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贖罪の重さ

過ちは、消えない。


時間が経っても、

言葉を尽くしても、

なかったことにはならない。


それでも人は、生きていくしかない。


背負ったまま。


逃げることも、忘れることもできないまま。


許されるためではない。


ただ、自分が何をしたのかを知るために。


そして、その先でどう在るべきかを選ぶために。


これは、赦しを求めない選択の物語。

(ヤーグ)


Bクラスの教室は静かだった。蛍光灯の低い唸り声だけが、歴史の先生の単調な声に伴う唯一の音だった。オレは一言も聞いちゃいなかった。硬く、遠い視線は窓の向こう、秋の始まりの鉛色の空に突き刺さっていたが、見えていたのは雲じゃない。目だ。大きくて、澄んでいて、普段は臆病な……完璧で拷問的な記憶の一瞬で、絶対的な憎悪と絶望的な狂気の井戸に変わったあの目。


エンマの目。背筋を這い上がる悪寒があまりにもリアルで、震えたい衝動を抑えなきゃならなかった。机の下で拳を握りしめ、ざらついた手のひらに固い皮膚を感じた。もうただ殴ることしか知らない不良の手じゃない。訓練して、汗を流して、不器用にも何か役に立つものに変えようとした手だ。少しでもマシなものに。


脱獄できない独房みたいなオレの頭は、錆びたナイフの残酷さで過去を何度も繰り返す。


* * *


あのデバイス。エイリアンか何かの不気味な技術の塊が、呪いをおもちゃに偽装してオレの手に落ちてきた。最初は信じられなかった。次に、病的な好奇心。初めて使ったとき――食堂でいつも笑ってた一年の女子に――黒魔術を目撃したみたいだった。視線の変化、オレに向けられた笑顔、作られた好意……一瞬、安っぽくて気持ち悪い神になった気分だった。すぐにやめた。記憶から痕跡を消した。簡単だった。簡単すぎた。


二回目は退屈しのぎだった。もうあの力の高揚感は感じなかった。ただ空っぽな虚無と、自分への軽蔑が増すだけ。でも一つ、焼けつくような疑問があった――アイツにも効くのか? エンマに。


初めて見たのは去年の入学式だった。オレは既に喧嘩とアカデミーの馬鹿げた階級制度に慣れきっていて、退屈して新入生の顔を眺めてた。そこにアイツがいた。一番目立つわけでも、一番大声で笑うわけでもなかった。静かな存在で、古めかしい穏やかな悲しみが目にあって、注目を求めないのに引きつける繊細な美しさがあった。まるで磁器人形みたいに。


胸の奥で何かが締め付けられた。当時は名前をつけられなかった。執着? 歪んだ愛情の一種? 他の馬鹿な男どもが見せる崇拝とは全然違う、所有欲的で緊急な感情だった。オレはアイツを崇めたくなんかなかった。オレは……持ちたかった。あの悲しげな視線をオレだけに向けさせたかった。


だから、デバイスが道具をくれたとき、使った。


エンマには違った。満足感なんてなかった。ただ絶え間ない不安だけ。一緒にいるすべての瞬間、オレに向けられるアイツの笑顔、優しい言葉のすべてが、偽物だと知っている苦い認識で染まっていた。美しいクリスタルの花瓶を持っているようなものだった――いつか粉々になって手を切り裂くと分かっていながら。


オレはデバイスを憎み始めた。自分を憎み始めた。でも手放すには臆病すぎた。アイツを傍に置いておける唯一のものだったから。


そして全てが地獄に堕ちた。


エンマの余計なお節介な友達、ウェンディとかいう奴が嗅ぎ回り始めた。次に前生徒会長の使者が現れた――アレンとかいう名前だったか――そしてアイツと一緒に、当時の生徒会長、銀太郎の長く恐ろしい影が。オレは初めて絶対的な恐怖の味を知った。自分のためじゃない。真実が発覚したらエンマに何をするかもしれないという恐怖だった。


そして、先輩を見る屈辱。キバ――オレが粗野な忠誠を捧げていたタフガイ――があっさり負けるのを見て、オレの世界のギャングごっこと校庭の階級制度が全部茶番だったって暴かれた。キバ先輩は強くなんかなかった。危険なふりをして遊んでる迷子のガキだった。


でも本当に血を凍らせる記憶、毎晩やってくる記憶は……最後だ。


生徒会長に追い詰められて、エンマが現れたとき。記憶を取り戻したエンマ、作られた時間と現実が頭の中で衝突して……エンマを見た。包丁を持って、振り上げて。演技じゃなかった。アイツの目には、ヒステリーじゃなく、冷たく、明確で、殺意に満ちた決意があった。


アイツはオレを殺したかった。殺すつもりだった。


その瞬間、オレは怒りも感じなかった。自分の命への恐怖さえも。深く恐ろしい認識を感じた――オレはそれに値する、と。


……その瞬間が全てを変えた。何かが内側で砕け散って、新しいヤーグが現れたんじゃない。古いヤーグの瓦礫が現れた。


それ以来、人生は逃亡だった。アイツが通ると分かってる廊下を避け、いるかもしれない中庭を避けた。遠くでアイツを見かけると――制服の一瞬の閃光――胃が氷の塊になった。あの殺意の目の映像が、臆病な女子の映像を永遠に置き換えた。


最悪なのは、理解できたことだ。完璧に理解できた。


オレは馬鹿じゃない。理由があってBクラスにいる。脳みそが、テストステロンと虚勢で曇ってないときは、点と点を繋げられる。デバイスは影響を消したけど、記憶は残した。エンマはすべての散歩、すべての告白、すべての触れ合い、すべての「愛」の感情を覚えてる……でも今は、全部が気持ち悪い他人に書かれた台本だったと知ってる。


精神的に、感情的にレイプされたと感じてるはずだ。怒り、嫌悪、汚染源を消したいという欲望……論理的だ。正当だ。


謝罪……謝罪なんてそれに対して何だ? 「ごめん」で汚れた感覚が消えるのか、自分の心を乗っ取られたトラウマが消えるのか? 消えない。今も、これからも。


言葉なんて安っぽい真鍮だ。重さも価値もない。


じゃあ、なぜこの重み、この罪悪感と苛立ちの塊が成長し続けるんだ? 卒業が近いから、潜在意識が綺麗な記録を望んでるのか? 持ってると知らなかった良心が、何年もの昏睡から目覚めてるのか?


* * *


椅子の上でもがいた。苛立って。腹の中の嵐を静める知的な答えが見つからなかった。ただ分かるのは、気になる、焼けつく、普通に息ができない、ということだけ。そしてその不快感の中心に、頑固な金槌打ちみたいに繰り返される解決策があった――エンマと話すこと。


でも恐怖の方が強かった。


日が経つにつれ、オレと世界の間に置いた距離は、残された唯一の柱にさえ目に見えるようになった。


「なあ、ヤーグ」とある午後、ネルズが呟いた。オレたち三人――オレ、ネルズ、タダ――が裏庭を歩いてた。人混みから離れて。


「死人より静かだぞ。猫に舌でも食われたか?」


タダは、もっと観察力があって、横目でオレを見た。


「エーテリアルの件と、あのめちゃくちゃ以来……変だぜ、兄弟。この前、Dクラスの馬鹿どもと喧嘩する気にもならなかっただろ」


オレは肩をすくめた。昔の挑戦的なジェスチャーの小さいバージョン。


「何もねえよ。ただ考えてるだけだ」


「考えてる?」


ネルズが信じられないって笑いを漏らした。


「お前が!? それは新しいな!」


友達同士の冗談のつもりのコメントが、汚い水のバケツみたいにオレに降りかかった。それがいつもアイツらにとってのオレだ。筋肉、拳、騒動。決して頭じゃない。決して中に重いものを持ってる奴じゃない。


頷いただけで、アイツらから離れた。困惑と心配の視線を交わす友達を残して、見てないふりをした。孤立してることを否定する方が、生きてる地獄を説明するより簡単だった。


歩きながら……


遭遇は、ほとんど滑稽なほど残酷な偶然だった。自分の罪悪感の迷路に迷い込んで、一階に続く横の階段を下りてた。踊り場で曲がると、そこに、上ってくる彼女がいた。


エンマ。


世界が止まった。音が消えた。残ったのは視線の交差だけ。


彼女の中で、連続は瞬時で壊滅的だった――驚き、認識、そして純粋な憎悪の波があまりに純粋で、廊下を暗くするかのようだった。


オレの中では、驚き、そして古くて馴染みのある恐怖。血を凍らせて、カッターナイフの刃を思い出させる恐怖。


エンマは叫ばなかった。喉の奥から獣のような唸り声を発して、飛びかかってきた。小さくて握りしめられた拳が、オレの顔に向かって飛んできた。


オレの体は頭より先に反応した。何年もの路上喧嘩と数ヶ月の系統的な訓練が制御を取った。最小限の頭の動きでパンチをかわした。エンマの拳が耳の横を唸りながら通り過ぎた。


彼女は自分の攻撃の力でバランスを崩して、また試した。下手なフックを。オレは簡単に手首を掴んで、パンチを止めた。力は使わなかった。ただ堅さだけ。


エンマの顔の苛立ちは地獄絵図だった。無駄に抵抗した。その目、かつてオレのために輝くのを見たいと願ったあの目が、今は毒を吐いていた。


「離して! クズ! 化け物!」


オレはすぐに離した。まるで彼女の肌が火傷するかのように。エンマは後ずさって、息を切らし、オレが触った手首を身体的な嫌悪感で見つめた。


他に何も言わず、振り返って階段を駆け上がった。足音が鞭打ちのように響いた。


オレはそこに立ち尽くした。心臓が肋骨を叩いていた。かわしたことで勝利を感じなかった。気づかずに蝶を潰した愚かな巨人みたいに感じた。身体的優位性は道徳的卑劣さを強調するだけだった。


彼女はオレに触れることさえできなかった。オレはそれさえ奪った――満足のいく復讐の可能性を。


その夜、以前の人生の記憶が残酷な明瞭さで襲ってきた。


* * *


中学時代。小さなギャング団を作って、街灯を壊して、先生に反抗して、ゴミの山の王様気取り。アカデミーに来て、Cクラスのアルムとかいう奴との喧嘩……意味のない喧嘩、誰がタフか証明するためだけ。そしてネルズとタダを見つけて、それからキバ先輩を。ついに部族ができた。居場所が。完全になった気がした。そう思ってた。


今までやってきたことは全部……ただの間違いなのか? 間違いを犯さない方法を知らないのか? オレの運命は……ただ間違いを犯すことなのか?


* * *


今、自分で掘った奈落の反対側から見ると、甘やかされたガキしか見えなかった。注意を引くため、誰なのか何の価値があるのか分からない空虚を隠すために、騒がしいおもちゃとして暴力を使うガキ。虚勢、不良の態度は強さじゃなかった。石に見える段ボールの仮面だった。そしてオレはそれを信じた。


自分への嫌悪があまりに強烈で、立ち上がって部屋を歩き回らなきゃならなかった。檻の中の動物みたいに。


翌日、教室の窓から、アイツを見た。エンマはひとりで中庭にいた。ほとんど枯れた木の下のベンチに座って、虚空を見つめていた。その光景が胃へのパンチの力でオレを打った。


彼女を取り巻く孤独は偶然じゃなかった。オレがアイツの周りに作った砂漠の領土だった。オレはその孤立の建築家だった。彼女を友達から、自分の心の平和から、そして今、校庭で普通だと感じる単純な慰めから隔離した。


罪悪感はもう概念じゃなかった。物理的な重み、鉛の荷物が肩に、胸に、すべての筋肉に住み着いた。エンマだけへの罪悪感じゃなかった。記憶で遊んだ他の女子たちへの。脅して、威嚇して、劣等感を感じさせたすべての人への。何年も、他人にとって恐怖と悲惨の源だったことへの。


机の上でわずかに折れ曲がった。まるで認識が物理的に傷つけたかのように。


行き詰まってると分かってた。エンマへの混乱した感情はもう関係なかった。今オレを動かしてるのはもっと原始的で緊急なもの――この圧力、オレを押しつぶしてるこの重みを和らげる必要があった。贖罪が必要だった。他人の目の前で自分を救うためじゃない――それは不可能だ――内側の火を通って、少しでも中に運んでるゴミを燃やすため。


* * *


「謝罪」は予測可能で必要な災害だった。午後の空っぽの廊下で彼女に近づいた。


「エンマ。聞いてくれ」


彼女は氷の彫像みたいに硬直した。


「お前みたいなクズと話すことなんてないわ」


「分かってる。そして……許しを求めるつもりはない」


言葉が不器用に、重く出てきた。


「何の役にも立たないって分かってる。でも……言わなきゃならないことがある。オレのせいだ。全部。オレはクズだ。分かってる」


「それで私が気分良くなるとでも思ってるの?」


彼女の声は氷の刃だった。


「認めれば? それで全部消えるの?」


「消えねえ!」


オレは爆発した。自分の不器用さに苛立って。


「何も消えねえ! でもオレのせいでお前があんな風になってて、何もしないでいられねえんだ!」


「で、何するつもり、ヤーグ・ゴミクズ?」


オレの名前を冒涜みたいに吐き出した。


「またデバイス使ってわたしに忘れさせるの? それとも血を流すまで自分を殴って、わたしに哀れんでもらうの? お前の罪悪感なんていらない! お前のドラマもいらない! 消えてほしいだけ!」


すべての言葉が金槌だった。正しかった。完全に正しかった。気分を良くするためにオレが取るどんな行動も、結局は自己中心的だ。アイツを自分のプロセスの一部にする、もう一つの方法。オレの安らぎに焦点を当てて、アイツの痛みにじゃない。


その啓示、苦くて明確な啓示が、ついにオレの頭の中でカチッと音を立てた。贖罪は彼女のためにすることじゃない。彼女の許しや平和を得るためじゃない。贖罪は彼女にも関わらずすることだった。結果を引き受けて、重みを背負って、将来二度と誰かのその痛みの源にならないように進路を変えることだった。


それは傷つけた他の人たちも含む。


啓示の瞬間は劇的じゃなかった。静かで冷たかった。独房の閉まる音みたいに。


できる、感情を超えて本物の重みを持つ二つのことがあった。


* * *


部屋で、その二つのことを考えた。


一つ目は――学園長のところに行って、デバイスについて知ってることを全部告白すること。なぜこれをするのか? 理由は、去年、銀太郎がオレたちの環境を崩壊させてデバイスを持っていったとき……驚いたことに、説教しただけで説明を求めなかった。真実を知るために何もしなかった。少なくともオレが知ってた真実を。


なぜ銀太郎がそうしたのか理解できないけど、今まで誰もデバイスの真実を知らない。誰もあれが何なのか理解してない。オレも分からないけど、少なくとも何に使えて、何に使ったかは知ってる。


学園長のところに行くことで、オレは懲戒処分に、非難に、何にでも身を委ねる。許されるためじゃない。それが真実で、真実はついに明るみに出るべきだから。たとえその光がオレを焼き尽くしても。


二つ目――ネルズとタダを引きずり込む。アイツらは共犯だった。デバイスはあまり使わなかったかもしれないけど、嫌がらせ、脅迫、オレたちが育てたクソみたいな文化には参加してた。すべてが過去のことだと思って卒業させるわけにはいかなかった。アイツらも向き合わなきゃならない。本当に友達なら、ついてくる。そうじゃなかったら……それも結果だ。


* * *


寮の部屋で、ドアを閉めて、アイツらに計画を明かしたとき、沈黙は濃厚だった。


「完全に……狂ったのか、ヤーグ?」


ネルズが青ざめて呟いた。


「告白しに行く? 学園長に? 退学になるぞ!」


「かもな」


奇妙に落ち着いた声で言った。


「でもそれが現実だ。オレがやった。お前らはそこにいて、拍手して、時々汚い仕事をしてた。隠れてても解決しねえ」


タダはオレをじっと見つめて、いつもの虚勢野郎を探した。見つからなかった。もっと年を取って、疲れて、違う意味で硬い誰かを見つけた。


「クソ」


ネルズが髪に手を通して息を吐いた。


「クソ、クソ、クソ。もし……もしお前だけが行ったら?」


「ダメだ」


シンプルな答えだった。


「みんなで行くか、行かないか。でも行かないなら、もう何でもない。何も理解してないってことだから」


感情的な脅迫だ。でもそれが、結局、オレたちが理解する唯一の言語だった。


恐怖と憤り、そして最終的にネルズを腐食させてる罪悪感の火花を帯びた長い議論の後、頷いた。渋々、怯えながら、でも頷いた。


ネルズは今、オレを見つめていた。アイツなりに処理してる。


「急に何があったんだよ、ヤーグ?」


「……」


「もしかして……罪悪感を感じてるのか?」


「分からねえ……感情がめちゃくちゃで、ただ引き裂きたいだけだ」


* * *


プロセスは屈辱的で、冷たく、官僚的だった。古橋学園長は不可解な表情でオレたちの話を聞いて、メモを取った。カウンセリングとの面談、両親への電話、密かな調査があった。退学はなかったけど、汚名、記録の汚点、そしてセラピーセッションと社会奉仕活動の義務があった。


噂は、もちろん、漏れた。『強力なヤーグ』とその手下たち、拳じゃなく自分の告白で倒された。多くの人にとって、今年の笑い話だった。


オレはすべてに耐えた。重みを背負った。廊下でのすべての軽蔑の視線、すべての囁きは、荷物にもう一粒の砂だったけど、もう同じようには燃えなかった。それが代償だった。実行中の贖罪、遅くて、灰色で、栄光のない。


エンマとは何も解決しなかった。彼女は相変わらず疫病神みたいにオレを避けてて、オレももう近づこうとしなかった。混沌の海に小さな責任の島を築いたけど、彼女のいる海岸はまだ届かない。


* * *


ある午後、奉仕活動の一環として図書館の掃除セッションの後、寮に戻る途中、ひとりで歩いてると、また彼女に出会った。今回は偶然じゃなかった。彼女は道の真ん中に立ち塞がってた。まるでオレを待ってたかのように。


オレは数メートル離れて立ち止まった。必要なら引き返す準備はできてた。


エンマは怒ってるようには見えなかった。疲れ果てているように見えた。空っぽ。オレを見て、あの日、屋上以来初めて、純粋な憎悪が目になかった。巨大な疲労があった。そして何か別のもの――苦い好奇心。


「みんな話してるわ」


アイツは平坦な声で言った。


「お前の大告白のこと。自分を罰してること」


何も言わなかった。ただ一度頷いた。


「なぜ?」と聞いた。叫びじゃなかった。本物の質問だった。懐疑心に満ちてたけど。


「何のため? 良心を清めるため?」


オレは息を吸った。


「違う。良心は清まらねえ。やったのは……真実だからだ。そして真実は、痛くても、そこにあるべきだ。お前が、もし必要なら、指差して『これが起きた』って言えるように。そしてオレが決して、決して、起きなかったふりができないように」


エンマは永遠に思える時間、オレを見つめた。秋の風が髪を揺らした。その目の中で、永遠の氷の何かが割れたように見えた。溶けるためじゃなく、下の凍った複雑な深さを明らかにするために。


「許さないわ」とついに言った。言葉は事実であって、攻撃じゃなかった。


「分かってる」とオレは答えた。


「友達にもなりたくない。知り合いにさえ」


「分かってる」


彼女は一瞬止まった。「でも……この会話。終わりじゃない」


質問じゃなかった。奇妙で曖昧さに満ちた宣言だった。和解も、平和さえも約束してなかった。ただ何か、緊張の線、共有された痛い現実の糸が、オレたちの間にまだ存在してることを認めた。そして、たぶん、いつか、不確定な未来に、それを引っ張らざるを得なくなるかもしれない、と。


もう一度頷いた。これ以上言うことはなかった。


エンマはもう一秒視線を保って、それから振り返って去った。黄昏の道に消えていった。


オレはそこに立って、夕方の寒さを肌に感じた。肩の重みは消えてなかった。たぶん永遠に消えない。でももう、隠された罪悪感と臆病さの窒息する重みじゃなかった。違う重み、もっと重いかもしれないけど、清潔な。引き受けた責任の重み。子供じゃなく、男の重み。


贖罪はなかった。ハッピーエンドもなかった。ただ、人生で初めて、誠実さに遠く似た何かがあった。そして、たぶん、自分で築いた地獄以外の何かへの、長く静かな道のかすかな始まり。

次回――


残された謎。


すべてが終わったわけではない。


見えていなかったもの。

繋がっていなかった点。


それらが、静かに浮かび上がってくる。


一つの出来事の裏にあった、別の意図。


交わらなかったはずの線。


そして――消された記憶。


それは偶然ではない。


意図的に隠された“何か”。


誰が、何のために。


答えはまだ遠い。


だが、それでも追い続ける者がいる。


これは終わりではない。


新たな謎の始まりだ。

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