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第38話 ラスト・バトル

 こうして私たちは、ダークエルフ打倒! という目標をもって、エルフの谷から旅立った。


 だから、ダークエルフを探さないといけないわけなんだけど。この前の戦いの傷が癒えたら、向こうからドンちゃんのことを狙ってくるだろうから、私たちは用心しながらも、このままグンペーイ王国へ帰国することにした。


 そして、エルフの谷があった森を抜けて、灼熱の砂漠に入ったとたん、サンドワームが襲ってきた!

 えーまた!?

 でも、大変都合よく、サンドワームはドンちゃんに狙いを定めて、口を閉じて猛スピードで一直線に、砂の中をズサーッ、ズサーッと進んでいく!


「ドンちゃーん、サンドワームは、あなたを狙ってるみたいよー!

 闇の力を吸い取って、かたずけてねー! よろしくー!」

なんて余裕の声を、ドンちゃんにかける。

 サンドワームが、ドンちゃんの目の前まで突き進む。それに対して余裕な様子で、とくに逃げることもしないで、迎え撃とうとしているドンちゃん。


 でも、その時だった。

 突き進みながら、体の前部を浮かせたサンドワームが、閉じていた口をバカッと大きく四方に開くと、その口の中にダークエルフが! いたっ!

 そしてサンドワームの口の中から飛び出したダークエルフが、そのまま手に持ったするどく尖った黒い剣を、目の前にいたドンちゃんに突き刺した!


 黒い剣は、鎧の隙間からドンちゃんの頭に突き刺さるっ! ドンちゃん!!!

 ダークエルフが、突き刺した剣を引き抜くと、血が大量に噴き出す!

 それでもなんとか応戦しようとするドンちゃんに向けて、ダークエルフが剣を振りかざした瞬間、光の力で全身を輝かせたシーラが、ドンちゃんの体に覆いかぶさった!


 危ない! それはまるでリセット前に起こったできごとの、デジャブのような光景だった!

 慌てて駆け寄って、振り下ろされるダークエルフの黒い剣を、私の光の剣で受け止めた!

 実力はあきらかにダークエルフのほうが上だけど、光の力を使ってなんとか防がないと。そこに追いついてきたアーテナが斧を振りかざして、ダークエルフと私の間に割って入ってくる!

 そして、リンターロも来て光の剣を振りかざそうとしたとき、巨大なサンドワームがゴゴゴッと、二人とダークエルフの間に割って入り、邪魔をする!


 それでも、リンターロがなんとかサンドワームを乗り越えて、ダークエルフの頭上に光の剣を叩きこむ! やった! 黒い剣で防がれたけど、ダークエルフの体勢が崩れた!

 そこに、私が光の剣を振り下ろす! だけど、またダークエルフの黒い剣で受け取めて、はじき返された!

 だめだ! 光の力を剣に込めても、この剣ではダークエルフの黒い剣はびくともしない!


 その時、ダークエルフの背後にデウス王子が現れた!

 デウス王子! 私がダークエルフの注意を引き付けるから、その聖剣で倒して!

と、目でデウス王子に訴えかけて。

 えーい! 剣を捨てて、ダークエルフにタックルだ!

 ダークエルフの下半身にタックルして倒そうとした私を、ダークエルフが黒い剣を持ち換えて、上から突き刺そうとした。

 その瞬間! デウス王子が聖剣で、ダークエルフの背中を切り裂いた!


 背中の痛みに苦しそうに倒れる、ダークエルフ!

 やった! ドラゴンスレイヤーの聖剣は、ダークエルフにも効くんだ!

 でも、背中から血を流しながらも黒い剣を手にして、鋭い目でこちらをにらみつけてくる。

「魔王様、魔王様!」

と、その間も必死に治癒魔法で、ドンちゃんの傷を治そうとしているシーラと、手伝っているトモシゲさん。


 デウス王子をにらんだダークエルフが、

「まさか、貴様に邪魔されるとはな。

 ここまでおぜん立てしてやったのは私なのに! この恩知らずが!」

と罵った。 


「恩知らずだと! それは何のことだ! お前に恩を感じることなどなにもない!」 

とデウス王子が言うと。

 あざけりの表情を浮かべたダークエルフが、

「貴様が後継ぎになれたのは、私のおかげだぞ。

 ドラゴンの生まれ変わりを阻止するために、聖女たちを皆殺しにしたかったんだが。そのために隠し子である貴様を後継ぎにするように、と王妃に知恵を授けたのは、この私なのだ!

 エルフの長老たちが王家の血筋にこだわっていないことは、知っていたからな!

 だから、グラーデウス王と聖女を殺して、その子どもを奪えれば、王妃がすべてを手に入れることができるのだと、策を授けてやったんだ。

 この話を聞いて、王妃はたいそう喜んでいたぞ!

 それが、なぜかグラーデウス王が、私たちの暗殺計画に気づいたようで、先回りして貴様を王子として認める、とか言い出したのだ。

 だから、今の貴様がその地位にいるのは、私のおかげなんだぞ!」

なんて、少し得意そうに語った。


 はぁー! それって、たまたまそうなっただけじゃん!

 ダークエルフに、「恩知らず」とか言われる筋合いはないよ!

 と思ったんだけど。


「嘘だ! でたらめだ!

 あのお優しかった王妃様がそんなことをするはずがない!

 だいたいどうやって下賤の者であるダークエルフごときが、王妃様とやり取りできたのだ」

と悲壮な表情でデウス王子がダークエルフに、言い返す!

 えっ、あのずっと超絶ゴキゲンナナメだった王妃様が優しかった……?


「ふん、それは貴様に利用価値があったからだ。

 王妃に会うことなぞ、たやすいことだ。

『ゲート』を使って移動ができるのは、ドラゴンだけではないからな。

 ゲートを使って、配下を修行の旅をする聖職者や遠い国の珍しいものを取り扱う商人に化けさせて、グンペーイ王国に侵入させたら、グラーデウス王と聖女の秘密の関係、その隠し子、その二人を憎む王妃と、面白い話がたくさんあったよ。

 王妃や聖女を影で憎んでいた女どもが、ペラペラといろいろと教えてくれた。

 だから、王妃に聖女殺しを持ちかけ、さらにグラーデウス王の暗殺の手助けを約束したのだ。

 ブゴニア国への遠征中にグラーデウス王を暗殺し、ブゴニア国で反乱を起こしてグンペーイ王国が混乱するのに乗じて、ゲートで侵入して聖神会を襲撃する計画だったのに!」


「嘘だ! 嘘だ 嘘だ!」

と悲痛な叫びを繰り返す、デウス王子。

 まだ10代の子どもが聞くのには、あまりにもつらい話だ。

 あ、しまった! ダークエルフの話に引き込まれているうちに、なんだかあいつ、回復してきているじゃん!


「デウス王子、これ以上話を聞いちゃだめ!

 ダークエルフが、回復しちゃう!」

と私が叫ぶと。

 ハッとしたデウス王子が、正面からダークエルフに切りかかる!

 デウス王子、正面で戦ったら、実力差からいって勝てないって!

 案の定、ダークエルフの反撃を受けてデウス王子が、ピーンチ!


 シーラはドンちゃんの蘇生で動けないし、他のみんなはサンドワームが暴れて邪魔しててこっちに近づけないし!

 ここはもう一度、私がダークエルフを引き付けて……。

 と思ってところに、王子を突き飛ばしたダークエルフが反転すると、

 ギャー! 私のお腹を黒い剣で、グサッと深く突き刺した!

 痛ったーい!

 でも、私は不死身のヨーコだ! 超回復力があれば、こんな傷ぐらい!

 あ、あれ、傷からドクドクと血が流れて止まらない。体にも光の力が満ち溢れてこない。


 あ、そういえばリセット後の私って、死ぬような体験を何度もしてなくて、前より強くなってなかったんだ……。

 回復が追いつかないみたい……。

 やばい、意識がもうろうとしてきた……。


 でも、私が王子を守らなきゃ!

と最後の力を振り絞って、ダークエルフにしがみつく。

 無様にコケるダークエルフ。

 のしかかった私の体に、ダークエルフが振り回す黒い剣が、二度三度と突き刺さる。

 やっぱ、ビキニ・タイプの鎧って役立たずだよなー、と体中から血を流し、朦朧とした意識の中でいまさらながら思いながらも、ダークエルフを羽交い絞めにしていると。

「ダークエルフ! くたばれ!」

と叫ぶデウス王子様の声が聞こえた!


 次の瞬間、私が見たのは、振り下ろされたドラゴンスレイヤーの聖剣に驚く、ダークエルフの顔だった。 

 そして、鈍い音とともに、ダークエルフの首がコロコロと転がっていった。


 やったね! デウス王子!

 意識が朦朧とする中で、私にすがりついてくる、デウス王子とシーラ。

 そして、蘇生できたドンちゃんの無事を確認したところで、私の意識は遠のいたのだった。

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