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第67話

 親父といなりたちと一緒に市役所の車へ乗り込み、裏山ダンジョンのあるキャンプ場へ向かった。

 キャンプ場へ着くと、一週間前とは景色が大きく変わっていた。

 入口には頑丈なフェンスが設置され、奥へ続く道もきれいに舗装されている。以前は砂利道だった場所が、行政の管理施設らしい雰囲気へと様変わりしていた。

 敷地内へ入ると、大型のプレハブが建っている。

 入口には『ダンジョン管理事務所』の看板が掲げられており、受付や入退場管理、魔石の買い取りなどを行う拠点になるのだろう。

 さらに奥へ目を向けると、ダンジョン入口を囲むように高いコンクリート塀が築かれていた。

 万が一ダンジョンブレイクが起きても、被害を外へ広げないための備えなのだろう。

 管理事務所の前には、見慣れた顔が並んでいた。

 辻元さん、伊藤さん、有村さん。

 その隣には、初めて見るスーツ姿の人たちが数人立っている。

 伊藤さんがこちらに気付き、笑顔で近寄ってきた。

「小森さん、お久しぶりです」

「伊藤さんもお変わりなく。透は入り浸っていましたが、ダンジョン攻略は順調ですか?」

 伊藤さんは苦笑いを浮かべた。

「警察でも何班かに分かれて探索していますが、第二層から先がなかなか手強くて苦戦していますよ」

 そんな話をしていると、藤堂さんがこちらへ歩いてきた。

「小森さん、お話し中のところ申し訳ありません。今日の式典に参加される皆さんをご紹介したいのですが、よろしいでしょうか」

「もちろんです」

 藤堂さんは一人の男性を前へ案内した。

「こちらは内閣官房ダンジョン対策室・中部担当所長の黒崎さんです。そしてこちらが、この土地の地主であり、尾張ダンジョンの第一発見者、小森さんです」

 黒崎さんは穏やかな笑みを浮かべ、一歩前へ出る。

「初めまして。内閣官房ダンジョン対策室の黒崎です。

 中部地区のダンジョン対策を担当しております。今後いろいろとご協力をお願いすることもあると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

「地主の小森です。よろしくお願いします。

 こちらは息子で、ダンジョン発見者の透です」

「小森透です。よろしくお願いします」

 黒崎さんは少し驚いたような表情を浮かべた。

「君が神使導師の透君か。

 神社庁から宇迦之御魂神様に見込まれている人物だと伺っている。お会いできて光栄です」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 続いて藤堂さんが隣の男性を紹介する。

「こちらは知多市副市長の高橋さんです」

「高橋です。

 知多市でダンジョンが発見されたことは、地域にとって大きな転機になると考えています。藤堂とは普段からお世話になっていると聞いておりますので、今後ともよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 最後に若い男性が軽く頭を下げた。

「愛知県総務課ダンジョン担当の神崎です。

 正直なところ、まだ分からないことばかりで毎日手探りですが、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 一通り紹介が終わると、黒崎さんが声を潜めた。

「本日の式典は地元メディアにも取材していただきます。ただし、安全祈願の神事と、小森さんご一家については、写真・映像ともに撮影禁止としています」

 その言葉に胸をなで下ろす。

「ありがとうございます。いなりたちが映らなくて本当に助かります」

 黒崎さんは静かにうなずいた。

「神社庁とも連携しておりますし、この件については内閣官房からも各報道機関へ要請を出しています」

「神社庁は分かるんですが……内閣官房まで動いているんですか?」

 思わず尋ねると、黒崎さんは苦笑しながら答えた。

「今回の件は、人知を超えた事象です。

 私たちは神託を受けて行政を動かしている立場ですので、神々のご意向に反する行動は可能な限り避けるよう、官房長官からも直接指示が出ています」

 なるほど。

 神社だけではなく、国そのものが神託を前提に動いているわけか。

「何にせよ、ご配慮いただけるのはありがたいです」

 そう言うと、黒崎さんは笑顔でうなずいた。

 その時、管理事務所のスピーカーから開会を知らせるアナウンスが流れた。

「まもなく開所式を開始いたします。関係者の皆様は式典会場へお集まりください」

 黒崎さんが腕時計を見ながら言う。

「そろそろ式が始まります。本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 俺たちは会場へ向かって歩き始めた。

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