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第24話:はいしん?! 〜最後に選ぶのは誰?

卒業式の朝、空は抜けるような青だった。


三年前、嵐のような夜にすべてを壊し合ったあの三人が、同じ校舎に集う最後の日。


壇上で卒業証書を受け取るめぐみの背筋はかつての「隅の読書少女」とは別人のように真っ直ぐだった。メガネを外し凛とした表情で歩く彼女の姿に校内では「あの子、誰?」と囁きが漏れる。かつての伝説の配信者「Megu」だと気づく者はもうほとんどいない。


式が終わり喧騒に包まれる校庭。


健人とこのかは校門の近くで立ち尽くしていた。二人の手は繋がれていない。昨夜の「告白の連鎖」を経て、二人は「恋人」という名の共依存(じごく)からようやく卒業しようとしていた。


「……行くんだな、本当に」


健人が校舎から出てきためぐみに声をかけた。


「ええ。新しいペンと新しいノートを持って。……今度は自分の人生を、自分の言葉で綴るために」


めぐみの瞳にはかつての偽りの「潤み」ではなく、未来を見据える強い光が宿っていた。


「めぐみちゃん」


このかが一歩前に出た。彼女の目にはもう嫉妬も憎しみもない。


「私……あなたを傷つけたこと一生忘れない。…… shadow。でも、あなたの強さも一生忘れないから。……いつか私が描く最高の絵の中に、あなたの笑顔を描かせてね」


「楽しみにしてるわ。……その時はとびきり綺麗に描いてね」


めぐみは微笑み、二人に背を向けた。


だが数歩歩いてから彼女は一度だけ立ち止まり振り返った。


「健人くん」


「……ん?」


「……あのガーターベルト返してほしくなったら、いつでも連絡して。……まだ私捨ててないから」


いたずらっぽく片目を瞑るめぐみ。その一瞬の「Megu」のような小悪魔的な表情に健人は初めて心からの笑顔を見せた。


「……バカ。……持っとけよ。お前の勝負服なんだろ?」


めぐみは満足げに頷き、今度こそ振り返らずに歩き出した。


数年後


東京の喧騒の中。巨大な街頭ビジョンに一人の女性が映し出されていた。


それは、世界的なファッション誌の編集長として、あるいは時代(せかい)を牽引するクリエイターとして活躍する「隅島めぐみ」の姿だった。


かつての「Megu」 shadow。のような過激な配信はしていない。


けれど彼女がSNSに投稿する一言一言はかつての100万人を遥かに凌ぐ世界中の人々の心を動かしていた。


彼女の首元には時折、あの「緑の蝶ネクタイ」をモチーフにしたブローチが輝いている。


そのビジョンをベビーカーを押しながら見上げる女性がいた。


このかだ。


彼女は今、地元のデザイン会社で働きながら、穏やかな日常を送っている。


「……元気そうだね、めぐみちゃん」


このかは優しく微笑み、隣に立つ男性――スーツを脱ぎ捨て少年向けのサッカーコーチとして汗を流している健人を見上げた。


「ああ。……あいつらしいや」


健人は、空を見上げた。


あの頃の嘘と裏切りに満ちた「はいしん」の日々。


けれど、 shadow。あの地獄を通らなければ今の自分たちはない。


めぐみ、健人、このか。


三人が最後に選んだのは誰かへの執着ではなく、[#傍点]自分らしく生きる[#傍点終わり]という孤独な、けれど自由な道だった。


めぐみのスマホがポケットで震える。


新しい通知。それは世界中から届く「いいね」の嵐。


めぐみは歩きながら、ふと空いた方の手で自分の太ももにそっと触れた。


そこには今もあの夜の誓いが刻まれている。


――[#傍点]はいしん?![#傍点終わり](配信✕背信)


それは裏切りの記録であり証明(あかし)


めぐみはかつてないほど潤んだ瞳で、けれど恥じらうことなく真っ直ぐに明日へと足を踏み出した。


(完)

最後までお読みいただきありがとうございました。

この物語『はいしん?!(配信✕背信)』はこれにて完結です。

読者の皆様の心に、めぐみの「めぐじゃーにー」の呪文が、いつまでも温かな光として残りますように。

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