表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/35

一触即発!? ライラの魔法学園 その2

「そうよ! 平民風情が、アメリアさまに意見するだなんて、万死に値するわ!」


「身分を弁えなさい。下民!」


「調子に乗っていると後悔するわよ!」


 アメリアさんの取り巻きの少女達が、姦しくわたしに罵声を浴びせてくる。


 困りました。多勢に無勢です。


 反論してもわたしの声は彼女らの声にかき消されてしまうでしょう。


 それにひと言返せば10倍になって返ってきそうです。


 当のアメリアさんはというと、腰に手を当てて余裕の笑みを浮かべながら傍観に回っています。


「さっきから何をダンマリを決め込んでいるの? あなたにはやるべきことがあるでしょう!」


「そうよ。さっさとしなさいよ。このグズ!」


 わたしがやるべき事?


 まったくわからないので、わたしは大きく首を傾げた。


 すると取り巻きの彼女たちは、呆れたように失笑を漏らした。


「本当に下民は愚かね。こんなことも教えてもらわないとわからないのかしら」


「粗相をしたのだから、次にすることは決まっているでしょう。謝罪よ、謝罪!」


「下民の分際でアメリアさまに逆らって申し訳ありませんでしたって、床に頭を擦り付けて謝罪しなさいよ!」


 彼女たちは一体何を言っているのでしょうか?


「なぜわたしが謝罪しなければならないのですか? むしろ謝罪すべきは、わたしの友人を侮辱したアメリアさんの方だと思うのですが」


 瞬間、空気が凍り付いた。


 姦しかった取り巻きの少女たちが真っ青な顔をして静まり返り、怯えた様子でアメリアさんを見る。


「このわたくしに……謝罪しろですって? よくも言えましたわね。この下民が……ッ!!」


 顔を真っ赤にさせたアメリアさんが、握られた扇子をバッと頭上に掲げ上げたその時。


「ハイハイ。そこまでにしよっか?」


 パンパンと手を叩きながら、2人の男の子がこの騒動の中心へと入って来た。


 声をかけて来たのはビリーさん。この王都出身の方です。


 少々奇抜な髪型と制服も着崩しているせいでヤンチャそうに見える男の子です。


 彼の隣に立っているもうひとりの男の子は、同じく王都出身のシュメックさん。


 制服の着こなしも正しく、ビリーさんとは正反対の真面目そうな男の子です。


「なんですの? あなた達は」


 アメリアさんがビリーさんをキッと睨みつけて威圧する。


「こわっ。そんな敵を見るような目で睨むなって。俺はあんたがあとあと後悔しないように暴走を止めてやってるんだぜ?」


「わたくしが後悔するですって?」


 ビリーさんがアメリアさんから視線を外してわたしの方を向いた。


「あんた、確かブリトール出身だったよな」


「はい」


 わたしが答えると、何か納得したような顔でビリーさんとシュメックさんが目配せして頷き合った。


「なんなんですの?」


「彼女は立派な貴族ですよ。おそらくロンブルク王国の貴族の中でも指折りの愛国心と気骨あふれる家系のね」


 シュメックさんがアメリアさんに言った。


「はあ? この下民は自分の口ではっきりと言いましたわ。父親は孤児だと。あなた達もお聞きになりましたわよね?」


 アメリアさんが取り巻きの少女達に同意を求める。


「ええ! この耳ではっきりと聞きました!」


「わたくしも聞きました!」


「あなた達、横から首を突っ込んできて、アメリアさまを騙そうとしているんじゃないでしょうね!」


 ビリーさんはうんざりしたように顔をしかめると、次に面倒くさそうに肩を(すく)めた。


「あのなぁ、あそこの新しい領主は元平民なんだよ。フレイディール出身のあんたらは知らねえのかもしんねえけど、『隻腕の鬼人』て言や、16年前の天魔戦争の功労者のひとりなんだぜ」


「『隻腕の鬼人』カブト様に領主家のエンリ様。いずれもこの国を救った英雄のひとりだね」


 そう言ったシュメックが、今度は探るような目線をわたしに投げかける。


「出身地。それに立ち居振る舞いからもわかる育ちの良さ。加えて大人しそうな顔をしてるくせに貴族令嬢に囲まれても臆さず、スジを通そうとする気骨。僕はあなたは2人の英雄の娘だと推測するのだけど」


 シュメックさんの視線を追うように、クラス中の注目がわたしに集まる。


「……身分を明かすのは校則違反ですから、お答えは控えさせていただきます」


 わたしはぺこりと小さく頭を下げた。


 教室内が大きくざわつく。


 『隻腕の鬼人』は、片腕というハンデを背負いながらもAランク冒険者へと登り詰めたお父さまのふたつ名です。


 お父さまとお母さまは、みんなを守るために天魔戦争で命を懸けて戦いました。


 貴族の責務を立派に果たした2人は、わたしの自慢の両親であり、誇りです。


 わたしもいつか、お父さまやお母さまのような立派な人になれるでしょうか?


 ……いいえ、なれるかではありませんね。なれるように精一杯頑張ります。


「英雄の娘ですって……!? ふ、ふん! だからなんですの? 半分は下賤の血が混じっている事に違いはないではありませんか!」


 わたしは首を横に振った。


「わたしの出自なんてどうでもいいです。それよりも教えてください。何故孤児は、平民は下賤なのですか?」


 一歩後退したアメリアさんに向かって、わたしは一歩間を詰めた。


「そんなもの、下賤だからに決まっていますわ!」


 アメリアさんがまた一歩下がる。


「答えになっていません」


 わたしもまた一歩、アメリアさんとの間を詰めた。


 再び下がろうとしたアメリアさんは、もう下がれなくなっていた後ろの取り巻き達にぶつかって足を止めた。


 ハッとして助けを求めるように周囲を見渡しては、わたしの顔を見つめるアメリアさんの表情に怯えの色が混じる。


 わたしは何も威圧していません。彼女をどうこうしようなんて思っていません。


 ただ純粋に疑問なだけです。


 わたしはお父さまを、ティアさまを尊敬しています。


 そこに出自は関係ありません。


 彼女はどうして区別するのでしょうか?


「お答えいただけませんか?」


「とっ……尊い行いが出来るのは、貴族という選ばれた者だけですわ! 無教養な孤児や平民は命令されたことすら満足にできない無能の集まりでしょう!」


 そのような事が答えなのですか……?


 わたしは急に気持ちが冷めていくのを感じた。


 もう怒りも悲しみもありません。


 きっとこの方は、マリーさんが努力の末にここにいる事を説明しても理解してくださらない。


 マリーさんへの心からの謝罪も彼女には望めない。


 そうわかってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ