第33話 エルフの谷へ、再び
王妃様が亡くなって数日が経ち、グンペーイ王国の街は落ち着きを見せるようになった。
ブゴニア国からのグラーデウス王の帰還に沸いたグンペーイ王国だったけど、突然、ディアーデウス王妃が病気で亡くなったことが発表されると、国中が大きな悲しみに包まれた。
そして、それを振り切るかのように、デウス王子が真の後継者であることを証明するため、エルフの谷へ旅に出ることになった。
グラーデウス王からは、ドラゴンスレイヤーである王家に代々伝わる聖剣を、デウス王子に「我が息子よ。これで自分の身を守り、必ずエルフから王の証明を受けるのだ」と言って、手渡された。
そして、王子を強く抱きしめられると、「必ず無事に帰ってくるのだぞ」とお優しい言葉をかけられたのだった。
それでは、リセット前にはたどり着けなかったエルフの谷へ、今度こそ行くぞ! 出発だ!
デウス王子の護衛のメンバーは、リセット前に旅立ったときと同じく、リンターロ、私、シーラ、ドンちゃん、アーテナ。それにいまだに行方がわからないダークエルフに詳しいという理由で、意外に有能だった魔法使いのトモシゲさんがお供として加わった。
盛大なお見送りを受けた後で、お城から街を経て、街外れの国境の門をくぐってか大観衆に見送られながら、エルフの谷を目指して旅立った。
エルフの谷に行くには、灼熱の砂漠を通過するしかない。灼熱の砂漠に向かってしばらく道を歩いていると、少年が一人こちらに歩いてくる。
そしてすれ違った瞬間、少年が懐から銃を抜き、暗いローブに包まれたドラゴンに向けて、撃とうとした瞬間!
リンターロが、銃ごと少年の腕を右足で蹴り上げた!
銃から打ち出された弾丸は、上空に舞った。
その様子を見て、紫のローブから長い銀髪をはみ出せながら、長い槍を持った男が突っ込んできて私たちの間を縫って、ドラゴンに向かって槍を突き刺した!
この男、ダークエルフだ!
槍をドラゴンに突き刺すと、勝利の表情を浮かべたダークエルフだったけど、その瞬間、ドラゴンが纏っていたローブがはだけ、そこには全身鉄製の鎧を着たドンちゃんが!
驚くダークエルフに、ドンちゃんがドラゴン・キーック!
キックの衝撃で槍を投げ出してゴロゴロと転がりながらも、なんとか私たちと距離をとろうとするダークエルフ!
そして、さっと手を挙げると、赤いペンダントを握りしめる。
すると、ズザザザザァという音とともに、リセット前の世界で私たちを粉砕したゴーレムが、砂の中からその巨大な姿を現した。
「まさか、お前たちがここまで用心しているとはな。
だが、このゴーレムの前では、無意味だ」
とダークエルフが不敵な笑みを浮かべて言う。
なに言ってんの! 銃や槍などの物理的な攻撃はともかく、闇の力ならドンちゃんクリーナーで吸いまくれば楽勝じゃん!
『ドンちゃん、お願い!』と念じると、ドンちゃんが目の前に現れたゴーレムの闇の力を吸おうと前に出たそのとき、隠れていた魔導師たちが姿を現し、こちらに向かっていっせいに魔の矢が降り注ぐ!
だけどドンちゃんに効くわけがなく、あっという間に闇の矢を吸収していくドンちゃん! だったんだけど……。
やばい! 魔の矢を吸収するのが忙しくて、身動きが動きが取れなくなったドンちゃんの頭上から、ゴーレムの足が降り注ぐ!
あっ、シーラがドンちゃんをかばうために飛び出した!
そして、光の力のバリヤーで、ゴーレムの足を真上に押し戻した!
私もペンダントを握りしめて、光の力で光り輝き、シーラといっしょにゴーレムの足から、光の力のバリヤーでシーラとどんちゃんを守る!
そう、物理攻撃に対しては、光の力を使えば、こういう防ぎ方ができるもんね!
だけど、ゴーレムの足が重くて二人の光の力でも押し返せない。
真上には、ゴーレムの足、横からは魔導師たちが魔の矢を放ってきて、かろうじて光の力のバリヤーで防いでいるだけの状態だ。
そして、ドンちゃんを、光の力に包んで守っているのはいいけど、ドンちゃんの体の中から闇の力が消し飛んでいって、光体のドラゴンに戻っている。
なんか、どんどん赤ちゃんに戻ってない? これはこれで大丈夫?
ゴーレムが体重を乗せてきて足が重くなってきた! このままだと持たない!
そこになんとか銃を持っていた少年を拘束したリンターロが、デウス王子の護衛をアーテナとトモシゲに任せて、光輝く剣を振りかざし、こっちに向かってきた!
「俺だって、光の力が使えるんだぜ!」
と言って、私たちのもとに駆けつけて、飛び上がって光の力に包まれた剣を、ゴーレムの足の先に突き立てた!
すると、私たちにのしかかっていたゴーレムの足が粉砕した!
足の一部を破壊されてバランスを崩したゴーレムが、つんのめって私たちを追い越しながら前方に倒れていく。
そこに光のバリヤーからドンちゃんが飛び出して、ゴーレムにガブっとかみつくと、「ズォォォォォォ」と、ゴーレムの闇の力を吸い出しはじめて、みるみるうちに砂の塊へと変わっていく、ゴーレム!
やった! ゴーレムを倒した!
そして、魔の矢を放っていた魔導師たちを、光の力とドンちゃんクリーナーのコンボで次々と倒していく!
よし! これで後は、ダークエルフを捕まえるだけだ! 覚悟しろ!
そう思って、残り少なくなった魔導師たちの後ろにいたダークエルフをとらえようとしたそのとき、ダークエルフが、自分の目の前に垂直の丸い円を描いた!
あれはゲートだ! ダークエルフもドラゴンみたいに、ゲートを使って違う場所に移動できるのか!
あわてて魔導師たちを倒して、ゲートに迫ったけど、ダークエルフにゲートに入いられて、その瞬間にゲートが閉じてしまい、ダークエルフを逃がしてしまった……。
くそー! 逃げられちゃった!
ダークエルフを逃がしたのは、残念だったけど。
でも、これでリセット前のあの惨劇は防げたんだ!
私たちの勝利だ!!!
抱き合って喜ぶ、私とシーラ、その間に挟まれるドンちゃん(笑)。
でもそんな私たちを、なぜか苦々しい顔でデウス王子が見ている。
なんで? 私、なんか王子にしたっけ?
そのことの意味に気づかされるのは、それから数日後の話だった。
数日後、苦々しい顔で、私をにらみつけたデウス王子が、灼熱の砂漠のど真ん中で、私にこう言い放った。
「ヨーコ、お前はクビだ!」
<第2部 完>




