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第24話 リセット

 気づいたときには、霧の立ち込める森の奥にいた。

 頭がぼんやりして、はっきりしない。

 あれ、でも私さっきまで、グンペーイ王国を旅立って、灼熱の砂漠に向けて歩きはじめたんじゃなかったけ……?


 ああ、そうだ!

 私、みんなと旅に出たところで、ダークエルフたちに襲われたんだ!

 ダークエルフが、一連の事件の黒幕だったなんて!

 ドンちゃん、シーラ、リンターロ、アーテナ!

 みんなはどうなったんだろう!

 あわてて、周囲を見回したけど、だれもいない。ここは、ダークエルフたちに襲われた道とは違う場所のようだ……。


 あれっ、ここって私が異世界に迷い込んだときに最初にいた場所じゃないか! と思い出す。

 それに気づいて、いま着ている服を見ると、ビキニ・アーマーじゃない! 異世界に迷い込んだ時に着ていた制服姿だった。ポニーテールも、ほどけていない。


 そのまま、しばらく歩いて、森を抜けたところの先に広がっていたのは、見慣れたグンペーイ王国の街の景色。

 やっぱり阿部寛が出ていた映画『テルマエ・ロマエ』で見たことのある、古代ローマの街並みのようだ。


 数か月ぶりに見る景色に戸惑っていると街から移動用の四つ足のモンスターに乗って、こっちに近づいてくる人がいる。こっちに向かって手を振っている、あれはリンターロだ!

「ヨーコ! ヨーコか! 無事なのか!」

と叫ぶリンターロ!

「リンターロ! あなたは、無事だったの! ドンちゃん、シーラ、アーテナは生きているの!」

と、私を呼ぶ声に答えると。


 モンスターから飛び降りて、駆け寄ってきたリンターロが、私を強く抱きしめる。痛いって! ゆれるポニーテール。そして、

「学者たちの言っていたことは、本当だったんだ!

 ヨーコは、『リセッター』だったんだ!」

と聞いたことのない単語を言い出す。

 リセッター? バレーボールかなにか?

「リンターロ、何を言っているの? ねぇ、みんなはどこ?」


「ヨーコ、落ち着いて聞いてほしい。

 今は、ヨーコがこの異世界に初めてたどりついたときの時間なんだ。

 お前は、ダークエルフたちに襲われて、魔王といっしょに死んだんだ。

 そして、そのときお前に秘められた力『リセット』が発動した。

 そして、ヨーコが異世界にきた時間まで、時間が巻き戻されたんだ!」

 はぁ! 意味わかんないんだけどーーー!


 時間が巻き戻された? それで、いまが私が最初に異世界に来たときの時間??? 何を言っているの?

 最初はまったく意味がわからなかったけど。リンターロが教えてくれたことによると。


 リンターロ、日焼けしてて細マッチョだけど、こうしてあらためて見ると日本人にしか見えない。なんで気づかなかったんだろう。

 もともとリンターロは、私よりだいぶ前に異世界に迷い込んで、異世界から来た闘技士として活躍し、王国の軍隊で兵士になり出世して、護衛隊長にまでなったわけだけど。


 異世界からたどり着く人は大昔から何年かごとにいて、この世界では学者や異世界に戻りたい人によって長年研究対象になってて、「異世界学」という学問にもなっているらしい。

 で、リンターロも異世界に戻る方法はないかと思って、学者たちと親しくなったらしいんだけど。


 そもそも、異世界転移者はなにかというと、どうも今いる、この世界に秩序を与えるための存在のようだって研究がされていて(「特異点」と呼ばれているらしい)。

 この世界は、もともと炎の神様がいて、神様から光と闇が生まれて、光の種族のエルフと、闇の種族のモンスターに種族が分かれていって、その中間の存在として人間が生まれ、この世界のバランスがとられているらしい。

 あれ、なんか前にも聞いたことあったっけ? よく覚えていないけど。


 この世界のバランスが、一方の方向に傾き過ぎると世界が崩壊してしまうらしく、その調整をするため、聖女様やドラゴンが大陸の各地に存在しているらしい。

 そして、世界のバランスがくずれそうになったとき、

「俺たち異世界転移者が、特異点として『時間の秩序』を保つために組み込まれていて、いざというときに『時間を巻き戻す能力』=リセットという力を持たされているそうだ。

 もっとも、自分の意志で時間を巻き戻せるわけじゃないし、ほとんどの異世界転移者は力を発揮することなく死んでいくそうだ」


「そんな力が私たちの中に……。時間が巻き戻されるとどうなるの?」

「巻き戻されるまでにあったことは、すべてなかったことになる。

 みんなの記憶の中にも、その時間に起こったことのことは何も残っていない。

 だけど、異世界転移者の一部にだけ記憶が残っているんだ。だから、こうして記憶が残っている俺が、ヨーコを迎えにこれたんだ!」

「えー、そんなこと、急に言われても……」


「実際、過去に何度か時間がリセットされたことがあって、それが異世界転移者の記憶に残っているから、異世界学会の本にも記録として残っているんだ。

 だけど、俺もこうやって体験するまで、とても信じられなかった!

 いまごろ、異世界学の学者たちは大騒ぎだろうな!

 学者だけじゃなくて、この世界にいる異世界転移者たちがパニック状態だと思う!」

 なんてことを、一気に説明されて頭を抱えたんだけど。とりあえずわかったのは、ゲームみたいに異世界に来たところからやり直せるってことね!


「えーっと、なんとなくは理解できた。

 それで、これからどうしよう?」

「ヨーコは、ひとまずこのまま街まで行って、前と同じように捕まって闘技場の剣士になってくれ。

 俺は、その間に、異世界学の学者たちや異世界人の先生たちに状況を報告して、今後のことを相談してくる」

「わ、わかった。ひとまずそうする」


 いやー、いきなりの話しすぎて、わけがわからないけど、私、大丈夫かなー。

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