第76話
翌日。
いつもどおり午前中はみんなで勉強し、昼食を終えたあと、俺は母さんと一緒に銀行へやってきた。
目的は、俺名義の銀行口座を作るためだ。
窓口でマイナンバーカードと必要書類を提出し、申込書に必要事項を記入する。最後に銀行印を押せば、手続きは完了だった。
多少待ち時間はあったものの、全部で三十分ほど。
思っていたよりも、あっさり終わった。
「これで、探索者登録ができそうだな」
受け取った通帳を見ながらつぶやくと、母さんが隣からのぞき込んだ。
「口座を作っただけで、すぐ登録できるの?」
「申請書はもう書いてあるから、口座情報を追加すれば大丈夫なはず」
「そうなのね」
銀行を出たところで、俺は時間を確認した。
家に着く頃には、午後三時くらいになるだろう。
「母さん。帰ったら、ダンジョンへ行ってくるよ」
「今から?」
母さんが少し驚いた顔をする。
「家に帰ったら、三時くらいになるわよ」
「今日は探索者登録をするだけだから、そんなに時間はかからないよ。ダンジョンの中にも入らないし」
「一人で行くの?」
「いなりたちのカードも作るから、みんなで行く必要があるんだ」
「そういうことね」
母さんは納得したようにうなずいた。
「分かったわ。でも、気をつけてね」
「ああ、了解」
◇
「ただいま」
「おかえりなさい、あるじ」
家へ戻ると、いなりと静は居間で本を読んでいた。
烈の姿は見当たらない。
「烈は?」
「裏庭で身体を動かしています」
静が窓の外へ視線を向ける。
見ると、烈が木刀を振りながら、庭を駆け回っていた。
「烈! ちょっと来てくれ!」
「おう!」
声をかけると、烈はすぐに庭から戻ってきた。
「どうした、透様?」
「今からダンジョンへ行く。正式な探索者カードを作ってもらうぞ」
その言葉に、三人がそろって顔を上げる。
「ダンジョンに入るのですか?」
いなりが尋ねる。
「今日は入らない。カードを作るだけだ」
「それなら、このままでも大丈夫です」
「僕も準備はできています」
「俺様もいつでも行けるぜ!」
「一応、帽子だけはかぶってくれ。夕方が近づいてきたとはいえ、まだ日差しは強いからな」
「はーい」
「承知しました」
「分かったぜ!」
三人はそれぞれ帽子をかぶり、俺たちは尾張ダンジョンへ向かった。




