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第26話 お城から聖神会へ

 いま目の前にグラーデウス王がいて、めっちゃこっちを疑ってそうな顔をしているんだけど。


「カーウラ将軍と異世界学会から話は聞いた。

 私も王として、聖神会の信者として、リセットの話を知ってはいた。

 しかし、いきなりヨーコが特異点で、今いるこの世界がリセットされた後の世界だと言われてもなぁ……」

と言うので、リンターロがおそるおそる、

「王様、私たちはリセット前の世界で、王様の重大な秘密を知ることになりました。

 それは、聖女様との関係のことです」

というと。


 王様がピクピクっと眉毛を釣り上げて、

「それを知っているというのが本当なら、お前たちを生かしておくわけにはいかないかもしれないな(苦笑)。

 それに、たとえそのことを知っていたとしても、『リセット』したという証拠にはならないのではないか」

とひきつった笑顔で言う。


 さらにこの後、遠征先のブゴニア国で王様が暗殺されることと、ブゴニア国で反乱が起こることなんか話したんだけど、あまり信じてないようだった。

 でも、異世界学会のお墨付きの話だったので、私たちが問題解決のためにいろいろと動きまわることについて、しぶしぶ協力してくれることになった。


 で、そのときに王様にお願いした重大なことがあって、数日後に王宮の前に集まった民衆を前にして、それが大発表された。

 王様が、隠し子だったリウィーデウス君を正式な後継ぎとして、王妃様の養子にすると発表したのだった。

 リウィーデウス君は、身分の低い女性に数年前に産ませた子どもだと発表され、名前もディアーデウスという名前だということになった。



 それは発表の数日前のことだ。

 私とリンターロは王様に許可を取って聖神会に出向いて、聖女様にお会いした。聖神会の一番奥の部屋で人払いをしてもらって、私たち三人だけになる。

 そして、警備隊長として聖女様と会う機会もあった、リンターロがまず口を開く。


「聖女様、お送りした密書をお読みいただいたと思いますが。このヨーコがリセットを行い、世界を救いました。

 リセットされる前の世界では、魔導師にそそのかされた者によってブゴニア国で反乱が起こり、王様が暗殺され、魔王の森の中にいたドラゴンも殺されました。

 これから、この世界で同じことが起これば、世界は闇に包まれてしまいます」


「ふーん。それで、私にお願いしたいことって?」

「この聖神会の中にいる、リウィーデウス君を、王様の正式な後継ぎだと、王様に発表していただきます。

 聖女様には、そのことの許可をいただきたいのですが」

「へー、そんなことまで知っているんだ。

 それで、リウィーデウスを王様の後継ぎにすることで、なにが変わるっていうの?」


「まず、王様を暗殺する理由がなくなります。暗殺の可能性がゼロになるわけではないですが、リウィーデウス君を後継ぎにすれば、王様を生かしておくことが暗殺を企んでいる者たちにとってメリットが大きくなります」

と聖女様に説明する、リンターロ。


 リンターロの話によれば、アグリーナが王様の子どもを産む前にリウィーデウス君を後継ぎとして王様が指名してしまえば、王様を暗殺してリウィーデウス君を後継ぎにしたいと考えた勢力が、王様の命を狙う必要がなくなる。

 まあ、王様を暗殺したい理由が、王妃様からの王様への復讐でなかったら、なんだけど。


「ふーん、そうなの。なんだか、よくわからないわね。

 まあいいわ。リウィーデウスを次の王にすることは、お父様とお姉様の希望だったし」

 そう言うと、陰に控えていたルコーラ神学長に命じて、リウィーデウス君を呼んできてもらう。


「リウィーデウス」

「お呼びですか、聖女様」

「これから、お前にはもう一人、聖女様が増えるの。

 私のお姉様よ。その方のことを、これからは『お母さま』と呼んでちょうだい。そして、あなたは次の王様になるのよ」

と聖女様が、リウィーデウス君に教えてあげる。


 そして、リウィーデウス君を近くに呼び寄せて抱きしめると、一言、二言、声をかけて、「部屋に戻って、王宮に行く準備をしなさい」と告げると、ルコーラ神学長にいろいろと準備するように命じた。

 そして、私たちに、「この子には、母親のことを『聖女様』と呼ぶように教えてきたの」とそっとささやいた。



 お城の中にある王宮のバルコニーから、グラーデウス王とディアーナ王妃に挟まれて、リウィーデウスからディアーデウスになった王子が、広場にあつまった大観衆に向けて手を振っている(ややこしいな)。

 グラーデウス王の声が、バルコニー前の広場中に響く。


「今はまだ、ディアーデウスが正当な後継ぎになることに不安を感じている者も多いだろう。

 王子はこれから、正当な後継者であることを証明するために、『エルフの谷』に行く準備に入る。間違いなくエルフの谷から、正当な後継ぎとしての御印を携えて戻ってくるだろう!」

と高らかに宣言する!


 大歓声の国民たち。

 それを聞きながら、これから数々の難題を解決して、あの日の旅の続きにたどり着かないといけない、と王様の宣言を聞きながら、心に誓うのだった。



 聖神会に行った際には、ルコーラ神学長にお願いして、シーラにも会った。

 初めて会ったときと同じように、おとなしいメガネっ子だったけれど。

 シーラちゃん! まだ生きている! うれしい! ごめんね!

 私が守るって言ったのに、全然約束を果たせなくて!

 今度こそ、死んでもあなたを守るから!

と、リセット後の世界で、初めて会ったのに、涙を流しながら、思わずシーラを強く抱きしめてしまって、とても気味悪がられた、私だった(苦笑)。


 シーラに、リセット前のときと同じように、カーウラ将軍からもらったペンダントを握らせて、光の力があることを確認して、ドラゴンの記憶があるかどうかを聞く。

 とまどいながらも、ドラゴンとの思い出を語るメガネっ女に、

「やっぱり、あなたで間違いない! お願い! 私たちといっしょに世界を救って!」

と懇願してOKをもらった。


 よし、ここまでは順調だ! 王様の暗殺を止めて、ドラゴンが生まれ変わる準備もできたから、大丈夫だよね?


 次は、ブゴニア国の反乱をどうやって止めるかだけど。

「ねえ、王様にブゴニア国への外遊を中止してもらうわけにはいかないの?」

「それは、俺も王様とカーウラ将軍に言ったんだけど。

 ブゴニア国が反乱するって言っても、いまいち信じてもらえないんだ……。

 リセット前の話を何度しても、『ブゴニア国の治安は安定している。反乱などするはずがない』の一点張りで、『そんな不確かな情報で外遊を中止するわけにはいかない』って話になって……」


「じゃあ、私たちがブゴニア国に潜入して、魔導師を倒すしかないじゃん!」

「そうするしかないか……」

 まだ、反乱が起こる日まで時間がある。

 魔王様ことドンちゃんだったら、ブゴニア国に潜伏する魔導師やダークエルフを見つけて、その闇の力を吸い取ってもらえるかもしれない。

 そうすれば、話は早くて簡単なんだけどなー。


 ひとまず魔王の森に行って、魔王様を生まれ変わらせてドンちゃんになってもらい、ブゴニア国に侵入している魔導師たちと黒幕のダークエルフを捕まえよう!


 ということで、聖女見習いのシーラちゃんをスカウトして、魔王の森に入って魔王様に会うことにしたんだけど。

 しまった! ゲートがないから、シーラちゃんを危ない目に合わせることになっちゃう!

 なので、こちらの守りを固めるために、護衛の兵士を数人と、シーラちゃん以外の大人の聖職者にもいっしょに行ってもらおうと思って相談したら。

 なんと! 神学長のルコーラ様が付いてきてくれることになったんだけど。

 大丈夫かなー、この人。リセット前の世界では、聖女様といっしょに焼け死んだんじゃなかったけ……。


 不安に感じつつも、私、リンターロ、シーラ、ルコーラ神学長と、護衛の兵士たちに囲まれて、魔王の森へ出発することになった。

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