第35話 王子のパーティーをストーキングしました
しょうがなく、いったんデウス王子の一行を見送って、見えるか見えないかぐらいのところで、とぼとぼと後を追って歩き出す。
その数時間後、ちょっと先を歩いている王子一行に何か異変が起こった!
突然慌てた様子で、みんなが四方八方に散り散りになる!
何が起こっているんだ、とかけよろうとすると、ペンダントが光り出して、リンターロから『ヨーコ、来るな! アリ地獄だ! 逃げろ!』
と聞こえてくる。
アリ地獄!?
慌てて、光の力のズーム機能を使って見てみると、砂がなにかに引きずりこまれていってる!
ズブズブズブと、大きく空いた穴に向かって砂が落ちていく。その真ん中には巨大なアリ、アントが!
突然、砂漠にできた大きな穴の中に、周りの砂がどんどん引きづりこまれていく。逃げ惑う王子たち!
「ああー、王子!」
と叫ぶ、アーテナ!
王子! デウス王子が、アリ地獄の中に落ちてそうになってる!
あー、砂に引きづりこまれた! 危ない!
ああっ! リンターロがその穴の中に飛びこんだ!
巨大なアリが待つ穴の真ん中に引きずりこまれていく、王子とリンターロ!
アーテナが、「ロープ! シーラ、トモシゲ、ロープを出せない!?」と叫んでる!
シーラが、魔法使いが、その周りのおろおろしている! なんか助けられる魔法とかないの!
私は、アリ地獄のほうに走りながら、そばで飛びながらついてくるドラゴンを見てハッとして、
「ドンちゃん! お願い! 二人を助けて!」
と叫ぶ!
すると、ドンちゃんが翼を羽ばたかせて、アリ地獄の中に飛び降りていき、デウス王子とリンターロを足の爪で掴んだかと思うと、巨大アリに向かって、小さく火の玉を吐いた!
それで一瞬、巨大アリがひるんだすきに、デウス王子とリンターロを掴んだまま上空に飛び立ち、アリ地獄から脱出してきたのであった!
ドンちゃんが安全な場所まで、二人を運ぶと、ゆっくりとおろした。
『ありがとう! ドンちゃん!』
『まあ、こいつらに死なれると、いろいろと面倒だからな』
と余裕のドンちゃんだった。
リンターロが、ガクガクと震えているデウス王子を優しく抱きしめて、笑いかけながら、
「王子様、とても怖かったですね。もう大丈夫です。こういう信じられない体験を耐えたんです。あなたは強くなりますよ」
とやさしく話しかける。
そして、
「王子様も俺も、ドラゴンがいなければ死んでましたね。
後ろからついてきてもらってたんです。
ドラゴンとヨーコは必要です。パーティーに戻ってもらいましょう」
と諭すと。
こっちを見た王子様が嫌そうな顔で、
「仕方ない。ドラゴンの功績に免じで、パーティーに戻してやろう」
と言ってきた。
頭に来たので、
「あのねー! こういう時はまず『ありがとう』でしょ!」
とデウス王子を叱る!
「王子様が偉いのは知っているけど、そんな子どものころから、偉そうにしていたら、ろくな大人にならないよ!
国民に慕われないし、女の子にもモテないよ!」
と言いたいことを言ったら、デウス王子が急にシュンとなって、
「だって、聖女様に『あなたは次の王様なんだから、常に王様らしく振る舞いなさい』って言われたから……」
聖女様めー!
「王様らしさって偉そうにすること? 助けてもらったら、まずお礼!
ドラゴンだけじゃない! ここにいるみんなが王子のことを守ろうとしているんだよ!」
と言うと、私とシーラ、ドンちゃんにむかって小さな声で「ありがとう」と言った。
にっこり笑って、「よくできました」と抱きしめてあげる。
まだ体が震えている。私も、この子がまだ子どもだってことを忘れてた。
ちょっと厳しいことを言いすぎちゃったかな、反省。
でも、その日からデウス王子が少し心を入れ替えようで、リンターロの話では、いやいや行ってた日々の剣の修行にも、前より身が入るようになったらしい。
一生懸命、王様からもらった聖剣を振っている横で、私も修行に参加して、リンターロがゴーレムを倒したときに使った、剣に光の力を注ぐ方法を学ぶことにした。
アーテナも参加し出したけど、アーテナは剣より斧を振り回すのが得意で、横でぶんぶん振り回してきて、危ないんだけど!
最後には、みんなで取っ組み合いをして、その日の修行を終えた。
そして、ついに灼熱の砂漠の終わりが見えてきた。急に涼しくなって緑にあふれた山が目の前に現れた!
この山の中に、エルフの谷があるのかな! どんなところなんだろう! エルフに会えるのが楽しみだ!




