第22話 聖神会に行きました
いろいろな難題をなんとか解決できたので、私たちはお城を後にした。
「それにしても、なんで王妃様は、王様を暗殺しようとしたのかな」
と考えこんでいるリンターロ。
「それは、王様と聖女様の間のことに嫉妬したんじゃない?」
と私が言うと、
「あんなに毎日酒池肉林だった、王様に? 政略結婚だったのに?」
とアーテナが言う。
考えて込んでいたリンターロが、
「俺が考えていたのは、王様のほうに子どもができない原因があったんじゃないか? ってことだ」
と驚いたことを言う。
「長い間、王妃様との間に子どもができなくて、愛人もたくさんいたのに、子どもができたのが聖女様とアグリーナの二人だけだというのがな……」
「何が言いたいの?」
「二人の子どもは、本当に王様の子どもなのかどうか、あやしいぞ。
聖女様の子どもの父親は本当に王様なのか?
姉である王妃様が長年がんばってもできなかったのに?
それに、アグリーナの子どもの父親って、カーウラ将軍じゃないかと、俺は疑っている」
そんなこと! するとアーテナが、
「まあ、後継ぎの王子の父親が本当に王様なのかとか、どんな女が産んだ子どもなのとか、いろいろ噂が出るのはよくあることだよ。
結局、権力争いだから、それでこっちがとばっちりを受けなければ、権力者が好きにやってくれって感じだね」
なんてことを言う。そういうものなのー?
納得できない私が、
「さすがに、急に出てきた子どもを、王様が亡くなったからって、母親が誰かも言わないで、王妃様が養子にしたからって、王様の子どもだって納得するのー?」
と聞くと、二人がキョトンとした顔をしてから、
「ああ、ヨーコは、こっちの世界に来てから日が浅いから、知らないんだな」
とリンターロが言う。
知らないって、なんのこと?
「王様の子どもってだけでは、正式な後継ぎにはなれないんだ。
後継ぎに選ばれた子どもは、エルフの谷に冒険に行って、エルフの長老に後継ぎとして認められた印をもらって帰ってきて、はじめて正式な後継ぎになれるんだ」
あー、そういう条件があったんだ。それなら、聖女の隠し子を後継ぎにするなんて危険なギャンブルに王妃様が乗っかったのも、わからなくはないか。
「でも、だったらやっぱりリウィーデウス君は王様の子どもなんじゃないの?」
「そういうことになるかー。でも、なんか怪しいんだよなー」
なんて話をしていた時、聖神会では大変なことが起こっていた。
神学長のルーコラ様が、火事で亡くなったのだ。
私たちが王宮にいた同じ時間の聖神会では、不審火による火事が起こっていた。
火事の火元は、聖女様の寝室で、突然、火柱が起こったかと思えば、あっという間に聖女様の寝室周りを燃やし尽くして、鎮火した。
一瞬の業火で燃えてしまった寝室からは、重症を負った聖女様と、黒コゲになった神学長が見つかったのだった。
聖女様とルーコラ神学長がいた部屋は丸こげになったけど、なぜか聖女様が寝ていたベッドの周りだけ焼けなかったらしい。
周りが焼けても寝ていて目覚めなかった聖女様は、呼吸困難になって重傷だったものの一命をとりとめたが、ルコーラ様はお亡くなりになってしまった。
火事が起こる数時間前、私たちは聖女様に合って、秘密を守る代わりにリウィーデウス君を王妃様の養子にさせてほしいと相談したわけだけど。
話がついて聖神会を出ようとしたところで、ルーコラ神学長が声をかけてきた。
「勇者ヨーコ。リウィーデウスをお城に連れて行くということは、すべてを知ってしまったんですね」
「ということは、神学長様もご存じだったんですか」
と質問した私に、なにも答えず笑みを浮かべたルーコラ神学長は、
「今回のことで、シーラが聖女を継いでくれれば、この聖神会も生まれ変われるでしょう。
でも、いろいろありすぎて、あなたも大変な立場になりましたね。
……ヨーコ。あなたは、これからどうするのですか?」
「……異世界に戻る方法があるかもしれないので、それを探す旅に出ようかと思っています」
「そうですか。それなら、その旅にシーラを連れて行ってくれませんか。
シーラはとてもまじめないい子で、頭もよく光の力も強い。でも、この狭い聖神会の中だけの暮らしだけではなく、もっと広い世界のことを知ってほしいのです。私のようにならないために」
うん? 「私のようにならないため」ってどういう意味だろうと思いながらも、
「わかりました。シーラが望めば一緒に旅に出たいと思います」
と答えた。そして、
「そういう神学長様は大丈夫ですか? 王様が亡くなったり、王妃様と聖女様の関係が恐ろしいことになってたり。聖神会は大丈夫なんですか?」
と聞いたけど。
また私の質問への答えはないまま、
「……私は、なにもしてきませんでした。いまこそ私は、私の罪をつぐないます」
とだけ言って、聖女様のところへ戻っていったんだけど。
ひょっとして、ルーコラ様が寝所に火をつけたんだろうか?
私がなにか違う言葉をかけていれば、ルーコラ神学長を止めることができたのだろうか……。
いろいろあって、このままグンペーイ王国にいるのは微妙な立場になっちゃった。
灰になった魔導師が言っていた「あの方」のことが気になるものの、その正体は不明のままで、計画も失敗したみたいだし、気にしてもしょうがない。
いろいろあって、やっとお城で与えられた部屋で、ドンちゃんとシーラとくつろいだ時間を過ごす。さあ、お城の豪華な大浴場に入ろう!
ペンダント以外は、すべて脱ぎ捨てて、シーラとドンちゃんとお風呂を楽しむ。お風呂につかりながらドンちゃんに、
「ねー、そろそろ異世界に帰る方法を知っている人のことを教えてよー!」
とペンダントを握りしめて、聞くと。
『ああ、そんな話もあったな。
エルフなら、なにか知っている奴がいるかもしれない。エルフの長老、とくに数千年生きているものの中には、ドラゴンの一族でも知らない秘密を、神様から教えれていても不思議ではないからな。
といっても、私もそれほどのエルフには会ったことがないのだが』
あー、やっぱりエルフか。そんな気はしていたけど、エルフでも、とくに偉い人たちがいるのか。
「ねー、エルフの長老には『エルフの谷』ってところに行けば会えるの?」
と私が聞くと、
『まあ、いろいろなところにエルフの住処があるが、一番手っ取り早いのは、魔王の森の先にあるエルフの谷だろうな』
と答えてくれた。
じゃー、いろいろあってこの国にいるのも、気まずくなっちゃったし、ドンちゃんを連れて、エルフの谷に行ってみるかー、なんてお風呂につかりながら、考えたんだけど。
急に呼び出されて、二度と会うことはないと思っていた王妃様と新・王子様の前に、ひざまずくことになった。




