第25話 再び異世界へ
森を抜けてグンペーイ王国の街に入ると、やっぱりジロジロと見られる。
街にはもう見慣れた、荷物を運んでいるモンスターや人以外の種族も歩いている。
すると、やっぱり街の警備をしている兵士たちが駆けつけてきて、私をお城に連れて行く。
あの頃はよくわかってなかったけど、いきなり王様や聖女様のところに連れてかれるってすごいなー。
別に異世界転移者が珍しくなくて、最初に王様&聖女様のチェックを受けることになっているのかな?
あっ、グラーデウス王が目の前に出てきた。
リセット前に、喉から血を出して死んだ姿を見ているので、不思議な気分だ。
それで、その横にスケスケな白い服にベールで顔を隠した聖女リウィーア様がいる。
この二人が関係を持っていて、子どもまでいるんだよなー。
で、王妃様が聖女のお姉さんって、考えてみるとすごい関係だよなー。
それで聖女様が、
「グラーデウス王、この者は間違いなく異世界から流れ着いた人間です。
属性は『戦士』、特性は『秘めたる力』というお告げが出ました」
と前に聞いたのと同じことを言ったけど、その秘めた力が「リセット」のことなんだろうな、と思ったりする。
なんてことを考えていたら、グラーデウス王が前回同様に、
「ミナミ・ヨーコ、いまから私の戦士として忠誠を誓え!」
と偉そうに宣言したので、私は再び異世界で剣闘士になることが決まった。
それで、さっそく闘技場に連れて行かれて、アーテナに紹介される!
金髪ショートカットのアーテナだ! 良かった! 生きてた! リセットされたから、当たり前なんだけど!
そして、ソーニアがいる! 赤毛のソーニアが生きてる!
嬉しくて泣きそうな顔になった私を、不思議そうに見てくる二人。
そしてユリアン! ユリアンもいる! 髪が栗毛色のふわふわで、まだ誰も殺していないユリアン!
思わず抱きしめちゃったら、気味悪そうに私を振り払った(苦笑)。
それで、一通りの説明をアーテナから受けたけど、全部知っていることだ。
チャチャっとビキニの鎧を着けて、剣闘士の練習をサクサクっとはじめると、アーテナから「あなた、本当に異世界転移者? なじむのが早くない? 前の世界でなんかやってた?」と疑われたけど、笑ってごまかした。
それで、数日後にはもう闘技場デビューだ!
相手は、やっぱりアーテナ!
こっちでは初対戦だけど、アーテナと戦うのは久しぶり!
まだ不死身のヨーコになる前だし、光の力も使ってことはない状態だけど、実戦で鍛えた記憶が残っている。
最初は、初心者だから舐めきった感じで力任せに攻撃してきたアーテナの剣を、うまく盾で防ぎながら、すきを見てカウンターで剣を何度か叩き込めた!
もちろん盾で防がれて、最後は私の剣と盾が弾き飛ばされて、やっぱり馬乗りになられてボコられたんだけど。
初戦にしては、かなり善戦できたんじゃないかなー?
それでも、やっぱり死にそうになって、救護室で医者に見放されて寝転がっていると、アーテナがずっと付き添ってくれて、
「ごめん、初戦なのにあまりにもあんたが強いから、やりすぎちゃって……。お願い、死なないで!」
と、今にも泣きだしそうになっている。
いや、アーテナ、あなた前もやりすぎてたから! 手加減できないのは治してよ!
それで、そのまま救護室で寝転がって1日寝たらすっかり元気になって、心配していたアーテナを驚かせたところで、闘技場の控え室にリンターロが顔を出した。
「やあ、初めまして。俺は警備隊長のリンターロ。君が異世界から来たヨーコか。
俺は、君と同じ異世界転移者だ。
他の異世界転移者にも紹介したいから、いっしょに来てくれないか」
なんて話しかけてきたけど、ちょっと白々しすぎない? リンターロ!
案の定、アーテナが、
「リンターロ、あんたが他の異世界転移者に興味を持つなんて珍しいねー。
こっちに来て十数年、『異世界転移者なんて珍しくもない』なんて、いつも言ってるのに」
「いやー、たまには異世界に来たばかりで困っている仲間を助けなきゃなーって思って」
「本当にぃー? 若い女の子だからって変なことするなよー」
なんてアーテナに言われて焦ってるリンターロと一緒に、異世界学のえらい先生がいるという、異世界学院に挨拶に行くことになった。
重々しい雰囲気の学院の門をくぐると、頭が良さそうな人たちがたくさん座っている大きな教室に案内される。
私たちが教室に入ると、一斉にみんなが立ち上がって頭を下げてきたので、びっくり!
その中でも一番偉そうな、白髪に白く長いひげのサンタクロースみたいな老人が近づいてきて、うやうやしく頭を下げられた。
「ヨーコ殿。私は異世界学会の学長で、ランフーレと申します。
この度は、この世界の危機を救っていただき、本当にありがとうございました。
同じ異世界転移者として、その偉大な功績に歓喜に堪えません。
リセットは、過去に数回しか起こっておらず、前回は数百年も前に起こったと記録されていますが、我々も経験したことがなかったので、初めての経験に驚いています」
いやー、そんなこと言われても、ぜんぜん自覚は全然なくて。ダークエルフに殺されて、なぜか蘇っただけなんですけど?
「異世界転移者の中でも、リセットのことを知っていたものは少なく、かなり混乱しています。
記憶をもったまま数か月前に戻ったことを利用して、よからぬことを企む不心得者も出る始末でして。
いま、ひそかに王宮や聖神会とも相談して、対応に当たっているところです」
そうなんだー! 戻ってまだ数日で状況がわからなくて。この前あった聖女様からも「秘めた力はある」って言われただけだったと話すと、怒りの表情で、
「あのニセ聖女が!
本当なら、ルコーラ神学長が聖女になるはずだったのに。貴族の父親の力で、たいした光の力も持たなかったのに、あの女が聖女になったんです!」
と、聖女様のことを罵った。
それで、リセット後の混乱の収集に努めつつ、闇の勢力との対決に備えることを約束してくれた。
えらい学者の先生に会えたので、この世界から元に戻る方法について、ランフーレ学長に聞いてみたんだけど。
「異世界から流れ着く者がいるということは、逆のこともありえます。
毎年のように行方不明者が数名でていますが、その者が向こうの世界に行っているかどうかはわからないのです。
ただ、何かには数千年生きている者がいるというエルフ一族なら、なにかを知っているかもしれません」
と、前にドンちゃんから聞いた話に近いことを教えてもらった。
やっぱり、元に戻る方法を知っているとしたらエルフか。
いろいろと片付いたら、改めてデウス王子のお供をしてエルフの谷に行って、元の世界に戻る方法を聞かないと!
でも、いまはひとまず置いておいて、これから具体的に何をするべきかだけど。
・王様の暗殺を阻止する
・ブゴニア国の反乱を阻止する
・ドラゴンの生まれ変わりを手伝う
この3つのことを、達成しないとな!
それからは、闘技場で剣闘士見習いとして出場して、スライムに体中に巻きつかれてキャーキャー言いながら「光の力」に目覚めたり、戦士としての実力を日々の特訓でアップさせつつ、リンターロがカーウラ将軍経由で、グラーデウス王との密談をセッティングしてくれるのを待つ日々を過ごしたのだった。
そしてついに、待ちに待った、グラーデウス王との密談の日だ!




