第34話 勇者、勇者パーティーを首になる
さっきから苦々しい顔で、私をにらみつけていたデウス王子が、灼熱の砂漠のど真ん中で、私に言い放った。
「ヨーコ、お前はクビだ!」
はぁー、何を言ってんのよ!
エルフの谷に向かう途中で、「勇者パーティーのメンバーを首」になっちゃったんですけど? 私、一応、勇者なんですけど!?
この話は、数日前にさかのぼる。
ダークエルフの襲撃を無事に撃退できた私たちは、ペンダントでグンペーイ王国から応援を呼んで、捕まえた少年や魔導師たちを、駆けつけた兵士たちに引き渡し、旅を続けることにした。
とぼとぼと歩いていた私たちは、「灼熱の砂漠」の洗礼を受けることになった。サンドワームが、現れたのだった!
サンドワームというのは、巨大なミミズというか、どデカい土管というか、浅黒く、巨大で細長~い体に、顔というか先頭の丸まったところが口になっていて、そこがガバッっと四方に開くと、無数の牙がびっしりと生えている。
大きさはまちまちで、今回現れたサンドワームの頭? 口? の大きさは2、3メートルぐらいだろうか。体の長さは砂の中に体が埋まって移動してくるのでわからないけど、十数メートルはありそうだ。
そいつが砂をかきわけて、突然ズザーッっと目の前に現れたと思ったら、砂漠に潜ったり、再び飛び出してきたりして、私たち一群を翻弄して、大混乱に陥ったんだけど。
デウス王子は、そばにいたリンターロとアーテナが守って、私は近くにいっしょにいたシーラとドンちゃんをかばいつつ、みんなが四方八方に逃げ散ったんだけど。
小さくても、キラキラ光って飛び回っているドンちゃんがサンドワームの目に入ったのか、ドンちゃんめがけて襲いかかってきた。
それで、とくに逃げようともしないドンちゃんを、顔を四方に開いて、トゲトゲだらけの口でバクっと飲み込んだ!
きゃー! ドンちゃーん!
あわてて、私が剣でサンドワームに切りかかり、シーラも呪文を唱えて光の力を飛ばしてダメージを与えたんだけど、全然効果がない!
その時! 突然サンドワームが、苦しそうに大きく長い体をのたうち回りはじめたかと思うと、だんだん体の色が白くなっていき、最後には灰色の砂の塊になって、ザザザーと崩れだした。
そして、その中から少し色がグレーっぽくなったドンちゃんが砂を振りはらいながらでてきたのだった。
『いかに生まれ変わったばかりとはいえ、この魔王を食べようとするとは、闇の一族とはいえ、ゆるせん!』
とサンドワームにバクっと食べられたのが悔しかったのか、ご機嫌斜めな様子の魔王様。
サンドワームから闇の力を吸い出して、肌色がちょっとグレーになったドンちゃん。
私は、急な戦闘に光の力を使って疲れた様子のシーラを腕で支えながら、
『ねーねー、ドンちゃん。灼熱の砂漠って、たくさん魔物がいるんだけどさー。
さっさと闇の力を蓄えて、ゲートを開いてエルフの谷まで連れて行ってくれない?』
と言ったんだけど。
『断る! 私は魔王だぞ! 私が魔物から闇の力を吸うのは、私の命を狙わってくるような、けしからんやからだけだ!』
『そう言わずに、ドンちゃんも暑いのはイヤでしょー!』
なんて話をしていると、逃げ回っていたデウス王子やリンターロたちがこっちに集まってきた。
シーラを抱きかかえている私を見ながら、かなりご機嫌斜めの様子のデウス王子。
「ヨーコ! お前は私の護衛ではないのか!」
と不機嫌そうに言ってきたので、
「すみません、ドンちゃんのお守りもしなきゃいけなくて……」
て言うと、
「だいたい、私たちが狙われるのは、お前とドラゴンがいるからではないのか!
この旅の始まりからしてそうだった!
そもそも、なんでドラゴンがいっしょに旅をしているんだ!」
と怒り出した。
確かに、ダークエルフに狙われたのは、ドンちゃんがいたからだけどさー。
私はドンちゃんの命を守らないと死んじゃうんだし、「不死身のヨーコ」だとか言って、デウス王子をエルフの谷まで護衛しろって言ったのはグラーデウス王だしー。
私、ドラゴンを守ることは、グンペーイ王国の平和のためにも必要なことだし!
なんてことは、大人なので言わないでして、突っ立てるだけの私を心配してくれたのか。
シーラが、
「王子様、ヨーコ様はみんなを守ろうとしてくださっています。今も私を助けてくれました」
と助け船を出したとたん、なぜか王子の怒りがヒートアップして!
「ヨーコ、お前はクビだ!」
となりました!
はー! どういうことだよ!
と抗議しようとした私を、リンターロとアーテナが、デウス王子とシーラがいないところまで引っ張っていく。
「なんだよ、あいつ。旅に出てから、やたらと私にだけ当たり散らかしてきて!
王子の後継者問題も大事だけど、ドラゴンを育てて魔王の森を管理してもらうのもグンペーイ王国に大切なことだってことだって、旅に出る時にデウス王子に説明したよね!?
さっきだって、サンドワームを倒したのは、ドンちゃんだし! お前は逃げ回ってただけだろー!
聖女様に甘やかされて育っただかなんだか知らないけど、まだガキのくせに、どんどん生意気なってないか、あいつ!」
といきなりの戦力外通告に激オコの私を、
「まーまーまー落ち着け、ヨーコ! お前はなにもわかってないんだ」
となだめてくるるリンターロ。
わかってないって?
「王子が、ヨーコがドラゴンを連れているのを問題にしているのは、ただの言いがかりだ。
別に理由があるんだよ」
うんっ? 別の理由って?
「ヨーコ、気づいていないの? デウス王子はヨーコとシーラの仲の良さに嫉妬しているんだよ」
とあきれた様子のアーテナ。
デウス王子の怒りの原因は、最近、どんどんな仲良くなってる私とシーラの様子に嫉妬しているからだと言う、リンターロとアーテナ。
えー! そういうことなの?
だって、デウス王子の護衛っていったって、リンターロとアーテナがいて、ダークエルフを逃しちゃったから、いつドンちゃんが狙われるかわからなくて。
ドンちゃんがシーラになついて一緒にいるから、自然と一緒に行動していただけだったんだけど。
確かにシーラとは、だいぶ打ち解けてきてリセット前と同じぐらいには仲良くなってきたけど。
「王子はさー。シーラの前でカッコつけたいのに、いっつも私やリンターロに守られてて、ヨーコがシーラを守ってばかりだから、悔しいんだよ。
まだ子どもだし」
とデウス王子の思っていることを教えてくれるアーテナ。
確かに、聖神会でデウス王子とシーラはいっしょに暮してて、貴族のお嬢さんばかりの聖女見習いの中で。唯一、デウス王子に親切にしていたらしいシーラに、王子がなついているのは、見てて気づいていたけど。
それって、この先のことを考えると、ちょっと危ない気が……。
聖女様が、シーラをお嫁さん候補に考えていたらしいし。
王様と聖女様のようなことになったりしたら……。
なんてことを思ったりしたけど、リンターロから、
「すまん! 王子の機嫌が直ったら、なんとかするから。
ここはいったんドラゴンとパーティーを離れたことにして、少し離れた後ろからついてきてくれないか!
お互いの居場所は、ペンダントでわかるだろう!
ダークエルフも体制を立て直すまでしばらくは襲ってこないだろうし、なにかあったらペンダントで連絡してくれ。
そうしたら、助けに駆け付けるから!」
なーんて、めちゃくちゃなことを言ってくる!
もちろん抗議したけど、その決定が変わることはなく、しょうがなく王子様のパーティーとお別れして、ドラゴンといっしょに少し距離を取って、後ろからついていくことになったのだった……。




