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第5話 酒池肉林の外遊に出かけたら……

 王様の外遊先は、グンペーイ王国の隣にある小さな国で、数年前にグラーデウス王が征服して属国にしたブゴニアという国だ。

 もうすぐ、征服を記念した大きな闘技場大会が開催されるので、王様が特別ゲストとしてブゴニア国に招かれることになったらしい。


 当然、護衛の私たちもついていく。

 妊娠している愛人のアグリーナもついていくそうだけど、王妃のディアーナ様はついてこない。

 王妃様は、お城での公式行事や国民に挨拶するときにだけ顔を出すけど、いつもすぐ引っ込んでしまう。有力な貴族の娘で、王様の後ろ盾になっている家の出身だそうで、政略結婚ってやつだ。

 結婚後はしばらく妊活に励んでいたそうだけど、最近はすっかりご無沙汰で、夫婦仲は大変よろしくないらしい。


 ところで、ブゴニアってどこにあるの? って思ってたら、親切なアーテナが地図を見せてくれた。

 私が紛れ込んだ異世界にはいくつかの大陸があり、私がいる大陸はその中でも一番大きな大陸だ。

 その東にあるグンペーイ王国は大陸の中でも大きな国の一つで、闘技場がある都市ヴァーチルが首都で、そこから海沿いに縦長に領土が広がっている。今回外遊することになった属国のブゴニアは、グンペーイ王国の隣で大陸の端っこに位置する小さな国になる。


「この国って、こんなでっかい大陸にあるんだ!」

「グンペーイ王国は、この東のほうの一帯だよ」

「こんなに大きい国なんだ!」

「ああ、この国も、この国も、グンペーイ王国の支配下にある国だよ」

「ねー、大陸の海沿いにそって国の領土が伸びているけど。その横側の真ん中の部分や反対側には何も書かれていないけど?」


とアーテナに聞くと、

「王国の横には、砂漠が広がっている。『灼熱の砂漠』って呼ばれる地域は、この街より全然暑くて、緑も水もほとんどなくて、人間はほとんど生きていけない。

 少数の民族や砂の中で生きられる魔物が住んでいるぐらいだよ」

と教えてくれた。

「そして、砂漠を挟んで、この国の反対側の地域には、『魔王の森』が広がっているのよ」


 魔王の森、そこは一日中暗い森が延々と広がっている魔物の巣窟で、「魔王」と呼ばれる巨大なドラゴンが、森のすべてを仕切っているらしい。

 灼熱の砂漠も、人が生きていくには大変すぎる環境だけど、魔王の森は「生きて帰ってきたものはいない」と言われてて。

 ありとあらゆるモンスターの巣窟らしいんだけど、くわしいことはわかってないらしい。


 灼熱の砂漠や魔王の森のその先には「エルフの谷」と呼ばれる場所のもあるらしいけど。

 エルフはまだ街中で見たことなくて、たま~に捕まったダークエルフが闘技場にでてくるぐらいだ。

 それで、王妃様や貴族たち、大勢の国民の見送りを受けながら、ブゴニア国に向けて、首都ヴァーチルを旅立ったのだった。


 王様のお供には、カーウラ将軍とリンターロ護衛隊長が引き連れた兵士たちが数百人。

 王国の中心から隣の国への移動は数週間かかったけど、途中どの都市でも大歓迎を受けて、行くところ行くところで大宴会で、警護の仕事は大変だったけど。

 王様は、現地の美女をとっかえひっかえの酒池肉林で、頑丈が取り柄の私たちに夜のお相手が回ってくることはなく、つわりがひどくなった妊婦のアグリーナのお世話をしている。


「アグリーナも大変ね。王様からいっしょに来るように言われたの?」

「ううん。私がお願いしたの。だって王様のそばにいないと命が狙われるから」

 えー! どういうこと。


「ヨーコ、あなたも夜の相手をするようになったら、同じ立場になるんだから、王国のことにくわしくなったほうがいいわよ」

と言って、お腹をさすりながら、


「この子は、もし王妃様が子どもを授からなかったとしたら、王妃様の養子になって王様の後継ぎになるはずなの。

 この子は、そのことが目障りな王国の貴族たちや敵国から、生まれる前なのに命を狙われているのよ」

と淡々と教えてくれたけど……えぇっ! そうなの!


「だから、この子が生まれるまでは、王様と毎日いっしょにいて私の命を守ってもらわないと。

 ヨーコ、お願い。この子が生まれたら、この子と私の命をみんなで守ってね」

 護衛ってだけで命がかかってて、子どもを産むだけで命がけなのに、さらに暗殺にまで気をつけなきゃいけないなんて!

 命がいくつあっても足りないじゃない!


「だから、不死身なあなたがうらやましいわ、私(笑)」

 いやっ! それニックネームなだけだから!


 数週間の旅の末、ついにブゴニア国にたどり着いた私たちは、国をあげての大歓迎を受けて、初日から、これまで以上の大宴会が連日連夜と行われた。

 そして数日が過ぎ、いよいよ征服を記念する大闘技大会が行われる日になった。


 大会では、お互いの国から精鋭として選ばれた剣闘士が対決するんだけど、女剣闘士として私も参加することになった。リンターロ隊長も護衛隊を代表して、ブゴニア国の剣闘士と戦うことになっている。

 アーテナやソーニアも出たがっていたけど、護衛として王様とユリアンの横にいることになった。しっかり、王様を守ってねー!


 試合の順番が回ってきて闘技場に登場すると、大歓声を受ける。

 観覧席を見ると、王様の横にユリアン、その周りにアーテナとそーニアが立っている。

 アグリーナのつわりがひどいらしく、今日はユリアンが観覧席で王様の横にはべっているけど、こういうのっていいんだ!?


 で、私の試合の相手は……透明なスライムだ(苦笑)。

 透明なスライムと、くんずほぐれつの乱戦を繰り広げた末、スライムに飲み込まれた! と思った瞬間に私の体が光り輝いて、スライムを、四方八方に吹き飛ばした!

 四散するスライム! 飛び散ったスライムを浴びて大喜びの観客たち! ウケたみたいでよかった(笑)。

 その後も、何試合も行われて、メインの試合はリンターロ隊長が、ブゴニア国ナンバーワンの剣闘士と試合をして、見事に倒したそうだ。


 それで、試合が終わった私が、控え室に備え付きのお風呂で、体に張り付いたスライムを、なかなかとれないなー! 闘技場もスライムまみれにしちゃったけど、大丈夫かなー! なんて思いながら、体を洗っていると。

 試合を終えて、王様からご褒美をいただいたはずのリンターロ隊長が、私のいるお風呂に飛び込んできたんだけど!


「きゃー! バカ! ヘンタイ! なんでこんなところまで入ってきてるのよ! でてけー!」

「それどころじゃないんだ! ヨーコ!

 大変だ! いまこの国で反乱が起こったようだ!

 この闘技場の周りが、ブゴニア国の兵隊で何重にも囲まれている!」


 えーっブゴニア国で反乱! なに、それー!

 慌てて、窓の外を見てみると、ブゴニア国の兵士たち、民衆が、闘技場を何百何千と取り囲んでいる!

 いつのまに、こんなことに!


 リンターロ隊長の話では、ブゴニア国の兵士が、どんどん中に攻め入っているそうだ!

 それで、「ヨーコ、いまから王様のところに行って、お守りして逃げるぞ!」

と叫ぶ!


 王様は、闘技場の後ろにある特別な部屋で休んでいるらしい。

 もちろん、ソーニアとユリアンだけじゃなく、大勢の兵士に守られていて、カーウラ将軍もその近くにいるはずだ。

 王様はもちろんだけど、妊婦のアグリーナも心配だ。


「じゃあ俺は、先に行くぞ!」

と言って、部屋を飛び出して行ったリンターロ隊長を追うために、慌てて鉄の鎧を身に着けて部屋を飛び出して、王様がいるはずの部屋へ向かった。


 それで、部屋に入ると……。

 そこには、呆然と立ちすくんだ人たちが、部屋の中のベッドを取り囲んでいた。

 ベッドを見ると、グラーデウス王が首から大量の血を流しながら、横たわっていた……。


え、王様が死んじゃってるんだけど!!!

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