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第27話

第25話の所に第24話を入れていました。

申し訳ありませんでした。

第25話を修正しましたので、もしよければ第25話から読んでください。


 山を下りる途中、親父がふと足を止めた。

「透」

「何?」

 振り返ると、親父はいつになく真剣な顔をしていた。

「ダンジョンに入ること自体は許可する。ただし、条件がある」

「条件?」

「ああ。これが守れないなら、お前をダンジョンに関わらせられない」

 その言い方に、俺は思わず背筋を伸ばした。

 親父は指を一本立てる。

「一つ。ダンジョン内で宿泊することは禁止する」

「……まあ、それは分かる」

「二つ。ダンジョンに入る日は、必ず俺か母さんに連絡すること」

「うん」

「三つ。ダンジョンに入る時は、必ずいなりちゃんと一緒に入ること」

「……え?」

 そこだけ、少し意外だった。

「四つ。何か異変や変わったことがあれば、必ず報告すること」

 親父はそこまで言って、俺をまっすぐ見た。

「この四つだ。いいな」

「一つ目、二つ目、四つ目は分かった」

「三つ目は?」

「いなりと一緒っていうのは、どういうこと?」

 俺が聞き返すと、親父は少しだけ目を細めた。

「いなりちゃんと一緒なら、お前は無茶をしないだろうという判断だ」

「……そういうことか」

「透。お前は、いなりちゃんを危険な目に遭わせたくないだろう?」

「ああ」

 そこは迷わず答えられた。

 いなりを危険な目に遭わせる。

 そう考えただけで、胸の奥がぎゅっとなる。

「危険だと分かっていれば、躊躇するし、別の手を考えると思う」

「そうだろうな」

 親父はうなずいた。

「逆に、一人なら興味本位で突っ込みそうだ」

「そんなことは――」

「興味本位じゃなきゃ、ダンジョンを見つけた時点で入っていないだろう」

「……」

 言い返せなかった。

 完全に正論だった。

 俺は黒い入口を見つけて、触るだけと言い訳して。

 結局、中に入った。

 戻れると分かったら、今度は装備を整えてもう一度入った。

 うん。

 親父の言う通りだ。

「……反省してます」

「反省しているならいい」

 親父は少しだけ表情を緩めた。

「俺は、お前がダンジョンに関わること自体を全部止めたいわけじゃない。お前が見つけた場所だし、いなりちゃんと出会った場所でもある。見回りが必要になることもあるだろう」

「ああ」

「だが、命を軽く見るな。自分のことも、いなりちゃんのこともだ」

「分かった」

 今度は、はっきりとうなずいた。

「約束する。ダンジョンに入る時は、必ず親父か母さんに言う。中で泊まらない。異変があったら報告する。それと、いなりと一緒に入る」

「よし」

 親父は短くそう言った。

 その声には、少しだけ安心したような響きが混じっていた。

「いなりちゃんにも、あとで伝えておけ」

「ああ」

「たぶん、あの子なら喜んでお前の見張り役をやるだろう」

「……見張り役って」

「違うのか?」

「いや、違わない気がする」

 いなりなら、俺が無茶をしようとしたら本気で止めてくると思う。

 小さな身体で前に立ちはだかるかもしれない。

 尻尾でぺしぺし叩いてくるかもしれない。

 想像すると、少しだけ笑ってしまった。

「何を笑ってる」

「いや。いなりに止められるところを想像したら、ちょっと」

「笑いごとじゃないぞ」

「分かってる」

 そう答えながらも、胸の中の重さは少しだけ軽くなっていた。

 ダンジョンは面白そうな場所だ。

 強くなれる場所でもある。

 でも、危険な場所だ。

 俺一人の好奇心で踏み込んでいい場所じゃない。

 そのことを、忘れてはいけない。

「帰ったら、いなりにもちゃんと話すよ」

「ああ。そうしてくれ」

 親父はそう言って、また歩き出した。

 俺もその隣に並ぶ。

 家に帰れば、母さんといなりが待っている。

 昨日までとは違う日常。

 でも、たぶんこれからは、それが俺の日常になっていく。

 そう思いながら、俺は親父と一緒に家へ向かう道を歩いた。


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