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第32話 勝利の凱旋だ

 グンペーイ王国に戻ると、待ち受けていた大勢の人たちの大歓声を受けることになった。

 帰国したグラーデウス王は、ドラゴンスレイヤーの血を引いているだけでなく、本物のドラゴンスレイヤーになったので、それが大げさに伝わって、グンペーイ王国の首都、ヴァーチルは狂乱のお祭り状態になった。


 詰めかけた人たちの大歓声の中、大混雑の国道を進んで、お城に入ると。

 王宮では長蛇の列で貴族の人々からお祝いの言葉を受けることになり、王様もとてもお疲れの様子。まあ飲み疲れ、遊び疲れもあるだろうけど。

 隣には王妃様、そして後継ぎになったディアーデウス王子が座っている。


 それから王宮で始まった酒池肉林の日々。やっとそれが終わりを迎えると、カーウラ将軍から連絡があって、王様と王妃様だけになった王宮に、私とリンターロが呼び出されたんだけど。

 王様と王妃様の前に連れてこられてひざまずいていると、カーウラ将軍が口にさるぐつわをして拘束された、一人の男を引き連れてやってきた。


「王様、ご指示通り、王妃様の宮殿を監視していて、ブゴニア国からの使者を捕まえました。この者が、その使者です。

 そして、これがブゴニア国に潜むわが国のスパイから、使者を通じて王妃様宛てに送られてきた手紙です。

 内容は、ドレイクの死と、王様の暗殺失敗を伝えるものでした」

と言って、王様に手紙を差し出した。


 受け取った王様が手紙を一読すると、隣で青ざめた顔をしている王妃様に向かって差し出して、

「やはり、お前が暗殺の首謀者だったのか」

と冷たく言い放った。

 差し出された手紙を受け取ることもなく、青ざめた顔で王様をにらみつける王妃様。


 そんな王妃様に、

「お前のことを裏切り続けた私を、憎む気持ちはわかる。妹のリウィーアのこともな。

 だが、だからといって、ドラゴンの生まれ変わりの阻止を企んだダークエルフと手を組み、ブゴニア国に反乱を起こし、グンペーイ王国の聖女たちを皆殺しにするような計画に手を貸すとは、けっして許されることではないぞ。

 お前のために、リウィーデウスを養子にして後継ぎに選んだというのに、それでも私と実の妹を憎む気持ちは変わらなかったのか」

と王様が王妃様に言葉をかけると、


「なにが、なにが『私のために』だ!

 王国と私の家のためだけだろうが!

 愛のない政略結婚だからといって、よりにもよって聖女である私の妹に手を出して、子どもまで作って!

 挙句の果てに、その子を私の子どもにして、次の王にする?

 では、私は、私は何のためにここにいるのか? ただのお前と、家のための道具でないか!

 ディア―デウスを我が子にして、わが家の名誉と利権は守ってやったんだ!

 もう、お前も妹も必要ない!

 お前たち二人を殺して、後は自由に生きるはずだったのに!」

と叫んだ王妃様に対して、


「国王である私、グラーデウスの暗殺を企てたこと、

 ダークエルフと共謀して、ブゴニア国に反乱を引き起こしたこと、

 ダークエルフの聖女殺しの手助けをしようとしたこと、

 そのすべてが露見した今、本来なら死刑を免れない罪だが、計画が失敗に終わったことが幸いだったな。命だけは助けてやる。

 城の一番高い塔にある部屋で、残りの人生を一生過ごせ」

と言い放つと、王妃様が、

「誰がそんなことを受け入れるか! 私は自由だ!」

というと、懐から短剣を取り出して、自分の喉に突き刺した!


 首から飛び散る鮮血!

 あわてて、カーウラ将軍やリンターロが叫ぶ。

「衛兵! 衛兵! いますぐ、聖職者をここに呼べ!」

 そして、血だらけの王妃様を抱きかかえた王様の所に駆けよったけど。

 王様が、

「この短剣は、闇の力で覆われた暗殺用のものだ。聖職者が来ても、無駄だ」

と言うと、王妃様を抱きしめて一言「すまなかった」と言う。


 それに答えるかのように、王妃様の目から一筋の涙がこぼれ、目を閉じて、二度と開くことはなかった。


 目の前で起こったあまりのこと驚いていた私の胸のペンダントが突然、光り出した。

 シーラから連絡がきたのだ!

「ヨーコ様! ヨーコ様が危惧していた通りのことになりました!

 神学長様が……」


 あー、こっちの未来は変わらなかったかー。

 リセット前の世界では、理由はわからないけど聖神会の建物で火事が起こって、聖女様が重症になり、ルーコラ神学長が焼き死んでしまった。

 リセット前とはかなり状況が変わったけど、どうやらルコーラ神学長が心変わりすることはなかったようだ。

「わかった! 今そっちに行く!」

と混乱を極めるお城を飛び出して、聖神会の建物に向かった。


 王様からもらった特別の通行証を持って聖神会の建物の中に飛び込み、急いで聖女様の寝室に向かうと、ルコーラ神学長とシーラがもみ合っていた。

 ルコーラ神学長が、火が付いたトーチを持っていて、そこらじゅうに油がまかれている!

 そんな状態なのに、聖女様は寝室で死んだように眠っていて、目の前の騒ぎにも起きてこない。


「神学長様、やめてください!」

「シーラ、離しなさい。いまからリウィーアと私で聖なる炎に包まれるの。

 危ないから、あなたは逃げなさい!」

 その二人の間に私が割って入って、神学長につかみかかって、なんとか火のついたトーチを奪い取って!


「ドンちゃん!」

と呼びかけて、シーラといっしょに聖神会にいたドンちゃんに、トーチを差し出すと、パクっと食べてその火を消しさった!

 さすが、ドンちゃん!


 それを見た神学長が、ガクっとその場にひざまずく。

「ルコーラ様、なんで聖女様といっしょに焼け死のうとしたんですが……」

と私が聞くと。

 シーラを抱き寄せて、「この子のためなのよ……」と、いまにも泣き出しそうな顔でつぶやく。


 そして、

「お願い、リウィーアと死なせて!

 この女がいる限り、シーラが聖女になれないの!」

と叫ぶルコーラ神学長に、シーラが、

「神学長様、私は聖女になれなくても構いません!」

と言ったけど、


「私がリウィーアを殺そうとした理由は、それだけじゃないわ!

 この女が聖女になってからというもの、聖神会は堕落する一方!

 シーラが勇者様に選ばれて、ドラゴンの生まれ変わりの手助けをして、聖女になれると思ってたのに!

 この女が『王子とシーラってお似合いじゃない? 聖女はやりたがっているカラーラにして、シーラには王子のお嫁さんになってもらおうかな』なんて言い出して!

 私は信仰を偽って、この女が好き勝手するのに従ってしまっていた。

 だから、せめて聖神会の象徴である業火に包まれて、この女と一緒に罪を償おうと思ったのに」


 そう口にする、ルコーラ神学長。

 そんなことがあったんだ……。

 それで私から、

「神学長様、さっき王妃様が亡くなりました。

 悪事が露見した上での自殺です。

 私は(自分で言うのもなんですけれど)、不死身のヨーコです」

とルコーラ新学長が知らない事実を伝える。


 それから、隣のシーラを強く抱きしめて、

「私がシーラを守ります!

 グラーデウス王と交渉して、聖女様には絶対この子に手を出させません!」

と誓った!

 そう! 前回は約束したのに、シーラを守り切れなかった。

 今度こそ、救えなかった人ためにも命にかけて、絶対にシーラを守ります!

とルコーラ神学長に誓うと、ルコーラ神学長が、その場に泣き崩れた。


 聖女様は、スヤスヤと眠っていた。

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