロインを完全隔離し、ひとまずの平和を勝ち取った16歳の夏。

だけど私たちの二重生活は、親世代への秘密を隠し通しながら、今度はじゅりと私のクラスで迎える「日本の高校の学園祭」という別の意味でハラハラな大イベントに向けて、じゅりの限界突破した独占欲と共にどこまでも突っ走っていくのだった。


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