第53話
驚きは残っていたが、俺の話を軽く扱うような様子はなかった。
「今も、その石は持っているかい?」
藤堂さんが、改めて尋ねた。
「これです」
俺はリュックから、淡い黄色の石を取り出した。
室内の照明を受けて、石の内側がきらりと光る。
藤堂さんと辻元さんが顔を見合わせた。
「うーん。確かに、魔石とは違うな」
中川さんも、資料と石を交互に見ている。
「預からせてもらってもいいかな?」
「はい」
「では、後ほど預かり証を発行します」
藤堂さんは石を慎重に小袋へ入れた。
「この黄色い石については、まず鑑定が必要になる」
中川さんが言う。
「買い取り対象にできるか。できるなら、どのような基準で価格を定めるか。国の研究機関へ確認します」
「分かりました。買い取ってもらえるなら、それでお願いします」
「承知しました。後日、結果と金額の明細をお送りします」
藤堂さんは、メモを確認してから続けた。
「ちなみに、魔石は今どのくらい集まっている?」
「たぶん、四十五個か四十六個くらいです」
「そうか。結構潜っていたんだな」
「はい」
「今は持ってきていないんだね?」
「はい。家に置いてあります」
「分かった。それなら、この後、われわれで小森さんのご自宅までお送りする。その時に数を確認して、まとめて預からせてもらおう」
「お願いします」
「小型魔石については、現時点では一個二千円の暫定価格で買い取る予定だ」
藤堂さんは続ける。
「数と特徴を記録して預かり証を発行する。買い取り額が正式に決まったら、登録口座へ振り込む形になる」
「ありがとうございます」
四十五個なら、九万円。
少し前まで、土偶を倒して落ちる小さな石くらいにしか思っていなかったものだ。
それが、ちゃんとした価値を持つ。
その事実が、改めて少しだけ現実味を帯びてきた。
最後に、中川さんが、分厚い書類を親父へ差し出した。
「土地使用契約書です。内容をご確認ください」
親父は、書類を受け取った。
「内容確認は、今日この場でしないといけませんか?」
「必ずしも、ここでなくても構いません」
中川さんは答える。
「ただ、八月一日までには柵を完成させたいと考えています。可能であれば本日中に確認していただき、捺印をお願いできると助かります」
「今日、契約が締結したら、すぐダンジョンには入れなくなりますか?」
「柵の設置工事には、二週間ほどを想定しています」
橋本さんが答えた。
「工事中は安全確保のため、可能な限り近づかないでいただきたいと考えています」
「分かった」
親父は俺を見る。
「透もいいな」
「ああ、了解だ」
二週間、ダンジョンに入れない。
少し困る。
でも、柵と監視設備ができれば、近所の人たちにとっては安心になる。
それに、今後ダンジョンが一般公開されるなら、準備の時間も必要だ。
しばらくして、打ち合わせは終了した。




