第75話
窓口には、市役所から派遣されたらしい女性職員が座っていた。
俺が回収した品をカウンターへ並べると、女性職員は黒い石を手に取り、少し驚いた顔をした。
「あれ? 鉄鉱石も採れたんですね」
「鉄鉱石なんですか?」
「はい。まだ簡易鑑定ですが、鉄を多く含んだ鉱石で間違いないと思います」
「第三層の壁を掘ったら出てきました」
「壁から?」
女性職員が顔を上げる。
「第三層まで行ったんですか? 警察の探索班も、第二層の魔物には苦戦していると聞いていますけど」
「うちの子たちは優秀なので」
そう答えると、烈が得意そうに胸を張り、静は少し照れたように視線を伏せた。
いなりも、なぜか嬉しそうに尻尾を揺らしている。
「なるほど。魔石もたくさんありますね。少し待ってください」
女性職員は、魔石と鉄鉱石の数を一つずつ確認し、端末へ入力していく。
「魔石が三十六個。一個二千円なので、七万二千円です」
続いて、鉄鉱石を確認する。
「鉄鉱石は、一個千円の暫定価格です。三個で三千円になります」
女性職員は端末の画面を確認した。
「合わせて、七万五千円ですね」
「今日も、ここで受け取れますか?」
「はい。小森さんについては、七月中は特例で窓口払いになっていますから」
女性職員は、少しだけ苦笑する。
「ただし、銀行口座を作った後は、そちらへの振り込みに切り替わります」
「明日、口座を作りに行く予定です」
「それなら、窓口で現金をお渡しするのは、今日が最後になりそうですね」
「はい。口座ができたら、今度持ってきます。その時に、正式な探索者登録もお願いします」
「分かりました。口座情報が確認できる通帳かキャッシュカードを持ってきてください」
「はい」
女性職員は買い取り明細を印刷すると、金額を確認しながら現金を数え始めた。
「一万円札が七枚、五千円札が一枚です。合計七万五千円になります。こちらで間違いありませんか?」
俺もその場で枚数を確認する。
「はい。大丈夫です」
「では、こちらが買い取り明細です。次回からは、登録口座への振り込みになります」
「よろしくお願いします」
現金と明細を受け取り、財布とリュックへ分けてしまう。
買い取り所を出ると、時刻は午後五時を回っていた。
午後だけで、七万五千円。
高校生が半日で受け取る金額としては、大きすぎる。
しかも、窓口で現金を受け取るのは今日までだ。
明日、銀行口座を作れば、次からはそこへ振り込まれることになる。
もちろん、全部を俺一人のものにするつもりはない。
烈と静も戦った。
いなりも索敵や戦闘で活躍している。
家に帰ったら、まず親父と母さんに報告しよう。
そのうえで、いなりたちの分をどうするのか、みんなで話し合った方がよさそうだ。
俺は明細の入ったリュックを背負い直し、三人と一緒に家へ向かった。




