第23話
視界が切り替わる。
そこは、見慣れ始めた薄暗い洞窟だった。
まず俺と親父が入り、その後に警察、市役所の人たちが続く。
「中は薄暗い洞窟です。ライトは必要です」
俺はヘルメットのライトを点けた。
藤堂さんと辻元さんもライトを点け、周囲を記録していく。
「ちなみに、そこの白い空間に触ると外へ出られます」
俺は入口近くに浮かぶ白い出口を指差した。
「何かあっても、落ち着いてあれに触ってください」
「分かりました」
伊藤さんが白い出口を確認し、有村さんもメモを取る。
警察の人たちは驚いてはいる。
けれど、さすがに仕事中だからか、すぐに確認作業へ移っていた。
「土偶というのは、どのあたりに?」
伊藤さんが周囲を確認しながら尋ねる。
「もう少し奥に行ったところです」
「では、確認しましょう」
俺たちは慎重に通路を進んだ。
少し奥へ行くと、土偶が一体、通路の先をずず……ずず……と動いていた。
「あれですね」
俺が指差すと、全員の視線がそちらへ向く。
五十センチほどの土の人形。
短い手足。
鈍い動き。
けれど、確かに自力で動いている。
「小森透くん」
伊藤さんが俺を見る。
「あれは倒せますか?」
「一体なら、なんとか倒せます」
「では、こちらでも対処できるか確認したい。もしもの場合、援護をお願いできますか?」
「はい」
俺は鉈を抜き、少し後ろへ下がった。
伊藤さんと有村さんは拳銃を抜く。
「撃ちます」
「了解」
乾いた発砲音が、洞窟に響いた。
バンッ。
バンッ。
二発の弾丸が、土偶の胴体へ命中する。
表面の土が削れ、傷がつく。
だが、土偶は倒れない。
ずず、と身体を揺らしながら、こちらへ近づいてくる。
「硬いですね」
有村さんが、低い声で言った。
伊藤さんが、もう二発撃つ。
バンッ。
バンッ。
土偶の胴体に、さらに深い傷が入る。
それでも崩れない。
「拳銃だけで即座に止めるのは難しいか」
伊藤さんはそう言うと、拳銃を有村さんに任せ、自分の背負っていた長い金属棒を取り出した。
先端に滑り止めのゴムが巻かれた、警棒よりずっと長い棒。
土偶の拳が届かない距離から扱うためのものらしい。
「距離を取って、仕留めます」
伊藤さんが一歩前へ出る。
土偶が短い腕を振り上げた。
だが、伊藤さんには届かない。
長い金属棒が、土偶の胴体へ振り下ろされる。
がんっ!
一撃。
土偶の胴体に走っていたひびが広がる。
さらに。
がんっ!
二撃目。
土偶の身体が大きくよろめいた。
最後に、三撃目。
がんっ!
土偶はぼろぼろと崩れ落ち、湿った土くれになった。
「撃破を確認」
有村さんが短く言う。
藤堂さんと辻元さんが、すぐに記録を始めた。
その時、伊藤さんがわずかに目を細めた。
「……斥候の心得を取得しました」
少し間を置いて、さらに続く。
「それと、戦士の心得も」
「伊藤さん、両方ですか?」
俺が聞くと、伊藤さんは手にした長い金属棒を見た。
「最初に拳銃で攻撃して、最後はこの棒で仕留めたからでしょうか」
伊藤さんは空中に表示されたらしいステータスを確認する。
「斥候と戦士。両方に転職可能、と出ています」
やっぱり、魔物を倒す時に使った手段で、得られる職業が変わるらしい。
遠くから銃で攻撃すれば斥候。
棒や鉈のような武器で叩き壊せば、戦士。
その仕組みを、俺は初めて現場で見た気がした。
有村さんも、自分のステータスを確認していた。
「私は斥候だけですね。拳銃で撃っただけなので、その差でしょう」
「たぶん、そうだと思います」
伊藤さんは少しだけ考え込む。
「警察や自衛隊が銃器で討伐する場合、斥候に偏る可能性がありますね」
藤堂さんがタブレットへ目を落としながら、うなずく。
「近接で戦える戦士や、治療を行う僧侶などが不足する可能性はあります。国にも、職業構成の偏りとして報告しておきます」




