第101話
しばらくすると、綾部さんがトレーや計測器、携帯端末などを載せた台車を押して戻ってきた。
「お待たせ。それじゃあ、今日は何を取ってきたの?」
俺は《アイテム袋》となったポーチから、今日の収穫を順番に取り出していく。
「第四層までで、魔石が五十三個、宝石が一個、鉄鉱石が六個です」
「うん。そこまでは、だいたいいつもどおりね」
「それと、第五層で倒した小鬼三体と、リーダーから出た魔石が四個あります」
四個の魔石を、別のトレーへ並べる。
綾部さんは一つずつ確認していたが、そのうち一個を手に取って首をかしげた。
「あれ?」
「どうしました?」
「この魔石、大きくない?」
リーダーが落とした魔石は、普通の小鬼が落としたものより明らかに大きかった。
「今まで持ち込まれた魔石の、倍くらいありそうね」
「リーダーから出たものです」
「やっぱり、強い魔物が落とした魔石は大きくなるのかな」
綾部さんは計測器へ載せ、重さや大きさを記録する。
「こういう場合、買い取り価格はどうなるんですか?」
「まだ基準がないから、この一個は別途鑑定ね」
「すぐには値段がつかないんですね」
「そういうこと。今までの小さい魔石と同じ値段で買い取るわけにもいかないし、かといって大きさだけで値段を決めることもできないから」
「分かりました」
綾部さんは、大きな魔石と宝石を預かり用のケースへ入れた。
「それじゃあ、今日その場で値段を出せるのは、通常の魔石が五十六個と鉄鉱石が六個ね」
第四層までの魔石が五十三個。
第五層の普通の小鬼が落とした魔石が三個。
合わせて五十六個だ。
「魔石が五十六個で十一万二千円。鉄鉱石が六個で六千円」
綾部さんが端末へ入力する。
「合計十一万八千円です」
「はい」
「宝石一個と、大きな魔石一個は預かり品として鑑定へ回すわね」
「お願いします」
「振込先は、いつもの口座でいい?」
「はい」
「了解」
綾部さんは携帯型のプリンターから、買い取り明細と預かり証を印刷した。
「これが今日の明細ね。宝石と大きな魔石については、こっちの預かり証に記載してあるから」
「ありがとうございます」
明細と預かり証を受け取り、内容を確認する。
間違いはなさそうだ。
「それにしても、透くんたちは本当にこのダンジョンの先駆者ね」
「俺たちより、警察や消防の方が先へ進んでいるんじゃないんですか?」
「それが、よく分からないのよ」
「分からない?」
「警察や消防みたいな官公庁の探索隊は、回収した魔石やアイテムをそれぞれの機関へ直接持っていくでしょう?」
「ここには持ち込まないんですか?」
「基本的にはね。調査用として、そのまま持ち帰っちゃうの」
確かに、警察や消防が回収したものまで、市役所の一般買い取り所へ持ってくるとは限らない。
「だから、何階層まで行ったのかも、どんなものを拾ったのかも、私は詳しく知らないのよ」
「なるほど」
「少なくとも、今のところ、この買い取り所を定期的に利用している探索者は透くんたちだけ」
綾部さんは楽しそうに笑う。
「つまり、現在の買い取り所は、ほとんど透くんたち専用ね」
「俺たちしか利用していないのに、先駆者と言われても……」
「あはは。細かいことはいいじゃない」
「よくない気がしますけど」
「トップだって聞けば、少しは嬉しいでしょう?」
「まあ、少しくらいは」
「あるじ様は偉いのです」
いなりが胸を張って言う。
「そうそう。いなりちゃんは、よく分かっているね」
「はい!」
「いなりまで調子に乗せないでください」
そう言いながらも、俺を誇らしげに見上げるいなりを見ていると、強く否定する気にはなれなかった。
買い取りの手続きは終わった。
あとは、所長たちから呼ばれるのを待つだけだ。
新しく現れた入口が何なのか。
第五層へ直接移動できるのか。
そして、今後も一定の階層を攻略するたびに入口が増えるのか。
確認しなければならないことは、まだたくさんありそうだった。




