歌を奏でる双子
今回は、成宮のやんちゃな双子のお兄ちゃん目線のお話みたいです。
どうぞ、ごゆっくり。
……どこからか、声が聞こえてくる。
聞き間違えることなんてありえない。
それは──愛すべき、片割れの笑い声。
「んー、今日はなにする?歩ちゃん」
「んー、なにしようねぇ?奏くん?」
「「………面白いこと??」」
はい決定。
顔を見合わせて、自分の楽器を持ち、走り出した
いつも仕事は普通にサボる。それでいてもクビにならないのはわけがある。
オレらは成宮。でいて、能力も超攻撃方のやつ。
野放しにする方が、危ない。そういう意味だろうね?
酷いよねー、オレらは“自らと大好きな片割れ”に危害を加えなければ、なーんにもしないのにさぁ?
あ、でも、緊急時はべーつ!
だって、高いお給料は欲しいし、愁兄さんのお願いは聞く価値がある。
………昔は、そう思うことがなかったけど
─────十年前
オレらが六歳の頃の話。
「あるちゃん!あるちゃん!あのさ!」
「なになに?そうくん!!」
「ボクらを、もらってくれる人がいるんだって!」
「へぇ!そうなの?どんな人かなぁ、強い人かなぁ?」
……内容と、口調から見たらオレらは笑っているように見えるかもしれない。けれどそのときの顔は…
………見た人を怯えさせるような、殺気にまみれた無表情。
「……貴方がボクらを連れ出した人?」
「そうだよー、俺は彩雅。君たちのお兄ちゃんになるクズ野郎だよー」
「クズ野郎なの?自分で言うなんて、変な人ー」
「そうかなぁ?これがいつも通りだからさー、仕方ないよ。さぁ、車に乗っ……………」
その言葉が聞こえる前に、オレとあるちゃんは、隠し持っていたナイフで攻撃をしていた。
「「…おとなしくするわけ、ないじゃん?やっぱり変な人ー」」
「さ、彩雅様!?」
「この………餓鬼ども!!」
刃を向けられる。これは………
ボクらに向けられた、害意。
「「………さーさー、皆様ご覧あれッ!!」」
…………音楽、と言って良いのかわからないでたらめな旋律が、流れ出した。
それを聞いた従者みたいな人たちは、たちまち“ナニか”に切り裂かれ、貫かれた。
…そして、彩雅、と名乗った人にも向かった。
…………………ハズだったのに。
「わぉ。惜しいなぁ、ハズレだよ?俺はこーこ。もう少し鍛えてたら、気づけたでしょーに?どーんまい♪」
…さっきまで、そこにいたハズの奴は…車の上に、胡座をかいて座っていた。
「「はァ!?」」
「ほら、そこ見てみなよ?俺がいたであろう場所を」
…咄嗟に距離をとり、振り返った。
…その場所には、水溜まりと、氷が、転がっているだけだった。
「君らじゃあ、俺には、勝てないよ?」
……冷気が、漂ってきた。冬の北風よりも、強い、冷たい風。
嫌いな、寒い、寒ーい風が。
………この日、オレらは、自分達以外の、世界を知った。
「「………さぁさぁ!!皆さん!双子の演奏を、どうぞ聞いて!!歌える人は歌ってねぇー!!」」
今日も、仕事をサボって公園で演奏する。
強い人を知った。それにより、弱い人達の、尊さを知った。
強い人は、自分で自分を守ることが出来る。
でも、弱い尊い人は、自身を守るのが難しい。
オレらの力は、人を守るのには、向いていない。
そう、思い知らされた。
だから……心をできるだけ和ませるようにする。
……それが、オレらに出来ること
……それしか、オレらはできないから
「こら!!双子!仕事に戻ってこいと連絡入れておるじゃろうが!!」
「「あ、サクのん先輩!ごめん、今演奏中だから!後五曲分待って!」」
「お主らぁぁぁぁぁ!!!」
「………サク、待っていよう。シュウも、急ぎじゃなくていいって……」
「流石、いづさん!!」
「ぜひ、聞いていってね!!」
「「じゃあ、いくよ!!Let's singing!!!!!」」
オレらが、みんなの心を守ろう。
『青鳥』が、(一人を除いて)オレらにしてくれたように。




