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太陽と月~赤と青が出会うまで~  作者: 黒野凜兎
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大切な居場所

今回は『赤蛇』戦闘部隊の部隊長補佐で、ボスの補佐もするの女の子のお話だそうですよ。

どうぞ、ごゆっくり。


………地獄のようだったあの日々から────

一転したのは、間違いなく前ボスのおかげだ。

感謝してもしたりない。

そうじゃなければ………

とっくの昔に、私たちは死んでいただろう。



……………名無島郊外。

それは荒れ果てた土地である、と中心に住む奴等は知っているのだろうか。

知らないだろうな。

ここに来るのは、人買いや行く場のない人。

そして、死体。

ここから出て行くものもいる。

でもその大半は死体となり、帰ってくる。

私は、死体となり、ここに戻ることぐらいになるなら、海にでも沈んで、流されてしまいたい。

…………それは叶わぬ夢だけど。


人には、能力が備わっている。

雷や風、嫌いな雪を操るものとか。

中には精神操作系のものもあるとか。

……もちろん、私にもあるわけで。

海にでも沈んで、流されてしまいたい。

これが、叶わぬわけ。

───水を操れるなら、苦しいときにあがってこれてしまう。

あぁ、死んでしまいたい。

…でも、許してくれぬ人が、いた。


「水樹!また、飛び込もうとしたの?無理だってば!」


──一つ年上だと思われる、実の兄。


「水樹がいなくなったら、おれはどう生きたらいいの?」


───呆れるほどに、優しい兄だった。

いや、今も少し残ってるか……?

まあ、それは置いておこう。

話はこの後の方が大事だからね。



今から十四年前。

私が五歳、兄が六歳だった。

あの日も貧民街のお家らしき所で寝ていた。

そんな時。

背後から何かの殺気を感じた。

貧民街で、殆ど敵無しだった私達が、感じたことの無いような殺気を。

動けるはずもなく、私達は……

……何者かに、捕まった。


その数時間後。

何故か、綺羅美やかな部屋に連れ出された私と兄は、何故か、大きな机のセットとなっているのであろう椅子に座って、ご馳走が沢山出てくるのを眺めていた。


…………は?なにこれ?


兄も同じ感想なのだろう。

顔が固まっている。ついでに動きも。

そんな兄妹の様子を見て、どう見てもこの部屋の中で一番位の高そうな方が口を開いた。


「ああ、二人には全く説明していなかったね。まずは腹拵え、と思って用意したんだ。食べてくれて構わないよ」


………え?毒でも盛ってあるの?

と、疑心暗鬼になるのも許して欲しい。

此方はつい数時間前まで生きるか死ぬかの瀬戸際にずっと立っていたのだから。


「………い、いただきます」


と、兄が食べた。

私はそれを見守っていた。


「………………………美味、しい」


一言、そう発した。


「それは良かった。君も食べたまえ」

「………い、ただき…ます?」


恐る恐るだった。

………食べたことのない味。

でも、泥の味がしない、不思議な味。

これを、美味しい、と言うのだろうか。

兄がそう言ったが、私は泥の味がしないものなんて食べたことがない。

わからないけど………


「冷たく……ない?」

「それが普通なのだよ、君。さぁ、早く食べるといい」


そこからは、夢中だった。



「さて、美味しい食事を終えたところで、本題を話させてもらおうか。君達、名字と名前はあるかい?」

「「……みょうじ?」」

「………名前は?」

「………時雨。こっちは、水樹」

「ふむ、時雨君と水樹ちゃんか。私は月村つきむら 伊地覇いちはだ。よろしく」

「よ、ろしく?」

「挨拶からか…まあいいけれど。………君達には今日から此処で、私の子として過ごしてもらう。見たところ、親もいないだろう?」

「親……なら、五年前に死んでます」

「今、何歳だい?」

「………六歳」

「五歳、です?」

「水樹ちゃんをお産みになってすぐ亡くなったのか……その後はどうやって?」

「お爺ちゃんが、育ててくれました」

「お祖父様?いたのかい?」

「父の知りあいです」


厳密に言えば、ご近所様。

でも、二年前に亡くなった。

それからはずっと二人だ。

食べ物も、飲み物も、全部半分にした。


「………本題に戻そうか。はっきり云うと、私には子をつくる気がない。だが、育てておくのは重要だ。そこで、戦闘力が高く、知能もある子を探した結果、君達が該当したのだよ」


………あぁ、なるほど。

幼い頭では理解できなかったが、二、三年たって思い返したらこういうことか。


〔正妻はとる気もないし、子供に興味もない。が、跡継ぎはほしい〕


と、言うことだろう。


「一つ、聞きたいのですが」


兄が喋った。


「何かな、時雨君」

「ここでその誘いを断ったとしたら、そこの陰からあなたの部下が出てきて、おれと水樹は銃殺ですか?」

「………………」


気配が動いた。

まあ、図星だろう。

貧民街での生活は、人が多い中で自分に向けられた視線、殺気を見極める必要がある。

これくらい、朝飯前だ。


「そうだね。断れば、だけど……君達にはこれ以上の優良物件…いや、組織はないと思うけど」

「「………………」」


その通り。

ここでの食事を頂いたあたりから、はっきりしている。

……ここと貧民街を比べたら、天と地……いや、宇宙と海底並みの差がある。

戻るなんて、親でも残していない限りは有り得ないだろう。

私たちの生きる道は───

温かいご飯を食べた瞬間に、決まっていたみたいだ。

まあ、後悔はしてないけど。

むしろ大感謝………だね。



それからはまぁ、簡単だった。

もともと要領良かったみたいで、勉強も、体術も、能力の使い方もするすると頭に入っていった。

あ、勿論、身にもついた。


そこから八年がたったときが、更にすごい人生の分岐点だったと思う。

………前ボスが、死んだこと。

病気だったらしい。

──────今考えたら、子をつくる気がない、じゃなくて、つくれなかった、が正しかったかも。

なんて思ったり。


まあ、それはさておき。

ボスが死んだのは組織的に辛い。

そこで、『赤蛇』はかなり無理があるが、その場では一番よいだろう判断をした。

───『赤蛇』の為に、ボスが書いていた遺書を、兄が持っていたのだ。

その中には、それなりに衝撃を受ける文が書き記してあった。


〔………私が死したとき。時雨が十二を越えていたら、ボスは時雨に引き継ぐ。水樹は補佐をせよ〕


………正直、四度ぐらい聞き直した。

不安の声はあったみたいだが、兄はその遺書を読んだ後、すぐに行動をした。

政府に報告に行き、許可書及び任命書をもらって帰ってきた。


そして───

単身、敵地に赴き、(一応)平和的に話し合いで解決してきた。

(一応、の理由としては、子供だと舐めてかかってきた奴らを全員返り討ちにして、相手を震え上がらせた、という面を含むかどうか迷った為である)

その事件後はトントン拍子だった。

反対者を(しっかりとした)話し合いで和解。

敵には然るべき処置をとった。

それより、全員に認められた。

仲間意識はしっかりしていたので良かったと思う。


──────それから六年もたった。

いつのまにか仲間は増え、戦力も上がった。

息せぬ無機物となり、出ていく人も減った。

これが幸せなのかな、と感じる日々。

たまに、表通りで笑っている親子を見ると、頭がこんがらがってくる。

そんなときに、仲間を見る。

あぁ、これは幸せだ。

と感じる。

私にとって此処は大切な場所なのだ。

兄はめんどくさくても。

天音さんはうっとおしくても。

美琴さんに共感できすぎたり。

姫と頭を抱えて困っても。

戦闘部隊で問題起こしても。

此処が───私の、唯一の大切な居場所なのだ。


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