第25話
24話をだぶって投稿していました。
申し訳ありません。
修正しました。
裏山のダンジョンは、ますます俺だけの秘密ではなくなっていくのだと思った。
藤堂さんは、少し考えてから俺たちへ説明した。
「先の神託には、一か月間誰も侵入していないダンジョンはあふれる、とありました。ただ、現在は『侵入』の定義がはっきりしていません」
「定義?」
「はい。単に中へ入ればよいのか。それとも、中の魔物を倒す必要があるのか。まだ検証中です」
藤堂さんは、記録中のタブレットへ視線を落とす。
「そのため、安全側に倒して、月に一体以上の撃破を最低条件として扱う方針になっています」
「なるほど……」
つまり、念のため一体倒しておく。
それが、現時点での行政側の判断らしい。
伊藤さんが続けた。
「このダンジョンについては、少なくとも今月分の撃破は確認済みとします」
俺は少し考えてから尋ねた。
「このダンジョンは、一体倒したらもう入っちゃ駄目なんですか?」
「禁止ではありません」
伊藤さんは首を横に振った。
「ただし、市および警察は探索中の怪我や事故について責任を負えません。その点に同意していただければ、入ること自体は可能です」
辻元さんが書類を取り出した。
「未成年の方が探索する場合は、保護者の同意も必要になります。現時点では暫定運用ですが」
俺は親父を見る。
「親父、どうする?」
親父は小さくため息をついた。
「ダメと言ったら、勝手に入るだけだろ」
「いや、そんなことは……」
「する顔をしている」
「……」
「いいよ。ただし、入る時は必ず俺か母さんに言うこと」
親父は指を一本立てる。
「それから、無茶はしないこと。単独で深追いしないこと」
「分かった」
「本当に分かってるな?」
「分かってる」
親父の目が真剣だったので、俺も真面目にうなずいた。
「では、外に出たら保護者同意の形で署名をお願いします」
「分かりました」
親父が答える。
藤堂さんが、親父へ向き直った。
「小森さん。ここは小森さんの私有地になります。他に入りたい方がいた場合、どう対応されますか?」
「他は、どうしているんですか?」
「現在のところ、ほとんどの私有地ダンジョンでは、所有者の判断で立ち入り禁止にしています」
藤堂さんは、慎重に続ける。
「入っても、現時点で一般の探索者が直接得られる利益は、レベルアップ程度です。一方で、魔石などの扱いは、国がまだ制度を整えている途中ですから」
「ふむ」
親父は少し考え込んだ。
「じゃあ、しばらくはうちも立ち入り禁止ということにします。ただし、俺と透の見回りは必要でしょう」
「承知しました。そのように記録します」
藤堂さんはタブレットに内容を入力していく。
俺はその様子を横目で見ながら、少しだけ不思議な気持ちになっていた。
昨日まで、ここは俺だけが知っている場所だった。
いや。
いなりと出会った場所だから、俺といなりだけの秘密みたいな場所だった。
でも今は違う。
警察が確認している。
市役所が記録している。
この黒い入口は、もう俺だけのものではない。
社会の中の、管理されるべき危険物になっていく。
それは正しいことだ。
分かっている。
分かっているのに、少しだけ寂しかった。
伊藤さんが周囲を見回した。
「では、確認はできました。いったん外に出ましょう」
「はい」
俺たちは来た道を戻り、白い出口へ向かった。
公的にも、この場所はダンジョンとして扱われることになった。
それはつまり、昨日まで俺だけの秘密だった場所が、社会の中に組み込まれたということだ。
少しだけ寂しいような。
でも、少しだけ安心したような。
そんな変な気分のまま、俺は白い出口に触れた。




