第23話 エルフの谷を目指します
ディアーナ王妃から、話があると呼びつけれたんだけど。目の前に王妃様と王子様がいても、そこまで緊張しなくなったなー。
「ヨーコ、お前は知らないかもしれないが。グンペーイ国の次の王になると決められた王子は、代々『エルフの谷』に行って、後継ぎとして認める御印をいただいてくる習わしがあるのだ。
エルフの長老たちに認められれば、正当な子だろうが、庶子の子だろうが、だれが母親だろうが関係ない」
と王妃様がおっしゃる。あ、はい。この前、知ったばかりです。
「その『エルフの谷』に向かう道中には、灼熱の砂漠や他のドラゴンが支配する魔王の森、エルフを守るための山々などがあり、大変危険な旅になる。
といっても、神聖なエルフの谷に軍隊を率いて行くわけにもいかない。これは、ドラゴンスレイヤーの子孫でもある王子が、自身の正当性を証明する試練でもあるのだ。
そこでだ、いろいろと事情を知り、『不死身のヨーコ』と呼ばれる勇者のお前に、王子の護衛として、エルフの谷に行ってもらうことにした」
げっ、マジか!
うわー、全然行きたくないんだけど。
でも、いろいろありすぎて、これ断れそうにないー!
しかたなく、リウィーデウス改めディアーデウス(ややこしいので、デウス王子と呼ばせてもらうことにした)を護衛してエルフの谷に行くことにした。
まあ、ついさっきエルフの谷に行こうと思ったところだったし。
デウス王子の旅の護衛のメンバーだけど、私が成長するまでの護衛を強制的に背負わされたドンちゃんことドラゴン=魔王様と、ルコーラ神学長の助言もあって、いっしょに修行の旅に出ることにしたシーラちゃん。。
そして、新たにデウス王子の警備隊長に任命された、リンターロ。
私もそうだけど、王様が暗殺されたにもかかわらず、警備隊長が罰も受けずに王子様の護衛をするなんておかしいって文句をいう貴族もいたけど、王妃様が都合が悪いことは全部握りつぶしてくれたのだった。
「ヨーコ、俺もいっしょに行くぜ。デウス王子の警護はもちろんだが、俺も戻れるなら、元いた世界に戻りたいからな」
「えっ、えっ、えっ? リンターロって、私と同じ、異世界転移者だったの?」
「あれ、言ってなかったっけ?
俺もドラゴンと会話できていたろ? あれができるのって、聖職者と魔導師以外だと、異世界転移者だけなんだ。この世界の人間には無理だ。気づけよー。
本名は本田凛太郎っていうけど、こっちの呼び方に合わせてリンターロって名乗っているんだ」
リンターロ、リンタロウ、凛太郎、な・る・ほ・ど!
さらに、「前から冒険者になりたいと思っていたんだ」と言ってきたアーテナも加えて、デウス王子を護衛する勇者パーティーを組んで、いっしょに旅に出ることになった。
ただし、ドンちゃんは目立つので、白いローブをすっぽりかぶらせたけど。
行く先は、王子様を後継ぎとして認めてもらうため、そして元の世界に戻る方法を知るエルフがいるかも知れない「エルフの谷」だ!
グンペーイ王国中の民衆から大歓声を浴びて見送られながら、王国の国境からエルフの谷に行くためには通らなくてはいけない、灼熱の砂漠に向かって、私たちは歩き出した。
デウス王子だけ乗り物用のモンスターに乗ってるけど(怒)、まあシーラも一緒に乗っているからいいか。
歩き始めて数時間が経ち、少し先に進んだところで、前から一人の少年が歩いてくる。
黒いローブに身を包んで、かろうじて若い男の子だとわかるぐらいだったんけど。
その子が、私たちとすれ違いざまに、「バキューン!」と、何かでドラゴンの頭部を打ち抜いた!
少年が持っていたのは、黒くて細くて短い鉄の棒、ひょっとして銃!?
こんなものまで、この世界に入ってきていたんだ!
ドンちゃんを銃で打って、すぐ逃げ出そうとした少年を、リンターロが取り押さえる!
シーラが、急いで出血しているドンちゃんの頭部を抑えて、光の力で治癒を試みる。
そこに、今度は黒く鋭い矢のようなものが、猛スピードで飛んでくる! 魔導師が撃ってくる、魔の矢ってやつだ、これ!
どこにいたのか、大勢の魔導師がワラワラと現れて、こっちに向けて闇の力で作られた魔の矢をどんどん撃ってくる!
私とアーテナが、ドンちゃんとシーラをかばって、魔の矢を盾で防ごうとしたけど、数が多くて防ぎきれない!
リンターロのほうは、銃で撃ってきた少年を羽交い絞めにしつつ、デウス王子をかばうので精いっぱい。
「デウス王子、ひとまずモンスターで、逃げてください!」
「わかった! シーラ! シーラ、こっちに来い! いっしょに逃げよう!」
とモンスターの上のデウス王子に、リンターロが、
「王子、すみません!」
と言うと、モンスターのお尻を蹴り飛ばして、王子を王国の方へ逃がした。
そして、魔導師のほうに向かって走り出したけど、魔法の矢の雨が降り注ぎ、前に進めなくなってしまう。
「ああっ!」
と叫んで、腕を抑えて倒れるシーラ!
やばい! 防ぎきれなかった魔の矢がシーラに当たってしまった!
ドンちゃんは、頭から血を流しながら、横になったままだ。
すると、魔導師の後ろから、黒いローブをまとったまがまがしいオーラをまとった何者かが出てきた。
ローブからはみ出ている髪の色は銀色で、その肌は青い色をしている。ローブでよく見えないけど、おそらくイケメンで、耳はとんがっているに違いない。
「……ダークエルフだ」
とつぶやいたリンターロが、魔の矢を払いのけつつ、私たちの前に出て、ダークエルフに向かって、
「お前が、お前が! 今回の事件すべての黒幕なのか!」
と叫ぶ!
すると、そのダークエルフが、おかしくてたまらないという感じで、
「やれやれ。まさかこんなことになるとはな。
闇の力が効かないドラゴンを滅ぼすために、グンペーイ王国の聖女たちを皆殺しにして生まれ変わることを阻止するつもりだったんだが。
それが、生まれ変わりたてでも闇の力が全く効かないドラゴンを、物理攻撃で仕留めてしまえばいいなんて。
異世界の者たちが、よい武器をこの世界にもたらしてくれた。感謝するよ。
今日は、人生最高の日になりそうだ、ハーハッハッハ!」
と、うれしそうにペラペラと話し出す。
そして、ドンちゃんとシーラに目を向けると、
「そこにいる聖女にドラゴンを蘇生されても困るな。
ここで一気に仕留めさせてもらう!」
というと、手を大きく空にかざして、何かの呪文を唱え始める。
すると、私たちとダークエルフの間で魔法の矢を放っていた魔導師たちの後ろの地面が、ゴゴゴゴっという音とともに盛り上がりはじめる。
突然、小高い砂の丘が出現したかと思ったら、岩と土の塊のような巨人が出てきた!
その巨人を見て、リンターロが、「ゴ、ゴーレム……」と目を見開いてうめく。
リンターロ! ゴーレムってなにー!?
ゴーレムと呼ばれた巨人は、学校ぐらいの高さがあって、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
私はとっさに、ゴーレムとドンちゃん、シーラの間に割って入って、ゴーレムからの攻撃を防ごうと、剣と盾をもって立ち向かった。
だけど! 巨人の強大な足がグワーンとこっち飛んできて、私を蹴飛ばしてきて、吹っ飛ばされた!
飛ばされて地面に叩きつけられて、あまりの痛みで動けない!
ああっ、リンターロとアーテナも、次々と足で蹴飛ばされていく。
そして、シーラとドンちゃんを、私の目の前で踏み潰した!
一回、二回、三回と、踏み潰されるシーラとドンちゃん。二人は動かなかなくなった。
シーラ……、ドンちゃん……。
全身を駆け抜けるい痛みで苦しい中、なんとか、なんとか! 立ち上がろうとしたそのときだった。
あ、あれれれ、あれれれ、心臓が痛い!
な、なにこれ? 蹴飛ばされた痛みとは違う痛みだ。
心臓が猛烈に痛い! 立っていられないぐらい、痛い! 痛い! 痛い!
そのとき、以前ドンちゃんに言われた言葉を思い出す。
『私とお前はこれで一蓮托生!
私が死んだらお前も死ぬから、しっかりと守れよ!』
そうだ、私、ドンちゃんと命がつながっていたんだ。
そうか、ドンちゃんが死んじゃったから、私も死ぬんだ。
ごめんね、ドンちゃん、守るっていったのに約束を守れなくて。
王様も、ソーニアも、ドレイクも、ドンちゃんも、死んじゃった。
シーラも(涙)。ごめんなさい。私が、シーラを巻き込んじゃった。
リンターロ、アーテナは大丈夫かな。
私、勇者なはずなのに、誰も守れなかったな……。
私、いまここで死んじゃうんだぁ。
元いた世界に戻りたい……死んだら、戻れたりしないかな……。
家族に会えるかな……。
あ、いつのまにかポニーテールがほどけちゃってる……。
そんなことを考えながら、心臓の痛みを感じなくなりつつ意識が遠のいていき、私の命はドラゴンといっしょに終わったのだった。
<第1部 完>




