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第7話 魔王の森に入ったんだけど……

 たどり着いた魔王の森の入り口。その先は、まだ夕方なのに木々が頭上高くまで生い茂ってまっくらで、先に進むことを躊躇する雰囲気だった。


 だけど、ブゴニア国の人は、私たちよりはるかに魔王の森への恐怖心が強いらしく、この森の中だったら「森の中に逃げたのなら、勝手に死ぬだろう」と考えてて、まず追ってはこないらしい。

 問題は、本当に森に入って出てきた人がいたためしがないってことなんだけど……。


 それでも、手に握りしめたペンダントが魔王の森の中を指し示すので、「ええい!」と気持ちを振り立たせて、森の中を突き進むと、すぐに疲れ果てて休んでいた味方の一行に合流することができたのだった。

 合流して疲れと痛みから、その場に寝転がって休んでいると、さらに森の入り口から、逃げ切った味方の兵士たちが、傷つき、疲れ切った様子で続々と合流してきた。


 それで、私の顔を見ると、兵士たちが駆け寄ってきて、

「ヨーコ様! 俺たちは見た!

 あなたが、光の力で敵の兵士たちをなぎ払っていくのを!

 あなたは奇跡の人、勇者様だったんですね!」

と感動した様子で、希望を見つけた顔をして、たくさん声をかけてきた!


 えっと、なんか私を見る目が変わっているんだけど!

 急に持ち上げられてるんだけど、なんだか怖いな(苦笑)!

 だいたい「光の力」ってなに? 私が危なくなると体が光って、周りのものを弾き飛ばす力のこと? 


 それで、これからどうするのか様子を見ていたら、白いマスクをつけた忍者? みたいな兵士が、ブゴニア国の街中の様子を、王様のふりをしているドレイクたちに報告してくれたそうだ。

 それで、作戦会議をするということで建てられたテントに、私も呼ばれたんだけど。


 テントの中には、王様の影武者だったドレイクと、カーウラ将軍、リンターロ隊長ほか数人の兵士がいた。

 リンターロ隊長に、

「作戦会議をするのって、このメンバーだけなの? 私がいるのは場違いじゃない?」

と言ったら、


「いや、いてくれ。

 アーテナや他の護衛していた兵士もみんな負傷していて、いまは逃亡中にヨーコが見せた奇跡にでも、すがりたいんだ。

 それに……王様の正体を知っているのは、いまのところここにいる人間だけだ」


と言うので周りを見回すと、確かにあの場にいた人間ばかりだった。

 負傷したアーテナと、ショックで気分が悪くなって寝込んでいるユリアンは、ここにいないけど。

 まず、カーウラ将軍が口を開く。


「王様、ひとまず敵の兵士が入ってこない魔王の森まで逃げることができましたが。

 この森を通って、本国まで帰れる保証はございません。

 ですが、ブゴニア国に戻ってグンペーイ王国への帰還を目指すのは、国境の関所を抜ける必要があり、この兵士の数では無理でしょう。

 また、灼熱の砂漠を通って抜けるには、持ち出せた食糧だけではとても足りず、特に灼熱の砂漠を抜けるための水が不足しています。

 食料はもって数日で、得体が知れない森ですが、この森を抜けるしかないと思います」


と、ここには影武者であることはわかっている人しかいないけど。カウーラ将軍はあくまで王様としてドレイクに接してて、今後のことを相談している。

 そこで、影武者のドレイクから意外な提案があった。


「どのルートから帰還を目指しても、早くて数週間、いやもっとかかるかもしれない。

 食料は心もとなく、この森の植物や動物が食べられるかはわからないが、王国では魔物たちは人間が食べられるものと同じものを食べている。

 それなら、森の中に我々が食べられるものがあるかもしれない。

 将軍の話のとおり、この森を抜けて王国への帰還を目指すしかないだろう」


と、王様のような話し方で力強く宣言した。

 気づかないなかったけど、ドレイクはだいぶ前から影武者として、時々は王様として入れ替わって人前に出ていたらしい。

 どうりで今も立ち振る舞いがしっかりしているわけだ。

 そして、ドレイクがさらに、


「カーウラ将軍、将軍には身重のアグリーナを連れて、ブゴニア国経由でグンペーイ王国への帰還を目指してほしい。

 隠密行動が得意な兵士やブゴニア国内にいるスパイの手を借りれば、少人数だったらなんとか国境を抜けられるだろう。

 私は、残りの兵士たちを率いて魔王の森を抜けて、王国に戻ろう」


とカーウラ将軍に告げる。

 あわててカーウラ将軍が、ドレイクをテントの奥のほうに引っ張ってって、こそこそと内緒話を始める。

「いや、いまさら隠さなくても」

と思いながら、近くによって聞き耳を立てると、ドレイクがカーウラ将軍を説得している。


「将軍、グンペーイ王国の未来のために必要なのは、アグリーナのお腹の中の後継ぎです。

 将軍はブゴニア国に潜入して『王は魔王の森に逃げた』と広めて、敵の目をこちらに向けてください。そして、なんとかしてアグリーナといっしょに王国に帰還してください。

 ここは、私たちがおとりになります」


「お前はそれでいいのか、ドレイク」

とカウーラ将軍が言うと、

「もともと王様の命を守るのが私の仕事だったんです。

 王様が死んだ今、これから生まれてくる王様のお子様を守るのが私の仕事です」

と力強く答える。

 そして、テントから出たドレイクが、外に居た兵士たちを集めて、宣言した。


「いま必要なことは、王である私か、あるいはアグリーナの腹の中の私の子、そのどちらかでも無事にグンペーイ王国に無事に帰還することだ。

 そのために、二手に分かれて王国を目指すことにした。

 アグリーナには、私がもっとも信頼するカーウラ将軍と一部の兵士たちで、ブゴニア国から王国を目指すルートで帰還してもらう。

 それ以外の兵士は、私とともに、この魔王の森を通り抜けて、なんとしても王国にたどり着くのだ!」


 ドレイクの力強い宣言にどよめく兵士たち。

 えー、でもこれ、将軍が愛人のほうを守って別ルートに行くのって怪しまれない?

 宣言を聞いて、困惑している兵士もいるし、「魔王の森を抜け出せた人はいない」って話で、みんな将軍のほうで逃げたいという雰囲気だけど。


 ただ、そのあとで、

「王様は、愛人と将軍をおとりに利用するらしい」

というもっともらしい話を兵士の間に流したところ、騒ぎは収まった。

 こうして、王様と、身籠ったアグリーナはそれぞれ二手に分かれて帰国を目指すことになったのだった。

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