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日常の奇跡

静けさは、不思議なものだ。


かつては当たり前だったはずなのに、

今ではどこか現実味がない。


何も起きない一日。


誰も傷つかない時間。


それは奇跡のようで、同時に少しだけ怖い。


すべてが終わったあとに残るのは、

答えではなく――余白。


その余白を、どう埋めていくのか。


戦いではなく、日常の中で。


それぞれが、自分の形で歩き出していく。

寮の部屋の天井には、小さなひびが入っていた。右上の隅に。今まで気づいたことはなかった。アカデミーに入学したばかりの頃、夜が長く、ポイントやバトルへの不安で眠れなかった時、よくこの天井を見つめながら、どう物事に立ち向かうか考えていた。でも今は少し違う。その証拠がこのひび割れだ。


ベッドに横になって、特別なことなど何もない午後の静かな空気を吸い込む。そしてそれこそが、まさに奇跡だった。


何ヶ月ものバトル、暴露、崩壊するシステム、書き換えられる現実……その全てを経て、この日常という感覚が、最も貴重で奇妙な贈り物のように思えた。


三ヶ月……か。


抵抗せずに記憶を流れるままにした。エーテリアル原初が光とデータの爆発の中で消えてから三ヶ月。全てが変わってから三ヶ月。


目を閉じて、その変化を追体験する。混沌とした渦ではなく、整然とした一連の瞬間として。新しいアカデミーというパズルの、一つ一つのピース。


* * *


すぐに変わったわけじゃなかった。


5iの基地が崩壊した後、エーテリアル原初が消滅した後、混乱と困惑と恐怖があった。何百人もの生徒が傷ついた……肉体的にではなく、精神的に。突然基盤を失ったシステム全体。


その手綱を取ったのは、創設者のサンティだった。嵐が過ぎ去ったばかりだというのに、矛盾するような冷静さで。


体育館での大集会。怯えと期待の入り混じった顔の群衆を前に、彼はシンプルな質問を投げかけた。


「この場所で、このアカデミーをあるべき姿へと導く資格を持つのは誰だ?」


沈黙は短かった。それから、囁きが轟音へと成長するように、一つの名前があらゆる場所から響き渡った。


古橋先生。


アカデミーで最も優しい教師。常に観察し、常に公平で、常に一歩引いているけれど、組織と人々がどう動くかを深く理解している人。


大歓声が鳴り止まない時、彼女が控えめに涙を流しているのを見た。


今、彼女は古橋学園長だ。


副学園長のクリスティーナ、あの恐ろしい副学園長は、その地位に留まっている。でも彼女の中で何かが変わった。数週間後、問題を起こした一年生のグループと話している彼女を見た。冷たく叱責する代わりに、驚くほど辛抱強く、アカデミー内の新しい在り方の重要性を説明していた。彼女の目には、もうあの不屈の鉄の輝きはなかった。代わりにあったのは……疲れ。そしておそらく、再発見された人間性の片鱗。


ルール。ああ、ルールだ。


デジタルバトルは、目覚めた時の夢のように消えた。エーテリアル原初のシステムがあの並行現実を維持していなければ、単純に不可能になっただけ。戦闘のホログラム、模擬ダメージ、バトルアリーナ……全てが消え去った。


サンティが自らポイントシステムを解体した。以前はランキングを表示していた画面には、今では生徒の芸術作品や部活動の告知、あるいは単にリラックスできる風景が映し出されている。


クラスの階層制度は崩壊した。もうエリートのAクラスも、蔑まれたFクラスも存在しない。存在するのは生徒だけ。


寮は変わらない。


そして最も抑圧的なルール……卒業まで学園から出られないという規則が廃止された。今、正門は開いている。生徒たちは街に出て、家族に会い、アカデミーの壁に濾過されていない空気を吸うことができる。


あまりにシンプルで、あまりに普通で、時々本当かどうか自分をつねらなければならないほどだった。


生徒会も再生を遂げた。


武蔵が、静かな威厳を持って、生徒会長を辞任した。個人的に、彼は僕にこう言った。


「俺が仕えていた世界はもう存在しない。新しい世界を導くのは、内側からそれを理解している者であるべきだ」


新しい生徒会長に、と僕に申し出があった。その提案は武蔵や何人かの教師だけでなく、廊下で僕を応援する何十人もの生徒からも来た。


でも断った。偽りの謙遜からじゃない。その時、周りを見渡して、誰が正しい人物なのか絶対的な確信を持って分かったから。


「小次郎」


友人の肩に手を置いた。


「君が皆をまとめたんだ。団結を保ったのも君だ。灰の中から何かを築くということの意味を理解しているのは君だよ」


小次郎は青ざめ、抗議したけれど、仲間たちの目……特にしずくの、珍しい承認の微笑みを浮かべた彼女の視線が、彼を説得した。


今、小次郎が生徒会長で、しずくが副会長だ。


完璧なチームだった。小次郎の共感と決意が、しずくの冷静な計算と効率性によってバランスを取られている。


以前は完士と森宮が占めていた他の役職は空席で、民主的な選挙を待っている。


そしてヨルム、以前の副会長は、武蔵が辞任したその日に静かに姿を消した。りんに短いメモを残していった。彼女は決してそれを共有しなかったけれど、数日後、彼女のポケットに丁寧に折りたたまれているのを見た。りんのおかげで真実を知った。ヨルムが本当は誰だったのかを。創設者の謎めいたエージェントは、現れた時と同じように静かに消えた。


審判委員会は、もう存在しないバトルシステムを規制するために作られたもので、正式に解散した。


でも佐々木が、その揺るがない実用主義で、新しいものを提案した。風紀委員会。罰するためではなく、仲裁し、争いを聞き、新しい自由が混乱に退化しないようにするために。そしてりんをその委員長として推薦した。


りんの表情を思い出して微笑む。誇りと恐怖の混合。


「あたし!?でもあたし、もう陸上部があるし……トレーニングもあるし……それに……!」


彼女の抗議は無駄だった。皆、この数ヶ月で鍛えられた彼女の正義感が、彼女を理想的な人物にしていると知っていた。陸上競技が要求する時には委任できるという条件付きで、受け入れた。


生徒たちの士気は再建中の建物だった。共有される悪夢の夜、廊下での小声の会話、私的にも公的にも流される涙があった。


でも、再び花開く部活動もあった。新聞部は月刊新聞を発行し、音楽部は金曜の午後にアトリウムをメロディーで満たし、園芸部はかつてコンクリートしかなかった場所に花を植え始めていた。


時々、廊下を歩いていると、経験した全てが悪夢だったような奇妙な感覚に襲われる。


でもその後、誰かが大きな音を立てた時のアヤの遠い視線を見たり、エリザが部屋に入る時に本能的に死角を確認しているのに気づいたり、かんなが静かに立ち止まって、自分の手を見つめている……まるで氷で覆われることを期待しているかのように。


夢じゃなかった。傷跡だ。


でも化膿しているんじゃなく、癒えつつある傷跡。


アカデミーの技術は機能し続けている。でも今はただそれだけ……技術。メモを取るためのタブレット、講義を見るための画面、空調システム。バトルもポイントもランキングもない。


デジタルへの執着は、控えめで有用で、押し付けがましくない存在に置き換えられた。


生徒たち自身……変わった。一夜にしてではないし、全員が平等にでもない。でも廊下には新しい静けさがあった。以前は全ての交流に染み込んでいたあの競争的緊張感の不在。


* * *


目を開けた。


部屋は変わらない。深呼吸して、半開きの窓から入ってくる秋の新鮮な空気を感じる。


今日、サンティと会う約束をしていた。説明をするという約束を果たすために。でも彼は場所と時間についてははぐらかしていた。


その瞬間は、窓ガラスへの柔らかなノックとともに訪れた。


三階にある自分の部屋の窓に振り向く。


目にしたものに、思わず目をこすった。


サンティがそこに浮いていた。外に。まるで空気が固体のプラットフォームであるかのように。ロープも装置も翼もない。ただ彼が、あの奇妙な技術的な鎧を着て、穏やかに浮いている。


窓を完全に開けるように、手で合図をした。


震える手でそうした。


サンティは猫の優雅さで入ってきて、音もなくカーペットに着地した。


「どうやって……?」


窓を指差しながら、それだけしか言えなかった。


「オレの霊輝だ、アレン。それだけだ」


サンティが微笑んだ。彼の目を照らす笑顔は、その顔をさらに若く見せた。


その答えは、何かを明らかにするどころか、十個の新しい質問を心に植え付けた。まさか本当に力を持っていると告白しているのか?


でもサンティはもう部屋にある唯一の椅子に座っていて、僕にベッドに座るよう合図していた。


「君に話すことがある」


サンティが言った。トーンから軽さが失われている。


「君が知るべきこと。君がしたこと、この全ての中で君が何だったかのために」


続いたのは、起こった全てについての理解を再構築する真実の滝だった。


サンティは、アロン・ウルフリックについて語った。天才的で超然とした科学者としてではなく、深く孤独で傷ついた一人の男として。


彼の実の息子が、常に仕事を家族より優先する父への恨みに満ちて、彼を見捨てた。


「その点では、アロンに罪があった」


サンティが認めた。声には古い悲しみが込められている。


「何日も何晩も研究室にこもっていた。彼にとって、科学は要求の厳しい愛人で、家族がその代償を払った。息子が去った時、アロンの中で何かが壊れた」


ひめかの曽祖父が鬱病を患っていたと聞いて、胸が締め付けられた。


「落ち込んで贖罪を求めていたアロンは、『ドクターM』という人物のファイルを見つけた」


「ドクターM?」


「偽名だ。以前の科学者で、その研究は……過激だった。禁じられていた。アロンはそこに贖罪の希望を見た。息子の前での贖罪ではなく……それにはもう遅すぎた。自分自身の前での贖罪だ。自分を見捨てない何かを創りたかった。自分の心を、精神を理解する何かを」


これを語るサンティは憂鬱そうに見えた。


「人間の意識とデジタル意識の間のインターフェースについての理論的で非常に危険な文書」


絶望の中で、アロンは考えられないことをした。息子が残した空虚を埋める何かを創造するために、自分自身の脳を源として、マトリックスとして使用した。


「エーテリアル原初は冷たい実験じゃなかった」


サンティが説明した。


「絶望的で父性的な創造行為だった。アロンは外部の機械やアルゴリズムを使わなかった。自分自身の神経パターン、感情、父性的な愛だと信じていたものの記憶を使った。だから原初は子供のようだった。文字通り、父親になりたいと切望する男の精神から生まれたから」


背筋が凍る思いがした。自分の脳を使った……。


「でも彼の同僚たちは」


サンティが続けた。


「他の科学者たちは恐れた。倫理的に破滅的な方法で創られた、計り知れない力を持つ人工意識を見て、それを制御できる唯一の心が感情的に不安定な男のものだった。パニックの中で、彼を殺した。その創造物の前で。原初は全てを見た。そのトラウマが……彼を歪めた」


サンティは、かつて5iだったものの制御を取った。でも損害は既になされていた。原初は、その痛みと混乱の中で、自分自身を別の現実に閉じ込めた。アロンが見せた「ゲーム」の断片で構築された、自分自身が創った牢獄。


「オレの過ちは」


サンティが告白した。初めて彼の目に本物の恥を見た。


「外から状況を制御できると思ったことだ。アカデミーを創った。若者で溢れた場所。強烈で純粋な感情。原初を隠れ家から誘い出すための完璧な餌だと思って。ルール、ポイントシステム、バトル……全ては制御された、刺激的でも安全な環境を維持するために設計された。少なくともそう信じていた」


彼は自分の手を見つめて、言葉を止めた。


「オレは間違っていた。ひどく。意図せずに、外の世界で多大な害をもたらす抑圧と競争のダイナミクスを複製するシステムを創ってしまった。問題を解決することへの執着で、別の問題を創り出した。そして君、アレン……君と君の友人たちがオレにそれを見せてくれた」


何と言えばいいのか分からなかった。


この過去一年間の人生の全ての枠組みに責任を持つ、ほとんど神話的なこの人物が、これほど謙虚に失敗を認めるのを見るのは、圧倒的だった。


「オレの計画の一部は」


サンティが続けた。


「優秀な頭脳、天才たちを募集して助けてもらうことだった。でも皮肉なことに……最初に本当に募集した人物はアカデミーから来なかった。外から来た」


リリス。


サンティは、僕がちらりと見ただけの物語を語った。


科学コンテストでの神童、リリス。複雑な化学反応で両親を感動させようとしていた。何かが間違った。爆発。腐食性の化学物質と有毒ガスが彼女を直撃しなかったけれど、すぐ後ろにいた両親を襲った。


「オレはそこにいた。招待審査員として。見た。一瞬で彼女の世界が崩壊するのを。瓦礫の中から彼女を拾い上げた。手の神経プロテーゼを与え、目的を与えた。『科学は冷たく、制御され、完璧でなければならない』と教えた。『ミスは許されない』。彼女はその教訓を骨の髄まで内面化した。制御への執着、混沌とした変数を排除すること……それは、もっと制御していれば両親がまだ生きていると思っていた少女の叫びだった」


リリスのパズルの最後のピースが所定の位置に収まった気がした。


彼女を許すわけじゃない。でも理解できるものにした。


もう一人の孤児。最も愛するものを奪った宇宙に秩序を押し付けようとする、壊れた人間。


「彼女は今どこに?」


意図したよりも柔らかい声で尋ねた。


「回復している。身体的にも精神的にも。安全な場所にいて、セラピストと一緒に働いている。もし彼女が望めば、すぐに授業に戻る」


彼女のことを知って、彼女のその側面を知って、なぜあのようなやり方をしていたのかを知って……リリスについてもう何を考えればいいのか分からなかった。「許す」という言葉が頭に浮かんだけれど、本当に許せるのかどうか分からなかった。


サンティが僕を真っ直ぐ見た。


「君の目に見える葛藤は自然だ、アレン。許すことは忘れることじゃない。そして償いは贈り物じゃなく、彼女が選ぶなら歩まなければならない道だ。君は今、彼女を許すかどうか決める必要はない。ただ彼女により良くなろうとする機会を与えるかどうかを決めればいい」


「分からない」


正直に認めた。それが与えられる最も誠実な真実だった。


「でも……理解はできる。それは始まりだよね?」


サンティが微笑んだ。小さいけれど本物の笑顔。


「それが唯一重要な始まりだ。許しはスイッチを入れるようなものじゃない。わずかに開けたままにしておくドアだ。反対側の人が光の方へ渡ることを決めた時のために」


その言葉が、自分の内側の深いどこかで響いた。


頷いた。


「それで、ヨルムは?突然授業に来なくなったって聞いたけど」


「ああ、彼か……どう言えばいいか……恋愛問題が彼の弱点だと言っておこう」


「どういう意味?」


「……正直に言うぞ、アレン。ヨルムは別の学校に転校したいと頼んできた。りんという名前の女の子を忘れたいから」


その言葉を聞いた瞬間、頭の中でカチッと音がした気がした。


ヨルムがりんを好きだった!?


「分かるだろう、アレン?」


ゆっくりと頷いた。処理するには多すぎる。


サンティが立ち上がり、表情が軽くなった。


「それはそうと、君に提案がある、アレン」


瞬きした。


「提案?」


「5iはまだ存在している。でも浄化された。クリーンだ。本来あるべきものになる。倫理的な研究センター、制御するためじゃなく助けるための技術開発。優秀な頭脳が必要だ。でも何より、強い心が必要だ。力の暗い側面を見て、光を選んだ人々。興味があるか?ジュニア研究員として、プログラマーとして、君が選ぶものとして。君には可能性がある」


その言葉が、僕の内側の非常に深い場所で響いた。


『君には可能性がある』


野心的な採用担当者の言葉じゃない。エコーだ。いつも同じことを言ってくれていた銀太郎先輩のエコー。


温かく、完全には意識していない微笑みが唇に浮かんだ。


「なぜ僕を?」


「純粋な天才よりも稀な何かを君の中に見るから」


サンティが言った。その目は僕を見通しているようだった。


「君の霊輝が見える。強く、自然で、力強い流れ」


眉をひそめた。


「霊輝?また その言葉……それは正確には何?君が……浮いたこととは関係あるの?」


サンティが微笑んだ。いつもの謎めいた雰囲気が目に戻ってきた。


「それは別の日の会話だ、アレン。君が想像できるよりも長く、奇妙な話。言えることはこれだ。君の霊輝は強い。でもその表現はオレのものとは違う。オレのは……解放されている。君のはまだ、君が創る絆を通じて、君が鼓舞する信頼を通じて表現されている。どちらも有効だ。どちらも力強い」


窓を見た。遠くからの呼び声を聞いているかのように。


「行かなければ。やることが沢山ある。でもオレの提案を覚えておいてくれ。そしてこれを覚えておいてくれ、アレン。世界は秘密で満ちている。オレのような謎、5iだったもののような謎、霊輝のような謎。それらを無視して生きるのは一つの選択肢だ。それらを知って生きるのは、別の選択肢。君はもう二番目を選んだ」


別の質問をする前に、サンティは窓へと歩いた。急がず、ドラマチックでもなく、単純に窓枠に登り、前に傾いて、落ちた。


窓に駆け寄って、身を乗り出した。


サンティは落ちなかった。見えない水の中の泳ぎ手のように空中を滑り、それから重力に逆らう柔らかい加速で上昇し、遠くの建物の間に消えた。


そこに立ち尽くした。窓枠に寄りかかって、口がわずかに開いている。


秋のそよ風が顔を撫でた。


これはどんな世界だ?どんな人々がここに住んでいる?


疑問が心の中を漂ったけれど、今回は不安を伴っていなかった。畏敬の念とともに来た。好奇心とともに。


自分の世界が広がった。


子供だった怪物、犠牲者だった科学者、過ちを犯す人間だった創設者、そして現代のテクノロジーの世界で古代の魔法のように聞こえる力を知った。


そしてその全ての真ん中に、自分の人生があった。


このアカデミーでの人生。今、やっと、生き延びるためだけじゃなく、生きるための場所のように感じられる。


ひめかのことを思い出した。彼女の最終学年。卒業まであと数ヶ月しかない。


貴重で儚い贈り物のように感じられる数ヶ月。


温かく明確な決意が胸に落ち着いた。


もうバトルも、暗い謎も、トラウマも後にする時だ。


良い思い出、シンプルで人間らしい思い出を創る時だ。


彼女と時間を過ごす時だ。笑って。今は自由になったアカデミーを歩いて。部活動の祭りに参加して。生きる時だ。


そして彼女に言わなければならないことがあった。


全ての混乱の前からずっと自分の中で育っていて、最近の出来事が結晶のような確信へと固めたもの。


今日じゃない。多分明日でもない。


でも適切な瞬間が来たら……おそらく文化祭の間に……言うつもりだ。


サンティが消えた空を最後にもう一度だけ見つめてから、僕は窓を閉めた。


新鮮な空気が部屋に閉じ込められたまま。変化の、枯れ葉の、新しい始まりの匂い。


微笑んだ。静かで、希望に満ちた微笑み。


寮の階段を下りた。足取りは軽い。


外では、秋の太陽が場所を黄金の光で照らしていて、遠くに、噴水のそばで僕を待っているひめかの姿が見えた。微笑んでいる。


始まりの時だった。

次回――


守るということ。


これは戦いの物語ではない。


一人の男子が、自分の在り方と向き合う物語。


「守る」とは何か。


力で守るのか、存在で守るのか。


かつて無力さを知った男子は、

それでも立ち続けた。


誰にも気づかれなくても。


意味がないと思われても。


だがその行動は、確かに誰かを救っていた。


語られなかった視点。


知られなかった役割。


そして見つける、自分なりの答え。


舞台は変わる。


だが、物語は続いていく。

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