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第14話 再び魔王の森へ

 魔王の森に開いたゲートが閉まるまで、もうあまり時間がない。

 グンペーイ王国を出発して、魔王の森の入り口までたどり着き、そこに空中に丸く空いているゲートの前に行き着いた。


 ゲートは怪しげで魔物でも近づけなさそうな雰囲気を放っている。初めて見たゲートに完全にビビっている兵士たちを押しのけ、怖がっているシーラちゃんの手を掴んで引っ張ると、二人でゲートをくぐる。

 少しゾクゾクっとしたけど、無事にゲートをくぐり抜けて進むと……。

 いた、いたっ! ドラゴン、魔王様だ!

 巨大な姿だけど、どこかくたびれた様子で、ドラゴンが横長に寝そべっている。


 そこでペンダントを握りしめて、頭の中でドラゴンに話しかける。

『魔王様、魔王様! お約束通り「穢れなき乙女」を連れてきましたよ!

 この子には絶対ヘンなことしないでくださいよー。

 ヘンなことしたら、私が許しませんからねー!』

と呼びかけると、

『うるさいなぁ、今寝ているところだったのに』

と、寝起きで機嫌が悪そうな魔王様。

 いや! あなたが今日までに戻ってこいって言ったんじゃん!


 それで、初めて会う? ドラゴンを見ておびえているシーラちゃんに、

「大丈夫、何があっても私が守るから。

 私は『不死身のヨーコ』よ!」

と言って励ましながら、二人でドラゴンの前に進んだ。

 シーラちゃんも首にペンダントをかけているので、ギュッと握ってもらう。


 すると、巨大なドラゴンが、でかくて黒い腕をのろのろと突き出してきて、真ん中の指をこちらに向けてくる。

 こわっ!

『ヨーコ、私の指に触れるのだ』

と言うので、私がドラゴンの指先に触れると、ふっと急に体が軽くなった。

 なにか見えないオモリが取れたみたいな感じで、ずっと体に何かの負荷がかかっていたってことに気づかされる。


『これで、私とお前のつながりは解除された』

とドラゴンが言って、次にシーラちゃんに指を触るように指示する。

 おそるおそる、ドラゴンの指に手を乗せるシーラちゃん。

 すると、ビクっとなって、

「ヨーコ様、なんだか体が重くなりました(涙)」

「大丈夫!? シーラ!」

と言って、キッと私がドラゴンをにらみつけると、ドラゴンは、

『私とつながったことによる影響だ。じきに慣れる』

と言うと、シーラに向かってなにかを指示している様子だった。


 それで、シーラがドラゴンのま正面から距離を取って、その間に結構な空間ができたところで、ドラゴンが私に大きな手で「あっちに下がれ」と指示してきた。


 え! もうなにかが始まるの?

と思って、ペンダントを握りしめて、声をかける。

『魔王様、もう生まれ変わるんですか? いきなり過ぎない?』

『私の命はもう残り少ないのだ。

 どうも「ゲート」を開くために、残っている力を使いすぎてしまったようだ。

 思っていたより早く寿命が尽きてしまいそうで、すぐにでも生まれ変わらないと、もう寿命がもたない』

『え、ゲートを開くのって、そんな命を削るような、あぶないことだったの!?』

『もともと、人との交流が途絶えて、生きることにも飽きていたからな。

 生まれ変わらず、そのまま朽ち果ててしまってもいいかと思っていたのだ。

 だが、お前といっしょになって人々の中で数日暮らしてみて、人と交流を持つ楽しさを思い出した。私は、もう少し生きてみたくなった……』

とか、なんかエモいことを言い出したんだけど。


『ヨーコ、いまから生まれ変わりの儀式を行う!

 危険だから後ろに下がっていろ!

 シーラという聖女よ、私が闇の力を封じ込めるためのゲートを今、目の前に開ける!

 ゲートが開いたら、光の力で、この闇の力をまとった体の中から、私の神体を取り出すのだ!』

『取り出すって、どうすればいいのですか、魔王様!』

『答えはお前の中にある。

 お前は、ただただ私に祈りを捧げれば、それでよい!』

というと、ゆっくりと強大な手を右上にかざし、そして目の前の地面に指の爪を突き立てて巨大な円をぐるりと描き始める。

 すると……描かれた巨大な円のゲートになって、目の前の大きな穴が開いた!


 穴の中は、とても深い下にまで、深い深い闇が広がっているが、その奥底には、グツグツとなにかのどす黒い炎がゴーゴーと吹き上がっているようだ。

 深い穴の底にある炎から、熱い熱風が上にまで伝わってきた。アツっ!

 そして、魔王様が、大きな穴の向かい側に立っておびえているシーラに向かって、

『さあ聖女よ、祈るのだ。おびえずに己の秘めた力を解放するのだ。

 そして私を、この岩のように重い、偽りの体から解放してくれ!』

と叫ぶと!


 それまでおびえてた表情をしていたシーラだったけど、キッと引き締まった表情になり、ペンダントを両手で挟んで、ドラゴンに向かって祈りを捧げ始めた。

 すると! シーラの体が光りだし、その光がドラゴンに一直線に向かう。

 まっすぐに伸びた光は、ドラゴンの額に到達した!


 額の光が当たったところが、キラキラ反射している。すると、そこから光の玉のようなものが出てきた!

 光の玉が、空の上で光ったまま浮いていて、光の玉が抜けたドラゴンの体がゆっくりと前に倒れていく。そして、目の前の大きな穴の中にゆっくりと落ちていった……。

 そしてそのまま、奥底の黒い炎の中に巨大なドラゴンの体が落ちていき、その姿が見えなくなると、ゆっくりとゲートが閉じっていったのだった。


 えっ、これでおしまい? ドラゴンは死んじゃったの!?

 ハッとして「あっ、光の玉は!?」と思って上を見ると、光の玉がゆっくりと下に落ちてくる。

 そして、光の玉が小さくなって、何か別の形になっていき……。


 きゃーっ! 可愛い! ちっちゃなドラゴン!

 ドラゴンの赤ちゃんだ!

 この子がドラゴンの生まれ変わりってこと!!!?


『魔王様!? あなた、魔王様なの!』

と私が聞くと、

『いかにも。私が魔王だ。

 お前たちのおかげで、魔の力が溜まり、限界を迎えていた体を脱ぎ捨てて、こうやって生まれ変わることができたのだ』

とちっちゃなドラゴンが言うと、ドサっと倒れるシーラ。


「きゃー! シーラちゃん、大丈夫ー!?」

『大丈夫だ。

 光の力を使い果たして、疲れて眠っているだけだろう。すぐ目覚める』

『これってどういうこと? いったい何が起きたっていうの?』

と私が訪ねると、親切にドラゴンが教えてくれた。


『全ては神の理じゃ。

 光あるところには、必ず闇がある。

 この世界は、そうやってできている。そのように神が定めた。

 そのバランスが崩れると、世界が崩壊してしまう。

 ……この世界の光と闇のバランスをとるために、神が私を生み出した。

 私は、バランスを崩そうとする闇の力を、体内に収めることができるのだ。

 闇の一族が、この世界を闇の力で覆いつくそうとしたとき、私自身が闇の力を吸って、その拡大を長年抑えてきたのだ。

 だが、千年も経つと限界を迎えるので、こうやって聖女の力を借りてリセットを行い、元の体以外の闇の力をすべて引き剥がして、この土地の地下はるか奥深くに存在する、地獄の業火の中につき落として、浄化するのだ!』

と、偉そーに教えてくれた。


「えーっと、簡単に言うと。

 魔王様は闇の力の掃除機で、聖女がゴミ入れを取り替える掃除係ってこと?」

『ちーがーうー! 神聖な儀式を部屋の掃除なんかと一緒にするな!』

「だって、そーじゃん!」

と私は言うと、ムッとした表情で、ちっちゃくなった体で、指を突き出してきた。

『ヨーコ、指を出せ』

「えーまた?」

といやいやながら、ドラゴンと私の指をくっつける。


 そうしたら、

『よし、これで私とお前は、またつながった。

 生まれ変わったばかりのドラゴンは無力なんだ。

 私が一人で自分の身を守れるようになるまで、お前が私を守るのだ!』

 えー、なにそれ、先に言ってよ!

『私とお前はこれで一蓮托生!

 私が死んだらお前も死ぬから、しっかりと守れよ!』


 はぁ! ふざけるな!

 そんな話、聞いてないんだけど!!!

 なんて怒りに震える私を無視して、話がどんどん進んでいく。


 それまで軍勢を率いて、こちらの様子を見ていたドレイクとリンターロ、アーテナたちが恐る恐る近づいてきて、私に話しかけてきた。

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