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第91話

 七月二十八日。

 一般開放が始まる八月一日まで、残り四日。

 できれば、それまでに第五層まで進んでおきたい。

 ……とは思うけれど、いなりたちに無理をさせるつもりはない。

 安全に進める範囲で、少しずつ攻略していこう。

 いつものように午前中の勉強を終え、昼食を食べてから尾張ダンジョンへ向かう。

 今日からは、昨日買ったおそろいのポーチを身につけて出発だ。

 俺は緑。

 いなりは白。

 烈は赤。

 静は青。

 歩いている間も、いなりや烈は何度も自分のポーチを眺めている。

「あるじとおそろいです」

 いなりは嬉しそうに白いポーチを撫でた。

「俺様の名前も入ってるぜ!」

 烈も赤いポーチを誇らしげに見せてくる。

 これほど喜んでくれるなら、もう少し早く用意してもよかったのかもしれない。

 いや、必要性に気づいた時に買ったのだから、遅くはなかったと思いたい。

 同じ形のものを身につけているだけなのに、不思議と四人の一体感が増したように感じる。

 ダンジョンの入口へ到着すると、買い取り窓口にいた綾部さんがすぐに気づいた。

「あら。週末に買い物へ行ってきたのね」

 俺たちの腰元を順番に見る。

「おそろいのポーチをつけて、ずいぶんチームらしくなったじゃない」

「えへへ。あるじに買ってもらったのです」

 いなりが胸を張って答える。

「いや。これは、みんなで稼いだ共同資金から買っただろ」

「でも、あるじとおそろいです」

「それはそうだけど」

 いなりは綾部さんへ、白いポーチを嬉しそうに見せている。

「かわいいわね。名前まで入ってるの?」

「はい。ここです」

「本当だ。大切にしないとね」

「はい!」

 いなりは満足そうにうなずいた。

 烈も自分のポーチを見せようとしていたが、このままでは探索前に時間が過ぎてしまいそうだ。

「そろそろ行くぞ」

「はい、あるじ」

「今日も稼ぐぜ!」

「烈。目的はお金を稼ぐことではありません」

「分かってるって!」

 入口でそれぞれの探索者カードを読み取らせ、俺たちはダンジョンへ入った。

     ◇

 第一層へ入ったところで、俺は三人へ今日の方針を伝える。

「今日は、第四層を安定して回れるようになることを目標にしよう」

「はい」

「問題ないぜ!」

「承知しました」

「第四層まで余裕を持って回れるようになったら、第五層へ進む」

「今日は第五層まで行くのですか?」

 いなりが尋ねる。

「時間と、みんなの疲れ具合次第だな。無理に行くつもりはないよ」

「分かりました」

 前回の第四層では、俺が採掘場所へ意識を向けすぎたせいで、小鬼の接近を許してしまった。

 魔物の強さそのものに苦戦したわけではない。

 俺が周囲への警戒を怠らなければ、第四層も安定して探索できるはずだ。

「今日は採掘前にも、必ず周囲を確認する。いなりも索敵を頼む」

「はい。任せてください、あるじ」

「烈と静も、採掘中は警戒を頼む」

「任せろ!」

「周囲を警戒します」

 役割を確認してから、俺たちは探索を始めた。

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