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第73話

 翌日から、午前中は勉強、午後はダンジョンという、夏休みらしい生活が始まった。

 試しに魔力を身体に纏ったまま勉強してみると、いつもより頭が冴えているような気がする。

 問題文がすんなり頭に入ってきて、計算も普段より早く進む。

 烈や静からの質問に答えながら、自分の宿題も解いていく。それでも、不思議なくらい順調だった。

 魔力を纏っている効果なのか。それとも、みんなで勉強しているから、適度な緊張感があるのか。

 どちらなのかは分からないけれど、宿題が早く終わるなら悪いことではない。

 昼食を終えると、俺たちは裏山のダンジョンへ向かった。

 入口の小屋で、昨日受け取った仮の探索者カードを提示して中へ入る。

 今日は、俺たち以外に探索者の姿はなかった。

 まあ、まだ一般開放前だから当然か。

 今回から、静には盾を持たせている。

 右手に太刀、左手に盾。

 烈が攻撃を重視した前衛なら、静は仲間を守りながら戦う前衛だ。

 第一層では、土偶を発見するたびに烈が飛び出していった。

「見つけた! 俺様に任せろ!」

 烈が駆け出し、大太刀を振り下ろす。

 魔力を纏った刃が、土偶の身体を一撃で叩き割った。

「おお、一撃か」

「どうだ、透様!」

「すごいけど、第一層の土偶相手だからな。調子に乗るなよ」

「分かってるって!」

 本当に分かっているのだろうか。

 第一層を一通り回ると、倒した土偶は九体だった。

 前に探索した時も同じ数だったし、第一層に出現する土偶は九体で固定されているのかもしれない。

 九個の魔石を回収して、俺たちは第二層へ下りた。

「ここからは、あの大きなダンゴムシが出てくる。最初の難関だな」

 丸くなって突進してくる、硬い甲羅の魔物。

 俺も初めて戦った時は、かなり苦労した相手だ。

「烈、静。いけそうか?」

「任せてくれ、透様。魔力纏いを身につけた俺様の敵じゃないぜ!」

「烈。調子に乗って、無茶をしてはいけません」

 静が落ち着いた声でたしなめる。

「僕も魔力纏いを身につけました。問題ありません」

「いなりはどう思う?」

「二人とも、あの魔物を倒すだけの力はあります。問題ないと思いますよ」

「分かった。二人でやってみよう。危なくなったら、俺といなりが介入するから安心してくれ」

「はい!」

「承知しました」

 しばらく進むと、通路の奥にダンゴムシが一体現れた。

「俺からいくぜ!」

「分かりました」

 烈と静が同時に走り出す。

 俺といなりも、何かあればすぐに介入できる距離を保ちながら、少し後ろをついていった。

「どりゃあっ!」

 烈が大太刀を大きく振り下ろす。

 魔力を纏った刃が硬い甲羅を切り裂き、ダンゴムシの身体を真っ二つにした。

 魔物は、そのまま光の粒となって消える。

「一撃か……」

 以前、俺が苦戦した相手を、烈は簡単に倒してしまった。

「透様、どうだ!」

「すごいな。ちゃんと魔力を刃に乗せられている」

「だろ!」

「でも、次は静の番だから、烈は待機な」

「おう!」

 烈は俺のところまで駆け寄ってくると、なぜか期待するように頭を差し出した。

 これは、撫でろということだろうか。

「よしよし。よくやった」

「へへっ」

 嬉しそうに笑っているので、どうやら対応は合っていたらしい。

「次に見つけた一体は、静に任せる」

「はい。頑張ります」

 次のダンゴムシを発見すると、静が一人で前へ出た。

 ダンゴムシが身体を丸め、勢いよく通路を転がってくる。

「静、来るぞ!」

「はい!」

 静は足を止め、盾を正面に構えた。

 盾の表面を、薄い魔力の膜が覆う。

 次の瞬間、ダンゴムシが盾へ激突した。

 どんっ、と重い音が響く。

 静の身体がわずかに後ろへ押されたものの、足は止まっていた。

「止めた!」

 ダンゴムシは勢いを失い、盾の前で身体を開く。

 静はすぐに盾を押し返し、空いた右手の太刀を振り下ろした。

 一撃では倒しきれなかったが、静は慌てない。

 再び襲いかかってくる魔物の攻撃を盾で受け止め、二度、三度と太刀を叩き込む。

 やがて甲羅が砕け、ダンゴムシは光の粒となって消えた。

「お見事」

「ありがとうございます、透様」

 静も俺のところへ戻ってくると、烈と同じように頭を差し出した。

 狛犬には、褒めてもらう時に頭を差し出す習慣でもあるのだろうか。

 よく分からないけれど、静の頭も同じように撫でておく。

「盾の使い方、よかったぞ。正面から突進を止められるなら、みんなを守る時にも役立つ」

「はい。もっと練習します」

 二体とも魔石を落としていた。

 以前倒した個体から出た黄色い宝石――トパーズは、やはり珍しいドロップだったのかもしれない。

 第二層を一通り回った結果、倒したのはダンゴムシ五体と土偶四体。

 合計九個の魔石を回収した。


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