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第28話 ブゴニア国に潜入だ

 リセット前の時みたいに、魔王の森の入り口付近にアンデッドの大群がいることもなく、無事に魔王の森を抜けて、夜遅くにブゴニア国への入り口があるところまでたどり着く。


 あれっ! 前は夜でも松明がたくさん焚かれて、国境の壁のところにあるの塔の上に兵士がたくさんいたのに。いまは、二、三人しかいなさそうだ。なんか変だよね? リンターロ?

「いや、これが本来の警護の状態だ。

 魔王の森を通過して攻めてくる敵なんかいないからな。

 特に、ブゴニアの国民は魔王の森を恐れていて、自分たちで近づこうともしないし。


不思議に思ってリンターロに聞いてみると、

「国境に沿って作られた壁は、魔物たちがブゴニア国をおそってくることに備えて作られたものだ。

 だが、もう何年も魔物がブゴニア国を襲ったなんて話を聞かないから、今は形だけの警備になっているらしい。

 魔王の森があるから、魔物以外はこっちから攻めて来れないはずだからな」

と教えてくれた。


 そーなんだ。それなら侵入はしやすそう。

 でも、どうやって侵入するんだろう?

 リセット前は、戦争がすでに始まっていたから、ドレイクが大勢の軍隊で強行突破しようとしたし、ドンちゃんにも手伝ってもらったし。


 すると、そこに、

「リンターロ様、ヨーコ様、ここは私にお任せあれ!」

 といって、全身を黒いローブで身を包んだ男が目の前に出てきた。

 あれ? 魔導師!?


「魔導師なんかと間違えないでください! 私はグンペーイ王国イチの魔法使い、ツゥモシーゲです!」

 うん? トモシゲさん?

「ツゥモシーゲです! 私の活躍をご覧あれ!」

 そう言うと、ずんぐりむっくりで人のよさそうなオジサンの魔法使いは、国境の壁に向かって胸のペンダントをかざすと、何かの呪文を唱え始めた。


「あれって、何をやっているの?」

と私が隣にいるリンターロに聞いたけど、

「しー! 静かに! 見ていればわかる」

と言われたので黙って待っていたけど。

 何も起こらないまま数十分が過ぎた。


「ねー、何をしてるの? 朝になっちゃうよ!」

と私が文句を言ったその時。

 国境に設置された塔の上に立っていた兵士数人が、ドサドサとその場に倒れこんでいった。


「よしいまだ、かかれ!」

とリンターロが言うと、そばに控えていたニンジャっぽい兵士がサッと国境の壁まで行って、ハシゴをかけて器用に登っていった。

 そして、国境の入り口が開かれて、私たちは無事にブゴニア国に侵入できたんだけど。


 ブゴニア国に入ると、さっきの魔法使いが、

「どうですか! 私の魔法、スリープは!」

と嬉しそうに話しかけてくる。

 スリープ、眠る……ああ、敵の兵士たちを魔法で眠らせたんだ。

 平和的でいいんだけど、もうちょっと術が効くのが早かったらよかったんだけど(笑)。

 たまたま敵兵が寝たんじゃないよね(苦笑)。


 もう朝だけど、ブゴニア国に潜入している味方のスパイに話を聞くために、眠い目をこすりながら、秘密のアジトに向かう。

 街中にあるさびれた宿屋に入ったら、客は誰もいない。

 そのまま二階に上がると、ブゴニア国に潜入しているスパイが待っていた。


 さっそく、

「どうだ。この国の様子は?」

とリンターロが聞いたんだけど、スパイは困惑した感じで、

「それが、いまのところ反乱の気配はどこにもありません」

「それなら、反乱の首謀者たちはどうしている?」

「リンターロ様に見張るよう命じられた夫婦を見張っていますが……毎日、畑を耕しています。

 確かに数年前に処刑されたブゴニア国の旧・王族との血のつながりはありましたが、いまのところ、まったく反乱を起こすような気配はありません」


 そして別のスパイからも、

「城に潜入しているスパイからも、『怪しい行動をする魔導師など見たことがない』との報告がありました」

と困惑した様子で、リンターロに答える。


「おかしい。あと数週間後には、グラーデウス王がブゴニア国にやってくるっていうのに。

 グンペーイ王国よりはるかに戦力が劣るブゴニア国が、騙しうちとはいえ、国中で一斉に反乱を起こし、国境沿いで互角以上に戦えたんだ。

 あの日、闘技場で記念大会が終わるまでは、王様を迎えたブゴニア国側の様子は非常に友好的だったのに。

 突然、国全体の雰囲気が豹変してしまった。あの狂信的な姿はまるでバーサーカーのようだった」


とリンタロ―がぶつぶつ言っているのを「こいつは何を言っているんだ」という冷ややかな様子で見つめてる、味方の人たち。


 そりゃそうだよね。ここにいる人で実際に反乱を経験したのは、リンターロと私だけだし。

 私も「勇者」と呼ばれる前の状況にもどっちゃって、異世界転移者の女剣闘士ってだけで。リンターロがそれなりの地位にいるから、味方の人たちも言うことを聞いてくれているだけだし……。


 うんっ、バーサーカー!?

 バーサーカーといえば、ソーニアのことを思い出すな。リセット後は、ほとんど会えていないけど、元気にしてるのかな?


 そういえば、たしかソーニアは、魔法使いに何かの術をかけてもらってるって、アーテナが言ったけど。ブゴニア国の民衆がバーサーカーになったことと、なにか関係があったりするかな? まさかなね?


 一応、聞いておくかと、「ねえねえ」といま思い出したことをリンターロに話すと、さっとリンターロの表情が変わって、

「魔法使いを呼べ!」

と大声を出した!

 しー、静かに! ここは秘密のアジトなんでしょ!


 呼びだされたのは、さっきの魔法使いさん。確かトモシゲさんだっけ?

 このチームに、魔法使いは、この人しかいないのかな? あまり頼りにならなそうだけど、と思ってたけど。


「バーサーカーといえば、ダークエルフの得意技じゃないでしょうか?」

という一言で、一気に話が進む!

 リンターロが、

「人間や魔物をバーサーカーにするのは、ダークエルフなのか!」

と聞くと、

「はい。魔法使いや魔導師は、人を操る魔法を持っていますが、元々はダークエルフから伝わったと言われる魔法です。

 ダークエルフが得意とする呪文と、闇の力を増幅させる薬草を使って、人や魔物をコントロールし、心に秘められた狂暴性のリミッターを外して、限界まで力を引き出し、死ぬまで暴れさせることができます」

とスラスラ答えるトモシゲさん。

 なにそれ! こわっ! ソーニアってそんな危ない魔法をかけられていたの!


 意外と有能だった、トモシゲさんが話を続ける。 

「ですが、リンターロ様。国中の人間をバーサーカーにするような、そんな広い範囲で魔法をかけられるかどうか……?」

「うーん、確かに。だが、全国民が魔法にかからなくても、いいのかも。

 滅びた王族の生き残りを魔導師が操って、反乱を企てさせて、ことを起こす。

 そして、それにバーサーカーの術をかけられて錯乱した一部の民衆が引きづり込まれたんだとしたら……。

 最初の火種をつけるだけで、あとはふだん不満を抱えていた民衆が勝手に暴れ出したのかもしれない」


 そういうと、リンターロがしばらく考えて、

「だが、仮にそうやって反乱を起こせたとして……どうやってグンペーイ王国の聖女たちを皆殺しにしようとしていたのか? その方法が不明だな」

と、考えていることが口にでてしまったようだけど、その瞬間!


「聖女を皆殺しですって! 何の話ですか!」

 それまで黙って私たちの話を聞いていたルコーラ神学長が、驚いた様子で声を上げた!

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